菅原峯嗣

菅原峯嗣（すがわら の みねつぐ）

菅原峯嗣は、平安時代初期から前期にかけて活躍した貴族であり、同時に卓越した医術で知られた医師です。出雲朝臣のち菅原朝臣を氏姓とし、信濃権守・出雲広貞を父に持ちます。官位は従五位上・典薬頭にまで昇りました。

生涯

左京の出身である峯嗣は、父・出雲広貞の意志を受け継ぎ、皇太子であった大伴親王（後の淳和天皇）に仕えるようになりました。父もまた優れた医師であり、その影響は峯嗣の医術への道を開くこととなります。峯嗣は自ら医業を志し、医得業生に補せられます。これは医得業生の始まりとされています。

医術の才能を発揮した峯嗣は、奉試に及第し、弘仁13年（822年）には左兵衛医師に任じられます。翌年には医博士に転じ、その後も内薬佑、侍医を兼任するなど、順調にキャリアを重ねていきます。天長8年（831年）には医博士を辞し、摂津大目を兼ねますが、天長10年（833年）には春宮坊主膳正も兼ねるなど、その能力は多岐にわたりました。

承和2年（835年）には従五位下に叙爵。特に淳和天皇からは、皇太子時代から仕えていたという縁もあり、侍医として非常に寵遇されたと伝えられます。承和4年（837年）には尾張権介、承和6年（839年）には美濃権介に任じられますが、これらは遙任でした。嘉祥2年（849年）には越後守に任じられますが、当時、峯嗣は淳和院で太皇太后・橘嘉智子の薬湯方に携わっており、翌年には播磨介に転任しています。これは、平安京に近い場所で職務に当たれるようにとの配慮によるものでした。仁寿元年（851年）には従五位上に昇叙しています。

天安2年（858年）には典薬頭に任じられ、貞観元年（859年）には詔勅を受けて備中国で鍾乳石の採取を行っています。貞観5年（863年）には自ら老齢を理由に典薬頭を辞任し、摂津権守に転じ、豊島郡の山荘に隠居しました。隠居後は俗世間との交流を避け、薬を飲んで養生に努めたとされています。貞観10年（868年）には、土師氏と同族であることから、菅原姓に改姓しています。貞観12年（870年）3月30日に78歳で死去しました。

人物・医術

菅原峯嗣は、医療を家業とする家柄に恥じず、その治療は必ず効果が現れると評されました。さらに、従来の医術にはなかった新たな治療法を多数発見し、その効果は後世にまで称えられました。勅命を受け、諸名医と共に医学書である『金蘭方』50巻を選定したことからも、彼の医学に対する深い造詣と貢献が窺えます。

官歴

以下は『六国史』に基づく菅原峯嗣の官歴です。

時期不詳：医得業生
弘仁13年（822年）：左兵衛医師
弘仁14年（823年）：医博士
天長4年（827年）：内薬佑
天長7年（830年）：内薬司侍医
天長8年（831年）：医博士を辞任、摂津大目を兼任
天長10年（833年）：春宮坊主膳正を兼任
時期不詳：正六位上
承和2年（835年）：従五位下
承和4年（837年）：尾張権介
承和6年（839年）：美濃権介
嘉祥2年（849年）：越後守
嘉祥3年（850年）：播磨介
仁寿元年（851年）：従五位上
天安2年（858年）：典薬頭
貞観5年（863年）：摂津権守
貞観10年（868年）：出雲姓から菅原姓に改姓
貞観12年（870年）：卒去（散位従五位上）

系譜

父：出雲広貞
母：不詳
生母不明の子女
男子：菅原行資
男子：菅原茂貞

参考文献

森田悌『続日本後紀』（上下巻）、講談社〈講談社学術文庫〉、2010年
武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録 上巻』戎光祥出版、2009年
宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

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