藤原実政

藤原実政：平安時代を生きた学者の貴族

藤原実政（ふじわら の さねまさ）は、平安時代中期に活躍した貴族です。藤原北家日野流（真夏流）に連なり、父は文章博士である藤原資業。実政自身もまた、学問の道を歩み、最終的には従二位・参議という高い位階にまで上り詰めました。

学問の道から朝廷へ

実政は、父と同様に幼い頃から学問に励み、長暦元年（1038年）に文章得業生となります。その後、対策にも及第し、長久2年（1041年）には六位蔵人に任ぜられました。長久3年（1042年）には、後朱雀天皇の第二皇子である尊仁親王（後の後三条天皇）の読書始で、尚復という、侍読が読んだ内容を復唱する役割を務めました。この頃から、尊仁親王との間に深いつながりが生まれていったと考えられます。

永承5年（1050年）には、東宮尊仁親王の学士となり、父資業に続いて親子二代で東宮に仕えることとなりました。尊仁親王からの信頼は非常に厚く、天喜元年（1053年）に親王の御息所である藤原茂子が第一皇子・貞仁親王（後の白河天皇）を生んだ際には、実政の姉妹がその乳母の一人となっています。

康平7年（1064年）に実政が甲斐守に任じられ、任国へ下向する際には、尊仁親王から都を、そして親王自身のことを忘れないでほしいという趣旨の御製が贈られました。このエピソードからも、二人の間の親密な関係が窺えます。

後三条天皇の即位と異例の昇進

治暦4年（1068年）に尊仁親王が即位し、後三条天皇となると、実政は前東宮学士としての功績により正四位下に昇進しました。翌治暦5年（1069年）には、同じく尊仁親王の学士であった大江匡房とともに、新東宮貞仁親王の学士に任じられ、二代続けて東宮学士を務めることとなります。

後三条天皇の信頼は変わらず、延久4年12月（1073年）には左中弁に抜擢されました。この人事は異例であり、本来であれば当時権左中弁の官職にあった藤原隆方が任命されるべきところでした。しかし、以前に隆方が、なかなか天皇になれない皇太子（尊仁親王）を揶揄するような発言をしたことがあり、それを覚えていた後三条天皇は、あえて隆方を越えて実政を左中弁に任じたとされています。実政が左中弁に任ぜられた直後、後三条天皇は貞仁親王（白河天皇）に譲位して院庁を開き、実政は院庁別当となりますが、まもなく後三条院は崩御しました。

次代の白河天皇も、恩師である実政を厚遇し、承保4年（1077年）に蔵人頭、承暦4年（1080年）には参議・従三位、永保2年（1082年）には正三位と順調に昇進しました。

大宰府への下向と失脚

永保4年（1084年）、実政は大宰大弐に任ぜられ、参議を辞して大宰府へ下向します。任国への赴任の功労として、翌応徳2年（1085年）には従二位に昇りました。しかし、大宰府では九州最大の荘園領主であった宇佐八幡宮との間に紛争が発生します。寛治元年（1087年）には、宇佐八幡宮の神人から白河院御所に対して、実政が正八幡宮神輿を射て毀損したとの訴えがあり、翌寛治2年（1088年）に実政は大宰大弐を辞して上洛しました。

結局、同年11月に実政は伊豆国への流罪と決定し、併せて息子敦宗も連座して左少弁を解官されました。その後、実政は配流途中の近江国で出家を試みましたが許されず、寛治7年（1093年）2月18日に伊豆国の配所で亡くなりました。享年75歳。

藤原実政は、学問に秀で、天皇からの信頼も厚かったにも関わらず、晩年は不遇なものでした。しかし、彼の残した足跡は、平安時代の貴族社会における学問の重要性、そして権力闘争の厳しさを物語っています。

もう一度検索