鄭亨

鄭亨（てい こう）は、明代初期に活躍した軍人であり、その生涯は激動の時代と密接に結びついています。本貫は廬州合肥県であり、生年は不詳ながら、1434年にその生涯を終えました。

生涯

鄭亨は、洪武年間に父である鄭用の引退に伴い、その職を継いで大興左衛副千戸となりました。1392年、北元への使者に応募し、オノン川にまで到達したことが記録されています。帰国後は密雲衛指揮僉事に転じ、その軍事的な才能を発揮し始めました。

1399年に靖難の変が勃発すると、鄭亨は部下を率いて燕王朱棣に降伏。真定の戦いでは先頭に立って戦い、指揮使に進みました。大寧を襲撃する際には、劉家口で諸将が関を攻めようとする中で、鄭亨は朱棣の命を受けて精鋭の騎兵を率いて関の後ろに回り込み、敵の退路を断つという奇策を成功させました。この功績により、朱棣の軍は大寧を迅速に制圧することができました。

その後、鄭亨は北平都指揮僉事に進み、鄭村壩での夜襲を成功させ、紫荊関を攻略、さらに広昌を攻略するなど、各地で戦功を挙げました。1400年には、蔚州を奪取し、大同を直撃、白溝河の戦いにも参加し、済南にまで敵を追撃しました。この戦功により、都指揮同知に進んでいます。滄州を攻めた際には、北門から進軍して東昌への糧道を扼し、戦略的な動きを見せましたが、張玉が戦死する戦いで敗北し、深州に撤退しました。1401年、夾河や藁城での戦いで各地を攻略し、彰徳に到達、黄河の上で兵力を誇示。その後、完県に駐屯しました。

1402年、鄭亨は朱棣に従い、東平・汶上を破り、小河に進軍。敗北を喫しましたが、王真が戦死したこの戦いで、諸将が北に撤退を主張する中、朱能と共に反対し、南京入城に貢献しました。その後、中府左都督に転じ、武安侯に封じられ、1500石の禄と世券を賜り、北京の留守を任されました。この時、父の鄭用は存命しており、息子の栄達を見届けました。

1403年、鄭亨は総兵官となり、武成侯王聡や安平侯李遠らを率いて宣府を守備しました。鄭亨は、宣府、万全、懐来といった地理的に有利な場所に兵を集め、城壁を高くし、濠を深くするなど、守りを固めました。敵の襲撃に対しては、夜間に篝火を焚き、昼には砲を鳴らすことで、堅固な守りを築きました。1405年には南京に召還されますが、すぐに再び宣府に派遣され、1409年には開平を守備しています。

1410年、鄭亨は永楽帝の第一次漠北遠征に従軍し、食糧輸送の監督を任されました。塞北に進出した際には、右哨を率いてオルジェイ・テムルを追撃し、これを撃破しました。アルクタイの軍との遭遇戦でも、先頭部隊を率いて敵を撃破、その功績は諸将の筆頭に挙げられました。その年の冬には、そのまま宣府に駐屯しています。1414年の第二次漠北遠征では、中軍を管轄し、忽失温の戦いでオイラト軍を追撃中に流れ矢を受けましたが、再び軍と合流してマフムードを破りました。1422年の第三次漠北遠征では、左哨の1万の兵を率いて龍門道を進軍し、ウリャンカイを屈烈河で破り、輜重隊を率いて帰還中に追撃してきた敵を撃破し、その後、開平を守備しました。永楽帝の五度にわたる漠北遠征すべてに従軍し、その都度、重要な役割を果たしました。

1424年、洪熙帝が即位すると、鄭亨は大同に駐屯しました。1425年には、洪熙帝から辺境の総兵官に将軍印が分与される際、征西前将軍の印を賜りました。大同では耕地を開墾し穀物を備蓄するなど、北辺の守りを固めました。1426年には北京に召還され後府の事務を代行、その後再び大同に駐屯し、宣府に糧食を送りました。漠北の部長49人を招降し、手厚く待遇したことで、帰順する者が相次ぎました。

1434年2月、鄭亨は大同で死去。その功績を称えられ、漳国公に追封され、諡は忠毅とされました。また、妾の張氏が殉死したため、淑人の位が贈られました。子の鄭能が後を継ぎ、武安侯の爵位は明の滅亡まで世襲されました。


鄭亨の生涯は、明代初期の激動期における軍人としての活躍を示すものであり、その功績は後世に語り継がれています。

参考文献

『明史』巻146 列伝第34

もう一度検索