藪家

藪家（高倉家）の歴史

藪家（やぶけ）、あるいは高倉家（たかくらけ）は、悠久の歴史を誇る日本の公家・華族です。羽林家の家格を有し、華族となった後は子爵家となりました。そのルーツは藤原南家武智麻呂流に遡りますが、江戸時代には藤原北家閑院流四辻家の支流を称していました。

系譜と興亡

藪家の祖は、藤原南家の祖・藤原武智麻呂の子孫である藤原範季です。後白河院の近臣として仕え、娘の範子が順徳天皇の生母となったことから、左大臣に贈位されました。高倉を号したことから、高倉家を称するようになりました。家業は神楽と筝でした。

江戸時代初期の石高は180石でしたが、後に150石となりました。しかし、戦国時代の天文15年（1546年）、参議・範久の代に家系は途絶えます。その後、幾多の困難に見舞われます。下冷泉為豊の次男、勧修寺晴秀の次男、柳原淳光の子息などが当主となりましたが、それぞれに事情があり、いずれも短命に終わりました。

転機は四辻公遠の五男、嗣良の代です。嗣良は家名を「高倉」から「藪」と改めました。これは、それまでの当主である範遠が朝廷内の問題に巻き込まれ、改名後に事件を起こして処刑されたことに配慮したこと、そして藤原北家閑院流四辻家の庶流となることで家格向上を目指したためだと考えられます。「藪」は四辻家の別名の一つであったと言われています。この改名により、朝廷では藤原南家の旧家・高倉家は断絶し、閑院流の新家・藪家が創設されたと見なされました。しかし、寛延3年（1750年）の官位御定では、旧家・新家の家格が昇進基準に導入され、藪家は三位への昇進が事実上不可能となりました。

明治維新と華族制度

明治維新後の明治2年（1869年）、公家と大名家が統合され、華族制度が誕生すると、藪家も華族に列しました。明治9年（1876年）の華族宗族制では、分家の中園家・高丘家と共に藤原南家の一族として扱われました。明治17年（1884年）、華族令の施行により五爵制が導入されると、大納言直任の例がない旧堂上家として、篤麿が子爵に叙されました。篤麿は侍従、貴族院議員を務めました。昭和11年（1936年）、家名は元の高倉に戻されました。戦後は、伊勢神宮大宮司を務めた人物も輩出しています。

当主とその後

篤麿には男子がいませんでした。そのため、河鰭実英の三男・公朋と、三室戸家出身で土御門家を継承していた土御門晴善の子・允光（三室戸允光、後に高倉範忠と改名）を養子として迎えました。しかし、範忠の兄である土御門凞光が急死したため、範忠は土御門家を継承し、土御門神道管長を務めました。高倉家当主の地位は公朋が継承しました。公朋は医師、医学博士であり、東京大学名誉教授、東京女子医科大学名誉教授、学長などを務めました。

藪家（高倉家）は、時代の変遷の中で幾多の困難を乗り越え、その歴史を繋いできました。藤原氏の一族としての誇りと伝統を守り続け、現代においてもその存在感を示しています。

系図

(系図は、スペースの関係上省略させていただきます。必要であれば、別途資料をご参照ください。)

参考文献

橋本政宣編『公家事典』吉川弘文館、2010年
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成』下巻、霞会館、1996年
近藤敏喬編『宮廷公家系図集覧』東京堂出版、1994年
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社〈中公新書1836〉、2006年
* その他、関連文献

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