音羽久米子

音羽久米子：昭和を彩った名脇役

音羽久米子（おとわ くめこ）は、1915年7月8日、東京府東京市四谷区（現在の東京都新宿区）に生まれました。旧姓は森、本名は滝沢ヤスです。父は政治好きで、定職には就きませんでした。

高等小学校卒業後、師範学校への進学を希望していた久米子でしたが、芸事好きの兄の影響を受け、尾上菊五郎が設立した日本俳優学校に入学。2期生として学びを深めました。1936年3月に卒業すると、関西新派で舞台役者を経験しますが、数か月で上京。

その後、劇作家・久米正雄氏に紹介される形で、日活多摩川撮影所に入社します。ここで、六代目菊五郎の屋号である「音羽屋」と久米正雄氏の姓の一部を組み合わせた「音羽久米子」という芸名を名乗り、女優としてのキャリアをスタートさせました。同年10月公開の『花嫁べからず読本』で映画デビューを果たします。

日活で数本の作品に脇役として出演した後、1937年9月には東宝映画に移籍。以降、数多くの映画作品に端役として出演し、着実にキャリアを積んでいきます。1939年5月には、映画監督の滝沢英輔氏と結婚。一男一女をもうけました。

第二次世界大戦中は東宝を退社し、映画界から離れていましたが、1951年に東宝へ復帰。成瀬巳喜男監督作品『めし』『浮雲』、堀川弘通監督作品『裸の大将』などに出演し、確かな演技力で存在感を示しました。

1960年代からはテレビドラマにも出演範囲を広げ、精力的に活動。東宝を退社してフリーとなり、1990年代まで女優として第一線で活躍しました。その活動期間は実に半世紀以上に及びます。

映画出演作品一覧

音羽久米子は、日活、東宝、その他多くの制作会社で制作された多様なジャンルの映画作品に出演しました。その作品数は膨大で、以下にその一部を挙げます。

日活時代: 『花嫁べからず読本』(1936)、『悦ちゃん』(1937)、『銃後の赤誠』(1937)、『娘三十人』(1937)
東宝時代: 『綴方教室』(1938)、『武道千一夜』(1938)、『忠臣蔵 前後篇』(1939)、『空想部落』(1939)、『上海陸戦隊』(1939)、『秀子の応援団長』(1940)、『多甚古村』(1940)、『白鷺』(1941)、『川中島合戦』(1941)、『男の花道』(1941)、『ハワイ・マレー沖海戦』(1942)、『待って居た男』(1942)、『めし』(1951)、『お国と五平』(1952)、『三等重役』(1952)、『夜の終り』(1953)、『坊ちゃん社員』(1954)、『芸者小夏 ひとり寝る夜の小夏』(1955)、『浮雲』(1955)、『宮本武蔵 完結篇 決闘巌流島』(1956)、『囚人船』(1956)、『流れる』(1956)、『サザエさん』(1956)、『サザエさんの結婚』(1959)、『ロマンス娘』(1956)、『眠狂四郎無頼控 第二話 円月殺法』(1957)、『あらくれ』(1957)、『裸の大将』(1958)、『恐妻党総裁に栄光あれ』(1960)、『サラリーマン目白三平 亭主のためいきの巻』(1960)、『紅の海』(1961)、『ゲンと不動明王』(1961)、『女の座』(1962)、『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』(1962)、『乱れ雲』(1967)、『社長繁盛記』(1968)、『喜劇 駅前火山』(1968)、『地獄変』(1969)、『激動の昭和史 軍閥』(1970)、『ノストラダムスの大予言』(1973)、『どてらい男』(1975)、『続・人間革命』(1976)、『影武者』(1980)、『おはん』(1984)、『乱』(1985)、『夢』(1990)、『八月の狂詩曲』(1991)、『八つ墓村』(1996)、『不夜城』(1998)
その他: 多くの作品に出演。

テレビドラマ出演作品一覧

音羽久米子は、映画だけでなく、テレビドラマにも多数出演しました。時代劇から現代劇まで幅広く、様々な役柄を演じ分けた彼女の演技は、視聴者に深い印象を与えました。以下にその一部を挙げます。

『徳川おんな絵巻』(KTV)
『大忠臣蔵』(NET)
『江戸巷談・花の日本橋』(KTV)
『変身忍者 嵐』(MBS)
『旅人異三郎』(12CH)
『鬼平犯科帳』(NET)
『俺たちの勲章』(NTV)
『大江戸捜査網』(12CH)
『ご存知!女ねずみ小僧』(CX)
『横溝正史シリーズII / 夜歩く』(TBS)
『ニュードキュメンタリードラマ昭和 松本清張事件にせまる』(ANB)
『名探偵・金田一耕助・仮面舞踏会』(ANB)
『土曜ワイド劇場』(ANB)
『はぐれ刑事純情派』(ANB)
『十時半睡事件帖』(NHK)
* 『市原悦子ドラマスペシャル / 黄落』(TX)


音羽久米子は、映画やテレビドラマを通して、長年に渡り日本のエンターテインメント界に貢献しました。数多くの作品で重要な脇役を演じ、その存在感は視聴者の記憶に深く刻まれています。没年は不明ですが、昭和期の日本映画史において、重要な足跡を残した女優の一人と言えるでしょう。

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