鹿島町藺牟田

鹿島町藺牟田（かしまちょういむた）

鹿児島県薩摩川内市に位置する鹿島町藺牟田は、甑島列島の下甑島の北端に位置する地域です。かつては独立した村でしたが、現在は薩摩川内市の一部となっています。この地域は、その独特な地形と豊かな自然、そして歴史的な背景から、多くの興味深い側面を持っています。

地理

鹿島町藺牟田は、細長い半島状の地形をしており、南北に約10キロメートル、最も狭い部分では幅が100メートルしかありません。西側は「鹿島断崖」と呼ばれる海食崖が連なり、その一部はウミネコの繁殖地として知られています。東側は浜堤と沼沢地が広がっており、地形の変化に富んでいます。集落は、藺牟田、小牟田、寺家、中山、中野浦、林川原などがあり、藺牟田集落が最も早く人が定着したとされています。

地名の由来

「藺牟田」という地名は、かつてこの地にあった「藺牟田池」に由来します。この池には藺草が繁茂しており、それが地名の由来となりました。しかし、現在藺牟田池は埋め立てられ、その姿を見ることはできません。

自然

藺牟田は、2015年に甑島列島の一部として「甑島国定公園」に指定されました。この地域は、アコウ、クロヘゴ、オオタニワタリ、クワズイモなどの亜熱帯性植物が自生しており、豊かな自然が残っています。特に、鹿島村の村花であったカノコユリは、甑島列島が日本唯一の自生地であり、この地域でも栽培されています。また、海域は「鹿島断崖海域公園地区」と「下甑島西海岸海域公園地区」に指定され、海洋生物の保護も図られています。

歴史

藺牟田の歴史は古く、地層からは恐竜や爬虫類の化石が発見されています。特に、下甑島夜萩円山断崖の白亜系姫浦層群は、約8000万年前の地層であり、日本列島の成り立ちを考察する上で重要な場所とされています。

奈良時代には、甑島は上村と下村に分かれて統治されていましたが、藺牟田という地名はまだ見られません。江戸時代には薩摩国甑島郡に属し、藺牟田村として存在していました。その後、1889年の町村制施行により下甑村の大字となりました。しかし、下甑村の中心集落との交通が不便であったため、1949年に鹿島村として分村しました。

2004年には、鹿島村は周辺の市町村と合併し、薩摩川内市の一部となり、同時に「鹿島町藺牟田」に名称が変更されました。

文化財

鹿島町藺牟田には、国登録有形文化財である「鹿島町離島住民生活センター」があります。これは、アールデコ建築の様式を取り入れた鉄筋コンクリート建築であり、離島における初期の鉄筋コンクリート建築として貴重な存在です。また、甑島の葛布の紡織習俗は、記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財として選択されています。

その他にも、県指定の天然記念物である「下甑島夜萩円山断崖の白亜系姫浦層群」や、市指定の有形文化財、民俗文化財、史跡、天然記念物などが多数存在します。

産業

藺牟田は、平地が少なく、海に囲まれた地形のため、漁業が古くから盛んです。江戸時代には、豊漁の時には山が荒れ、不漁の時には開墾が行われていたといわれています。また、カノコユリは飢餓の際の代用食として利用され、明治時代には椿油が特産品として販売されていました。近年では、医療・福祉、漁業、公務員などの就業者が多いです。

漁業

藺牟田では、ブリ、カツオ、イワシなどが漁獲されていました。1909年には「藺牟田漁業組合」が設立され、その後、「藺牟田漁業協同組合」を経て、「鹿島村漁業協同組合」となりました。現在は「甑島漁業協同組合」の鹿島支所となっています。

農業

藺牟田では、急斜面を開墾した千枚畑で自給自足のための食糧が生産されていました。明治時代にはカノコユリが換金作物として栽培されていましたが、第二次世界大戦の影響で衰退しました。

施設

鹿島町藺牟田には、薩摩川内市役所甑島振興局鹿島市民サービスセンター、甑ミュージアム恐竜化石等準備室、薩摩川内警察署鹿島駐在所、薩摩川内市鹿島診療所、鹿島公民館、薩摩川内市立図書館鹿島分館などの公共施設があります。また、薩摩川内市立鹿島小学校、薩摩川内市立かのこ幼稚園鹿島分園などの教育施設も設置されています。

教育

かつては薩摩川内市立鹿島中学校がありましたが、2024年4月1日に閉校となりました。藺牟田には高等学校は設置されておらず、島外の高校に進学する生徒が多いです。

交通

藺牟田の交通は、かつては海上交通が主でしたが、1982年に芦浜トンネルが開通し、自動車での移動が可能になりました。2020年には甑大橋が開通し、上甑島や中甑島への移動も可能となりました。また、コミュニティバス「甑かのこゆりバス」が運行されており、地域住民の足となっています。

交通安全

鹿島町藺牟田では、1949年の鹿島村発足以来、交通事故による死亡者が発生しておらず、交通死亡事故ゼロ連続日数が日本一となっています。

まとめ

鹿島町藺牟田は、美しい自然、歴史的な背景、そして地域の人々の生活が調和した魅力的な場所です。この地を訪れることで、甑島列島の豊かな自然と文化に触れることができるでしょう。

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