2013年の鉄道

2013年（平成25年）の鉄道界概観

2013年は、日本の鉄道史において極めて特異な年として記憶されることになりました。それは、前年に続き、国内で全く新しい鉄道路線が開業しなかったことです。これは、過去に例を見ない二年連続での新規開業ゼロという状況であり、日本の鉄道網がある程度成熟期を迎えたことを示唆しているとも言えます。しかし、海外ではバンコク、ブレシア、北京、ソウル、成都、上海、広州、武漢、鄭州、シンガポールなどで地下鉄や都市鉄道の開業、延伸が相次ぎ、鉄道ネットワークの拡大が進みました。また、フランスのTGV廉価版Ouigoや、TGVとスペイン国鉄のバルセロナ直通列車の運行が開始されるなど、国際列車の動きもありました。

運行・路線に関する主な動き

国内では、東日本大震災で被災した路線の復旧が進みました。大船渡線の一部区間ではBRT（バス高速輸送システム）による運行が始まり、新しい形の交通網が整備されました。また、JR東日本の東北貨物線に浦和駅のホームが新設され、湘南新宿ラインの停車が可能になるなど、既存線の改良も行われています。都市部では、東京急行電鉄東横線の渋谷駅付近が地下化され、西武鉄道、東武鉄道、東京メトロ、東急電鉄、横浜高速鉄道の各線が相互直通運転を開始し、首都圏の鉄道ネットワークが大きく再編されました。これにより、東横線と東京メトロ日比谷線の相互直通運転は終了しています。駅の動きとしては、神戸電鉄有馬線の新有馬駅やJR只見線の田子倉駅が廃止され、JR只見線の柿ノ木駅は臨時駅となりました。一方で、JR大船渡線に長部駅や高田病院駅、奇跡の一本松駅（臨時）などが新設され、被災地の利便性向上が図られました。阪急電鉄京都本線には西山天王山駅が開業し、神戸本線などの主要駅名も変更されています。事業者関連では、神戸市都市整備公社が神戸すまいまちづくり公社に名称変更、横浜新都市交通が株式会社横浜シーサイドラインとなるなど、組織変更も実施されました。

全国的なシステム変更とダイヤ改正

この年の鉄道界における最大のニュースの一つは、3月に交通系ICカードの全国相互利用サービスが開始されたことです。Suica、PASMO、Kitaca、TOICA、ICOCA、SUGOCA、nimoca、はやかけん、manaca、PiTaPaといった主要なカードが互いに利用できるようになり、利用者の利便性は飛躍的に向上しました。これに先立ち、JRグループのプッシュホン予約システムや、駅売りのオレンジカード、周遊きっぷの販売が終了するなど、時代に合わせたサービスの変更も行われています。ダイヤ改正も多数行われ、特に3月には多くの鉄道事業者で大規模な改正が実施され、相互直通運転の開始や新型車両の投入に伴う変更が見られました。

鉄道車両の新たな顔と引退

2013年は、様々な新型車両がデビューした年でもあります。JR東海では次世代の東海道・山陽新幹線車両であるN700Aが登場し、より高性能な運行を可能にしました。東北新幹線にはE6系が投入され、「スーパーこまち」として運転を開始しました。近畿日本鉄道では、豪華観光特急「しまかぜ」用の50000系電車が営業運転を開始し、注目を集めました。JR九州では、満を持してクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」が運行を開始し、新たな旅のスタイルを提案しました。その他、福井鉄道のF1000形「FUKURAM」や阪堺電気軌道の1001形「堺トラム」といった新型路面電車、東武鉄道の60000系（野田線用）、阪急電鉄の1000系などがデビューしています。一方、長年活躍してきた車両たちの引退もありました。上越・東北新幹線で活躍した200系電車や、常磐線特急の651系・E653系、JR東海117系、JR西日本183系などが定期運用を終了し、その役目を終えました。新形式車両としては、JR東日本E6系や近鉄50000系、JR九州77系客車などがリストアップされ、引退した車両が消滅形式として名を連ねています。この年のブルーリボン賞は東京メトロ1000系電車が受賞しました。

多発した事故、災害、そして不祥事

2013年は、国内外で鉄道に関する痛ましい事故や自然災害が多発した年でもあります。海外では、カナダのラック・メガンティックでの原油列車脱線爆発事故、フランスのブレティニ・スール・オルジュ駅での脱線事故、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ近郊での高速列車脱線事故など、多数の死傷者を伴う重大事故が発生しました。国内でも、京阪京津線の脱線事故や神戸電鉄の脱線事故などが発生しています。自然災害による被害も甚大でした。特に7月末から8月にかけての集中豪雨では、山口線や山陰本線、三江線などで線路や橋梁の流出が発生し、長期の不通となりました。また、9月の台風18号や10月の台風26号でも、北海道から九州にかけて多くの路線が土砂崩れや盛土流出などの被害を受け、不通区間が生じました。北海道旅客鉄道では、老朽化した設備や点検不備による線路異常が多数発見され、国土交通省による特別監査が行われるなど、安全管理体制が問われる事態となりました。不祥事も複数報道されました。東京メトロ職員による運賃着服、大阪市交通局職員による飲酒運転やわいせつ容疑での逮捕、JR東海や京阪電気鉄道の運転士による私用携帯電話の使用、SNSでの不適切な投稿、駅構内での不審行為、飛びつき乗車など、様々な問題が発生し、鉄道運行に対する信頼を揺るがす出来事となりました。信楽高原鐵道線が台風被害により橋梁が流出したことも、記憶に残る災害です。

災害からの復旧への道のり

東日本大震災で不通となっていた常磐線の一部区間では、津波対策を施した上での復旧方針が検討・発表されるなど、被災地の鉄道網再生に向けた動きも進んだ一年でした。長期不通となっていた区間の運転再開も各地で実現し、復旧への希望を示す出来事もありました。

2013年は、交通系ICカードの全国相互利用開始といった利便性向上の一方で、国内外で多発した災害や事故、不祥事が安全運行の重要性を改めて浮き彫りにした年と言えるでしょう。また、新型車両の登場と旧型車両の引退が続き、日本の鉄道が新たな時代へと移り変わる過渡期であることが感じられました。

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