鳴子峡

鳴子峡（なるこきょう）

宮城県大崎市鳴子温泉に位置する鳴子峡は、栗駒国定公園内にある峡谷で、宮城県の名勝にも指定されています。地元では仙台弁の発音特性から「なるごきょう」とも呼ばれることがあります。

概要

鳴子峡は、花渕山南山麓の中山平盆地と鳴子盆地の境界に位置し、大谷川の浸食によって形成されました。深さ80～100mの断崖が約4kmに渡って続き、狭い場所では幅10mほどのV字谷、広い場所では幅100mほどのU字谷となっています。峡谷内には、白色の石英粗面岩質凝灰角礫岩が侵食されてできた立岩、衝立岩、獅子岩、仁王岩、虫喰岩、九曜岩、烏帽子岩、天柱岩といった奇岩が点在しています。

地質

鳴子峡の形成は、最終氷期末の約1万年前以降に始まったとされています。峡谷を構成する鳴子峡凝灰岩は、集塊岩や凝灰角礫岩を含み、中山平盆地と鳴子盆地の境界に分布しています。この凝灰岩層は、砂礫層や泥炭層を含む中山平湖成層によって覆われています。大谷川は、段丘面形成後に既存の流路を維持しつつ急速に下刻した結果、現在の鳴子峡が形成されました。付近一帯の隆起運動や凝灰岩の硬軟の差が、中山平湖成層の堆積や大谷川の流路、下刻に影響を与えたと考えられています。

人間との関わりの歴史

近代・現代

明治時代の温泉案内には具体的な記述は見られず、絵図に「立石」として描かれていました。陸羽東線全通以降、大谷川上流の「立石の奇景」として紹介されるようになり、大谷渓谷とも呼ばれていました。

1912年（大正元年）：陸羽東線建設工事の現地測量や地質調査が行われ、人が入るようになりました。
1917年（大正6年）11月1日：陸羽東線が全線開通しました。
1927年（昭和2年）：高野善兵衛と佐々木清一が私財を投じ、大谷川渓流沿いに約1,600mの探勝道路を開設しました。
1929年（昭和4年）：鳴子町が道を約1,400m延長し、名称を「鳴子峡」と改めました。
1931年（昭和6年）：道が総延長3,500mまで延長されました。
1932年（昭和7年）
5月頃：高野善兵衛が発願者となり、末沢山洞川院峯州和尚を導師に迎え、沼井集落の馬頭観音を勧請し、大谷観音として祀られました。
10月19日：史蹟名勝天然紀念物保存法に基づき、鳴子峡が国指定第二類名勝に指定されました。
1933年（昭和8年）3月：大谷橋が完成しました。
1955年（昭和30年）：鳴子峡入口上部の河岸段丘、千貫森に鳴子公園が造成されました。
1956年（昭和31年）1月23日：国指定第二類名勝の廃止に伴い、名勝指定が解除されました。
1960年度（昭和35年度）：小深沢橋が完成しました。
1961年（昭和36年）4月1日：鳴子峡が宮城県指定名勝となりました。
1962年度（昭和37年度）：大深沢橋が完成しました。
1963年（昭和38年）4月1日：一級国道47号が指定されました。
1965年（昭和40年）4月1日：一般国道47号が指定されました。
1968年（昭和43年）7月22日：栗駒国定公園が指定され、鳴子峡がその一部となりました。
1970年（昭和45年）：国道47号に鳴子トンネルが開通しました。
1971年度（昭和46年度）：国道47号に（新）大谷橋が完成し、（旧）大谷橋は駐車場に転用されました。
1973年度（昭和48年度）：国道47号に大深沢橋側道橋と小深沢橋側道橋が完成しました。
1975年（昭和50年）：日本こけし館が開館しました。
2007年（平成19年）10月13日：鳴子峡中山平口に「大崎市鳴子峡レストハウス」がリニューアルオープンしました。
2011年（平成23年）3月11日：東日本大震災により鳴子峡遊歩道の多くが崩落し、通行不可となりました。現在は両入り口から谷底までの区間のみ利用可能です。

