阿野公佐

阿野公佐（あの きんすけ）は、平安時代後期から鎌倉時代前期にかけての貴族であり、公家である阿野家の家祖として知られています。彼は藤原公佐とも呼ばれていました。

生涯

公佐は、後白河院に仕えた院近臣・藤原成親の子として生まれましたが、閑院流藤原実国の養子となりました。文治元年（1185年）には、平氏政権や源義経を排除した源頼朝の要請を受け、親幕派の公家として侍従から右馬権頭に転じました。これは、当時の政治情勢において、公佐が幕府との関係を重視する立場にあったことを示しています。

しかし、建久3年（1192年）に、公佐は讒言によって昇殿を停められるという苦境に立たされます。身に覚えのない公佐は、源頼朝に弁明を試みますが、頼朝は公佐の弁解を疑問視し、親戚関係にあるからといって軽々に取りなすことはできないとして、公佐の頼みを断りました。この出来事は、当時の公家社会における権力闘争や、頼朝の冷徹な一面を垣間見せるエピソードと言えるでしょう。

建久5年（1194年）には、永福寺薬師堂落成供養の際に、一条高能らとともに布施取役を務めており、このことから公佐が鎌倉に下向していたことがわかります。公佐に関する記録は多くありませんが、『明月記』嘉禄2年（1226年）10月22日条には、当時すでに公佐が死去していたことが記されています。

系譜

阿野公佐は、源頼朝の異母弟である阿野全成の娘を妻としていました。妻の母は北条時政の娘である阿波局であり、この婚姻関係を通じて、公佐は鎌倉幕府の有力者である北条氏とも繋がりを持つことになります。妻との間に生まれた実直は、中御門あるいは阿野を称し、その子孫が阿野家を称するに至りました。

以下に、阿野公佐の系譜をまとめます。

父：藤原成親（1138-1177）
母：八条院坊門局 - 藤原俊成の娘
養父：滋野井実国（1140-1183）
妻：阿野全成の娘
男子：阿野実直（1209-1251）
生母不明の子女
男子：藤原実遠
女子：堀川具実室
女子

阿野公佐は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、公家社会と鎌倉幕府という二つの権力の間で生きた人物でした。彼の生涯は、当時の政治情勢や社会構造を反映しており、阿野家という家系の成立を語る上で重要な意味を持っています。

参考文献

東京大学史料編纂所 編『大日本史料 第四編』 1巻、東京大学出版会、1968年。ISBN 978-4-13-090151-2。 
東京大学史料編纂所 編『大日本史料 第四編』 4巻、東京大学出版会、1981年。ISBN 978-4-13-090154-3。 
東京大学史料編纂所 編『大日本史料 第五編』 4巻、東京大学出版会、1969年。ISBN 978-4-13-090204-5。 
東京大学史料編纂所 編『大日本史料 第五編』 5巻、東京大学出版会、1969年。ISBN 978-4-13-090205-2。 
東京大学史料編纂所 編『大日本史料 第五編』 36巻、東京大学出版会、2018年。ISBN 978-4-13-090236-6。 
村田正志「阿野家」『国史大辞典』 1巻、吉川弘文館、1979年。ISBN 978-4-642-00501-2。 
『尊卑分脉』 2巻、吉川弘文館〈新訂増補国史大系〉、2007年。ISBN 978-4-64-204062-4。

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