麻生久

麻生 久の生涯と業績

麻生 久（あそう ひさし）は、1891年に大分県で生まれ、1940年に亡くなった日本の政治家・労働運動家です。彼は戦前の無産政党、社会大衆党の党首として知られ、大正・昭和の転換期における日本社会に深く影響を与えました。

初期の経歴

麻生は旧制大分中学校から第三高等学校を経て、東京帝国大学に進学しました。ここでの学生生活は、トルストイやツルゲーネフといったロシアの文学に触れることで、彼に大きな影響を与え、ロシア革命に対する関心を高めることになりました。また、彼は女性関係においても派手な一面を持っていたとのことです。

大学を卒業後、彼は1917年に東京日日新聞に入社しましたが、すぐに退社します。翌年、彼は「ピーターからレーニンまで」という記事を連載し、ロシア革命を支持する立場を示しました。さらに同年には、吉野作造や新渡戸稲造と共に、啓蒙団体「黎明会」を設立し、知識人や文化人を集める活動に参加しました。

1919年には友愛会に加入し、組織の過激化を図り、急進的な改革を進めましたが、その活動が原因で検挙され、友愛会は壊滅状態に陥ります。続けて彼は1920年に全日本鉱夫総連合会を設立し、様々な争議に対して直接的な指導を行います。

政治活動と労働運動

1925年、麻生は日本労働総同盟の政治部長に就任し、その後労働農民党の中央執行委員としても活動します。労働農民党は党内で左右の対立が生じ、分裂しますが、それを機に彼は日本労農党を結成しました。以後、彼はさまざまな中間派無産政党の指導者として活動することになります。

1932年には全国労農大衆党が社会民衆党と合併し、社会大衆党が誕生しました。麻生はその書記長に就任し、軍部との連携を模索しながら社会主義的な拡大を目指しました。しかし、急速に進む軍部の独裁体制に対し、彼の支持姿勢は反発を招くことになります。日中戦争が勃発する中、彼は政府政策を支持し、軍事予算を承認しました。

晩年と死

1940年、麻生は、反軍演説問題により議員室から除名された斎藤隆夫に賛成し、自らが新たな党首に就任します。近衛文麿の新体制運動に積極的に協力し、社大党の解党を進めましたが、同年9月6日に心臓麻痺により49歳で亡くなります。彼の墓所は多磨霊園にあります。

評価

麻生久は「軍部勢力と無産勢力」との連携が日本の革命には不可欠だと信じていましたが、時代の流れが彼に圧力をかけ、彼の言動は戦争肯定論者と見なされる状況に変わっていきます。

家族と著作

彼の家族には、長男である麻生良方が政治家として活動し、孫の麻生輝久も新宿区議会議員として活躍しています。麻生自身は多くの著作を残しており、中でも『労働運動者のひとり言』や『無産政党というもの』などがその後の思想に影響を与えました。彼の経歴や業績は、戦争と社会主義が交錯する日本の歴史の中で特に重要な位置を占めています。

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