荒道子

荒道子（あら みちこ）

日本の声楽家、メゾソプラノ・アルト歌手、音楽教育者。
本名は田中道子。
1934年11月20日生まれ、愛知県豊橋市出身。

経歴

愛知県立時習館高等学校を経て、1961年に東京藝術大学声楽科を卒業。在学中にはモーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』でデビューを果たしました。1964年には、ストラヴィンスキー『放蕩者のなりゆき』や石井歓『役の行者』などの舞台に出演後、ベルリン音楽大学へ留学しました。

ベルリン留学中には、ミチコ・デ・コーヴァ夫人（田中路子）の支援を受け、1967年には日生劇場でヘンデルの『ジュリアス・シーザー』のコルネリア役を演じました。1968年にはロッシーニの『シンデレラ』でタイトルロールを演じ、その功績により芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。その後も、石井歓の『袈裟と盛遠』などのオペラに出演しました。

1969年からはイタリアのフィレンツェにあるルイジ・ケルビーニ音楽院に留学。1971年に修了した後もフィレンツェに滞在し、ミラノではL.・グァルリーニ夫人に師事しました。フィレンツェ市立劇場、シエーナのリヌォバーティー劇場、ジェノヴァのマルゲリータ劇場など、数々の劇場で舞台に立ち、1975年にはプッチーニの『蝶々夫人』でスズキ役を務めました。

一時帰国した際には、リヒャルト・シュトラウスの『ナクソス島のアリアドネ』、モンテヴェルディの『オルフェオ』、オッフェンバックの『ホフマン物語』、モーツァルトの『フィガロの結婚』、ベルリオーズの『ファウストの劫罰』など、立て続けに多くの公演に出演。1974年には『コジ・ファン・トゥッテ』のドラベッラ役を演じました。

1976年からはドイツのヴッパータール市立歌劇場と契約。同年には二期会で再び『コジ・ファン・トゥッテ』のドラベッラ役を演じ、1977年には『蝶々夫人』のスズキ役で九州公演を行いました。

1980年からは日本に拠点を移し、ビゼーの『カルメン』でタイトルロールを演じたほか、マスネの『ウェルテル』、ベッリーニの『カプレーティとモンテッキ』、ロッシーニの『イタリアのトルコ人』、ヴェルディの『ファルスタッフ』、『リゴレット』、ブリテンの『真夏の夜の夢』、ヨハン・シュトラウス2世の『こうもり』など、数多くのオペラに出演しました。

コンサート活動も積極的に行い、NHK交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団など、国内主要オーケストラと共演。『第九』、ベルリオーズの『ロメオとジュリエット』、マーラーの交響曲第2番『復活』、ベートーヴェンの『ミサ・ソレムニス』、ヘンデルの『メサイア』など、数々の名曲を歌い上げました。

2009年と2014年には、故郷の豊橋市でリサイタルを開催し、生涯現役を貫いています。

指導

畑中良輔、畑中更予、アンドレア・バラントゥーニ、ジュリエッタ・シミオナート、L.・グァルリーニ夫人らに師事。

武蔵野音楽大学講師、助教授、教授、東京学芸大学講師などを歴任し、後進の育成に力を注ぎました。門下生には、本岩孝之、勝又久美子、國光智子、小坂井貴子、KAEなどがいます。

現在も豊橋市で「荒道子 声楽研究会」を主宰し、毎月レッスンを行っています。2019年には「荒道子 声楽研究発表会 2019ヴォーカルコンサート」を開催しました。

二期会会員、日本演奏連盟会員。

受賞歴

1961年：第30回毎日音楽コンクール（日本音楽コンクール）声楽部門第3位
1969年：1968年度第19回芸術選奨文部大臣新人賞

ディスコグラフィー

CD5枚組 ベートーヴェン：交響曲全集
CD2枚組 メンデルスゾーン：エリヤ 全曲
CD 日本の声楽・コンポーザーシリーズ 3 芥川也寸志・伊福部昭 オムニバス
CD ベートーヴェン：交響曲第9番『合唱』
CD イタリア古典歌曲集 荒道子、田中瑶子
CD ベートーヴェン：交響曲第9番
楽譜・原詩朗読・範唱CD＋伴奏CD 独習と受験のためのイタリア歌曲集 1＆2
LP 芥川也寸志/諸井誠作品集
LP イタリア古典歌曲集1＆2
LP ブラームス『アルト・ラプソディ』、マーラー『さすらう若者の歌』他
* EP 世界民謡集


荒道子は、その卓越した歌唱力と表現力で、数多くのオペラやコンサートで観客を魅了しました。また、教育者としても多くの才能を育て、日本の音楽界に大きな貢献をしました。現在も故郷で後進の指導にあたり、その情熱は衰えることがありません。

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