観光

鳴子峡一帯は落葉広葉樹林が広がり、特に紅葉の時期はアカシデ、ミズナラ、ハウチワカエデなどが美しく色づきます。鳴子峡レストハウス付近からは峡谷美と紅葉の両方を楽しむことができます。紅葉シーズンには駐車場待ちの渋滞が発生することもあります。
かつては、鳴子温泉側の大谷橋から中山平温泉側の鳴子峡レストハウスを結ぶ遊歩道がありましたが、2011年の東日本大震災で多くが崩落し、現在では入り口から谷底までの折り返しコースのみ利用可能です。

鳴子峡を含む荒雄川上流は鳴子温泉郷と呼ばれ、上流側には中山平温泉、下流側には鳴子温泉や東鳴子温泉などの温泉街が広がっています。

峡谷内の名勝

鳴子峡には、立岩、衝立岩、獅子岩、仁王岩、虫喰岩、九曜岩、烏帽子岩、天柱岩などの奇岩があります。

交通と歴史

旧街道

荒雄川沿いには、戦国時代末期から中山越出羽道（出羽海道）と呼ばれる街道が整備されていました。この街道は、仙台藩の大和町と新庄藩の最上町を結び、奥州街道から分岐して江合川を遡り、堺田越で奥羽山脈を越えて最上川流域に通じていました。この街道は、最終的に最上川と西廻海運によって大坂や江戸とを結ぶ交通路の一部を形成していました。

街道は江合川の左岸を上り、大谷川との分岐点からは尿前（しとまえ）の関所・尿前宿を経由して大谷川沿いに続いていました。鳴子峡の左岸の崖上には緩斜面が広がっており、街道が通っていました。平安時代末期の奥州合戦の際には、奥州藤原氏がこの場所に城柵を築き、交通の要衝を守ったとされています。江戸時代中期にはその遺構が残っていたと伝えられています。中世には大崎氏もここに館を築いていたとされています。

この尿前宿・尿前関を、古来から和歌に詠まれてきた「いはての関」に比定する説もあります。松尾芭蕉の『おくのほそ道』や富田伊之の『奥州紀行』にも当地が描かれています。江戸時代初期には難路であったため通行は多くありませんでしたが、中期以降、この街道の利用客が増え、街道や宿場、温泉が発展したと考えられています。

鉄道

鳴子峡にはJR東日本の陸羽東線が通っており、渓谷の両岸をトンネルが貫通し、鳴子峡に面したトンネル同士が鉄橋で結ばれています。紅葉シーズンには、列車が鉄橋上で徐行運転を行うことがあります。

国道

鳴子峡に沿って国道47号が通っています。

アクセス

乗用車: 東北自動車道・古川インターチェンジから国道47号を西（新庄市方面）へ。鳴子温泉を過ぎてすぐ。
鉄道: 陸羽東線・中山平温泉駅または鳴子温泉駅下車。徒歩またはタクシー。
路線バス「紅葉号」: 紅葉期間中は、鳴子温泉駅 - 鳴子峡鳴子口 - 鳴子峡中山平口 - 中山平温泉駅間を運行。運行会社はミヤコーバス。

脚注

[脚注]

出典

[出典]

参考文献

『日本歴史地名大系4　宮城県の地名』,大塚徳郎・竹内利美／監,平凡社,1987,ISBN 4-582-49004-2

関連項目

日本の峡谷・渓谷一覧
宮城県の観光地
宮城県指定文化財一覧
鳴子温泉郷
鳴子温泉
中山平温泉
花渕山

外部リンク

鳴子峡（大崎市）
大崎市 鳴子峡（BBっといー東北 ライブカメラ）
* 地理院地図3D 鳴子峡（国土地理院「日本の典型地形」）

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