門司城の戦い

門司城の戦い（もじじょうのたたかい）は、戦国時代の永禄元年（1558年）から永禄5年（1562年）にかけて、豊前国（現在地の福岡県北九州市門司区）の門司城を巡り、大友氏と毛利氏の間で繰り広げられた一連の合戦です。この戦いは、関門海峡の制海権を巡る重要な戦いであり、両氏の勢力拡大の野望が激しくぶつかり合いました。

戦いの背景

15世紀、中国地方の有力大名であった大内氏は、豊前国企救郡（現在の北九州市）や筑前国（現在地の中西部）に進出し、門司氏を家臣団に組み込んで支配を固めていました。大内氏にとって、博多は対外貿易の重要な拠点であり、その博多を維持するためには、門司半島を確保することが不可欠でした。一方、豊後国（現在の大分県）の大友氏は、1532年頃から豊前国に侵攻し、大内氏と小競り合いを繰り返していました。

1551年、大内義隆が家臣の陶晴賢の謀反によって自害（大寧寺の変）し、大内氏は大きく混乱しました。陶晴賢は、大友義鎮（後の宗麟）の弟である大友晴英（大内義長）を大内氏の当主に据えます。しかし、陶晴賢自身も1555年に毛利元就によって討たれ、大内義長も1557年に毛利元就によって自害に追い込まれました。

大内氏が滅亡すると、大友宗麟は豊前・筑前を支配下に置こうと動き始めます。一方、毛利元就も門司城を足掛かりに九州へ進出することを計画し、筑前の秋月氏や筑紫氏などを味方に引き入れる工作を行っていました。門司城は、関門海峡と瀬戸内海の制海権を握る上で非常に重要な場所であり、西国支配の要としての意味を持っていました。

1557年、大友義鎮は毛利元就に対し、秋月文種を討伐することを宣言し、北九州へ軍勢を進めます。この時、大友義鎮は、弟の大内義長を救援しなかったのは、毛利氏との約束があったためであると示唆し、旧大内領を大友氏が継承することを主張しました。

戦いの経過

永禄元年の戦い（1558年）

1558年6月、毛利氏は門司城を攻略したと考えられています。この時の詳細は不明な点が多いですが、小早川隆景が水軍を用いて奇襲し、門司城を奪取したと推測されています。一方、大友義鎮は、豊前国の領土を確保するため、10月に田原親宏、臼杵鑑速、戸次鑑連（立花道雪）ら1万5千の兵を門司城へ派遣します。大友勢は、毛利勢の吉川元春、小早川隆景らの連携攻撃に苦戦しますが、戸次鑑連が弓の名手を率いて毛利勢に大打撃を与え、門司城を奪還します。その後、怒留湯直方が城将として再び任じられます。この戦いは第一次柳ヶ浦の戦いとも呼ばれています。

永禄2年の戦い（1559年）

1559年、大友義鎮は将軍足利義輝から豊前・筑前・筑後の守護職に任じられ、本格的にこれらの地域を攻略しようとします。しかし、毛利元就の調略によって豊前の国人たちが毛利方に寝返り、門司城、花尾城、香春岳城などが浪人一揆によって占拠されます。9月、大友義鎮は田原親宏らに門司城を攻撃させますが、毛利元就は、嫡男の毛利隆元、三男の小早川隆景らを後詰として派遣します。小早川隆景は、水軍を駆使して大友軍の退路を断ち、大友軍は退却を余儀なくされます。その後、大友勢は再び門司城を攻撃し、本丸一番乗りを果たしますが、毛利勢は強力な水軍力で大友勢の背後を突き、再び門司城を奪い返します。

永禄3年の戦い（1560年）

1560年12月、毛利元就は仁保隆慰を派遣し、大友方の門司城番であった怒留湯直方を奇襲し、再び門司城を奪還します。その後、毛利氏は、旧大内領であった豊前・筑前の諸豪族を味方に引き入れ、勢力を拡大していきます。

永禄4年の戦い（1561年）

1561年、大友勢の田原親宏は、小倉に進軍し、門司城攻撃の準備を始めます。これに対し、毛利元就は堀立直正を門司に派遣します。7月には、戸次鑑連率いる大友軍が、香春岳城を攻略します。8月、大友義鎮は再び門司城の攻略を命じ、吉岡長増、臼杵鑑速ら1万5千余の兵を率いて門司城を包囲します。この時、博多に停泊していたポルトガル船が大砲で門司城を攻撃したと言われています。毛利元就は、毛利隆元、小早川隆景ら1万8千余の兵を後詰として派遣し、小早川隆景が全軍の指揮を執り、大友軍を迎え撃ちます。10月、毛利軍は偽の狼煙によって大友軍を誘い出し、門司城に籠城して防戦に徹します。毛利軍の反撃により、大友軍は大きな損害を受け、撤退を余儀なくされます。この戦いで、毛利氏は一時的な大勝利を収め、門司城だけでなく、周辺の地域にも支配を広げることとなりました。

永禄5年の戦い（1562年）

1562年、大友宗麟は尼子義久の要請を受けて再び豊前へ出兵します。7月、大友軍は香春岳城を再び攻略しますが、門司城を攻め落とすことはできませんでした。その後、大友軍は松山城の奪還を目指しますが、毛利軍の激しい抵抗に遭い、決戦には至りませんでした。10月、大友軍は門司城下で毛利軍と交戦しますが、決定的な勝利を得ることはできませんでした。翌1563年、毛利隆元と小早川隆景の大軍が到着し、両軍は膠着状態に陥ります。

和睦

1563年、足利義輝の仲介により、大友氏と毛利氏の間で和睦交渉が開始されます。毛利元就は、門司城と香春岳城の確保を条件として和睦に応じようとしますが、最終的には門司城のみを確保し、香春岳城などの北部九州の城を放棄することになります。1564年、両氏の間で正式に和睦が成立し、門司城の戦いは終結します。

戦後の影響

門司城の戦いは、大友氏と毛利氏の勢力争いの結果、毛利氏が門司城を確保し、北部九州における勢力を拡大するという結果になりました。大友氏は、この戦いを契機に勢力を大きく衰退させていくことになります。また、この戦いは、戦国時代の九州における勢力図を大きく塗り替えることになりました。門司城の戦いの後も、大友氏と毛利氏の争いは続き、高橋鑑種や立花鑑載などの武将が両陣営の間で寝返りを繰り返すなど、九州の戦国時代は激動の時代を迎えることになります。

もう一度検索