串原遠山氏

串原遠山氏（くしはらとおやまし）は、美濃国恵那郡串原（現在の岐阜県恵那市串原）を本拠地とした、利仁流加藤氏の流れを汲む美濃遠山氏の一派です。居城は串原城であり、櫛原とも表記されます。

概要

遠山氏の祖は、文治元年（1185年）に源頼朝の重臣であった加藤景廉が遠山荘の地頭となったことに始まります。景廉の長男が改姓して遠山景朝と名乗り、遠山氏の祖となりました。その後、遠山氏は本家の岩村[[遠山氏]]だけでなく、遠山荘の各地に分散し、それぞれの居城を中心に勢力を拡大しました。これにより、「遠山七頭」と呼ばれる、岩村、苗木、明知、飯羽間、串原、明照、安木などの分家が誕生しました。串原遠山氏は、このうち串原城を拠点としていた一族です。初代は、明知[[遠山氏]]の四代目当主である遠山景忠の子、遠山景綱とされています。

室町時代

室町時代には、串原遠山氏の存在が史料に散見されます。応永28年（1421年）の『花営三代記』には「遠山櫛原」、永享3年（1431年）の『永享以来御番帳』には「遠山櫛原五郎」、文安元年（1444年）の『交安年中御番帳』には「遠山櫛原駿河入道」という名が見られます。また、長享元年（1487年）と延徳3年（1491年）の長享・延徳の乱では、将軍足利義尚方として、土岐政房と共に「遠山櫛原藤五郎」、「遠山櫛原次郎」の名が記録されています。

戦国時代

戦国時代に入ると、串原遠山氏は武田氏の侵攻に直面することになります。元亀元年（1570年）12月には、串原遠山景男（右馬助）、遠山教景、串原遠山五郎経景が上村合戦に参戦し、武田家重臣の秋山虎繁と戦いますが、景男は討ち死にしてしまいます。この戦いで討死した人物は、『武田三代軍記』では串原弥左衛門、『美濃国諸旧記』では串原弥左衛門親春と記されています。天正2年（1574年）には武田氏の東濃侵攻により、串原城は落城しました。この時、遠山與五郎は岩窟に身を隠していましたが、愛犬の吠え声で武田勢に発見され、自ら岩窟から出て戦い討死したと伝えられています。また、重臣の大嶋與市は、牛に乗り矢作川に身を投じて自害したとされています。串原遠山氏の家臣団は解体され、それぞれ堀氏（閑羅瀬）、中垣氏（柿畑）、三宅氏（中沢）、大嶋氏（峯）、安藤氏（木根）などの集落の長百姓となりました。天正3年（1575年）の岩村城の戦いでは、串原弥兵衛が討死しています。一方、遠山右馬助（弥左衛門）の子である遠山経景は、明知[[遠山氏]]の遠山利景の養子となり、利景と共に各地で戦功を重ね、明知[[遠山氏]]の再興に貢献しました。

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、上杉景勝討伐のために会津へ向かう徳川軍に、経景、利景、苗木遠山友政、小里光親が加わっていました。しかし、石田三成が挙兵したため、彼らは西軍についた田丸直昌から領地を取り戻すために東軍に参加し、木曽路を美濃に向けて進軍しました（東濃の戦い）。経景は串原・明知に戻り、野武士、狩人、郷民などを集め、明知城奪還のために協力を要請し、500人余りを率いて明知城を包囲、9月2日に田丸氏の守将を敗走させ、明知城を奪還しました。

江戸時代

江戸幕府成立後、串原村は岩村藩領となったため、経景は旗本（交代寄合）となった遠山利景から、明知[[遠山氏]]の知行所である吉良見村と猿爪村の500石を与えられ、家老となりました。彼は明知の落合砦の麓に居を構えましたが、晩年は吉良見村へ移り住みました。元和18年（1662年）に経景は吉良見村で没し、火葬にされました。法名は健雲宗勇大禅定門です。経景の嫡子の嘉兵衛、孫の七右衛門も、旗本明知[[遠山氏]]の2代当主である遠山方景が開創した松林山雲祥寺を墓所としました。現在、吉良見殿垣内にある五輪塔3基が経景一族のものと推定されていますが、土地改良により地形が変わり、五輪塔も移動しているため、正確な確認は困難です。なお、経景は吉良見八幡神社の祭神ともなっています。経景から11世の正景の代に「永田」に改姓し、永田氏は代々、旗本明知[[遠山氏]]の江戸家老として版籍奉還まで明知[[遠山氏]]を支えました。永田長景の代からは、明知[[遠山氏]]の菩提寺である龍護寺が菩提寺となり、墓が残されています。

石高

太閤検地において、串原村は1,028石2升6合と記録されており、1,000石程度の領地であったと考えられています。

参考文献

『串原村誌』串原村役場, 昭和43年
高坂弾正『甲陽軍鑑』温故堂, 明25,26（国立国会図書館デジタルコレクション）

串原遠山氏