1975年の日本

1975年（昭和50年）の日本

1975年（昭和50年）の日本は、第一次オイルショックによる経済的な停滞感が残る一方で、社会、文化、交通など様々な分野で新たな動きが見られた一年でした。この年の紀年法としては、元号で昭和50年、神武天皇即位紀元で皇紀2635年、干支では乙卯にあたります。

この年の主要な在職者は、天皇が裕仁、内閣総理大臣は三木武夫（自由民主党）でした。内閣官房長官は井出一太郎、最高裁判所長官は村上朝一から藤林益三へと交代しました。国会は第75回（常会）と第76回（臨時会）が開かれました。

歴史的な節目としては、第二次世界大戦・太平洋戦争の終結から30年を迎え、硫黄島の戦い、東京大空襲、沖縄戦、戦艦大和撃沈、広島・長崎への原爆投下、日本のポツダム宣言受諾、終戦の日、日本の降伏文書調印といった一連の出来事から区切りの年となりました。また、日本で普通選挙が施行されてから50年、女性参政権が獲得されてから30年という、民主主義における重要な節目でもありました。多くの企業や文化的な活動も周年を迎え、トヨタ・クラウン発売開始20周年、サンケイスポーツ創刊20周年、NHKラジオ放送開始50周年、『りぼん』創刊20周年、日本の宝くじ発売開始30周年、阪神タイガース創設40周年などが挙げられます。

社会・出来事

年明け早々、1月には長野県の青木湖でバス転落事故が発生し、多くの犠牲者が出ました。また、歌舞伎役者の坂東三津五郎がフグ中毒により急逝するという悲劇も起きました。3月には山陽新幹線の岡山駅-博多駅間が開業し、東京から博多までが一本の列車で結ばれるようになり、日本の大動脈輸送に大きな変化をもたらしました。しかしその裏では、夕張鉄道線や静岡鉄道清水市内線、阪神電気鉄道の路面電車など、多くの地方交通線や歴史ある路線がその役目を終え廃止されました。この年、日本のテレビ放送史において大きな転換点となったのが、3月末の毎日放送（MBS）と朝日放送（ABC）のネットチェンジ（腸捻転解消）です。これにより、在京キー局との系列関係が入れ替わりました。

5月にはイギリスのエリザベス2世女王とフィリップ王配が日本の国家元首として初めて来日し、大きな話題となりました。また、同月には田部井淳子さんが女性として世界で初めてエベレスト登頂に成功し、人々に勇気を与えました。6月には佐藤栄作元首相の国民葬が営まれましたが、その際に三木武夫首相が右翼団体構成員に狙撃される事件が発生しました。7月には沖縄国際海洋博覧会が開幕し、沖縄の復興と発展を国内外にアピールしました。同じく8月には、日本赤軍がマレーシアのクアラルンプールでアメリカ大使館などを占拠する事件を起こしました。8月15日には、三木首相が現職の首相として初めて靖国神社を参拝し、その後の靖国参拝問題を巡る議論の端緒を開きました。

9月には、エポック社から日本初の家庭用テレビゲーム機「テレビテニス」が発売され、後の家庭用ゲーム市場の礎が築かれました。また、この月には日本のプロ野球界で歴史的な瞬間が訪れます。10月15日、広島東洋カープが球団創設26年目にしてセ・リーグ初優勝を達成し、ファンのみならず多くの人々を熱狂させました。同じ10月1日には東日本放送とテレビ新広島が開局し、7大都市圏での民放テレビ局4波化が完了しました。

11月には、日本が主要国首脳会議（現在のG7サミット）に初めて参加した第1回ランブイエサミットが開催され、国際的な舞台での存在感を高めました。また、社会的な問題として『部落地名総鑑』の存在が明らかになり、大きな波紋を呼びました。11月末から12月にかけては、国鉄労働組合によるスト権ストが実施され、国民生活に影響を与えました。12月には、1968年に発生した三億円事件が公訴時効を迎え、未解決事件となりました。また、この年の暮れには、記念すべき第1回コミックマーケットが開催され、同人誌文化の大きな一歩が踏み出されました。

文化・エンタメ

テレビアニメでは「フランダースの犬」「まんが日本昔ばなし」「勇者ライディーン」「ガンバの冒険」「タイムボカン」「一休さん」など、現在も親しまれている多くの名作がこの年に放映を開始しました。特撮分野では「秘密戦隊ゴレンジャー」が始まり、スーパー戦隊シリーズの歴史がスタートしました。バラエティ番組では「パネルクイズ アタック25」や、後に国民的人気番組となる「クイズダービー」の前身である「お笑い頭の体操」が始まった年でもあります。ドラマでは「俺たちの旅」「Gメン'75」「前略おふくろ様」など、多くの人気シリーズがスタートしました。

音楽シーンでは、子門真人の「およげ!たいやきくん」が社会現象となる大ヒットを記録しました。布施明の「シクラメンのかほり」、さくらと一郎の「昭和枯れすゝき」、ダウン・タウン・ブギウギ・バンド、沢田研二、キャンディーズ、風、野口五郎、西城秀樹、郷ひろみといった人気歌手・グループが次々とヒット曲を発表しました。また、荒井由実の「ルージュの伝言」や中島みゆきの「時代」など、ニューミュージックの旗手たちが存在感を示し始めた年でもあります。

出版分野では、有吉佐和子『複合汚染』や檀一雄『火宅の人』といった話題作がベストセラーとなりました。芥川賞は林京子『祭りの場』、中上健次『岬』、岡松和夫『志賀島』が、直木賞は佐木隆三『復讐するは我にあり』が受賞しました。

生まれた人々、逝った人々

この年には、漫画家の尾田栄一郎さん、歌手の吉村由美さん（PUFFY）、アナウンサーの赤江珠緒さん、元プロ野球選手の上原浩治さん、高橋由伸さん、松井稼頭央さん、川上憲伸さん、サッカースタートして活躍する川口能活さん、谷亮子さん、タレントの米倉涼子さん、つるの剛士さん、バカリズムさん、俳優の伊藤英明さん、安藤政信さん、坂口憲二さん、内田有紀さん、黒谷友香さん、声優の神谷浩史さん、千葉千恵巳さん、桑島法子さん、お笑いタレントの河本準一さん、徳井義実さん、大村朋宏さん（トータルテンボス）、岩尾望さん（フットボールアワー）、デザイナーの柳川荒士さん、実業家の前澤友作さんなど、後の各分野で活躍する多くの才能が誕生しました。一方、歌舞伎役者の坂東三津五郎さん、元首相の佐藤栄作さんといった著名人がこの世を去りました。

1975年は、戦後高度経済成長の熱が冷め、新たな社会のあり方が模索され始めた過渡期であり、同時に文化やエンターテイメントが多様化し、多くの未来を担う人材が生まれた、記憶に残る一年となりました。
る一年と言えるでしょう。（※文字数調整のため文章を一部調整しました）

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