2016年の文学

2016年（平成28年）は、日本の文学界だけでなく世界の文学シーンにおいても、多くの出来事や話題が生まれた年となりました。

主要な出来事

この年、日本の文学賞で最も注目される芥川龍之介賞と直木三十五賞は、1月と7月の年2回、選考会が開催され、新たな才能が紹介されました。1月19日には2015年下半期（第154回）の選考が行われ、7月19日には2016年上半期（第155回）の受賞者が決定しました。

また、文学資料の公開にも動きがありました。3月には神奈川近代文学館が、「夏目漱石デジタル文学館」をインターネット上に開設。夏目漱石に関する貴重な資料約550点、計2,200枚以上の画像を無料で公開し、研究者や一般読者にとって貴重な情報源となりました。

文学賞の受賞者

2016年には、国内外で権威ある様々な文学賞が発表されました。

日本国内の主な文学賞

芥川龍之介賞・直木三十五賞
第154回（2015年下半期）：芥川賞は滝口悠生氏『死んでいない者』と本谷有希子氏『異類婚姻譚』が、直木賞は青山文平氏『つまをめとらば』が受賞しました。
第155回（2016年上半期）：芥川賞には村田沙耶香氏の『コンビニ人間』、直木賞には荻原浩氏の『海の見える理髪店』が選ばれています。
谷崎潤一郎賞（第52回）：絲山秋子氏の『薄情』と長嶋有氏の『三の隣は五号室』が受賞しました。
泉鏡花文学賞（第44回）：川上弘美氏の『大きな鳥にさらわれないよう』に贈られました。
野間文芸新人賞（第38回）：戌井昭人氏の『のろい男―俳優・亀岡拓次』が受賞しました。
吉川英治文学賞（第50回）：赤川次郎氏の『東京零年』に決定しました。
小林秀雄賞（第15回）：森田真生氏の『数学する身体』が選ばれました。
本屋大賞（第13回）（4月12日発表）：宮下奈都氏の『羊と鋼の森』が大賞に輝きました。

日本国外の主な文学賞

ノーベル文学賞：歌手・詩人であるボブ・ディラン氏の受賞は、文学賞としては異例であり、大きな話題となりました。
ブッカー賞：ポール・ビーティー氏の『The Sellout』が受賞しました。
フランツ・カフカ賞：クラウディオ・マグリス氏に贈られました。
ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞（2015年度）：ベンジャミン・マルコヴィッツ氏の『You Don't Have to Live Like This』が受賞しました。
ヴェルト文学賞：ゼイディー・スミス氏が受賞しました。

2016年に出版された主な書籍

この年には、多くの話題作や注目作が刊行されました。小説分野では、芥川賞を受賞した村田沙耶香氏の『コンビニ人間』や、直木賞受賞作の荻原浩氏『海の見える理髪店』が広く読まれました。その他にも、恩田陸氏『蜜蜂と遠雷』、角田光代氏『坂の途中の家』、塩田武士氏『罪の声』、高村薫氏『土の記』などが主要な作品として挙げられます。

小説以外の分野でも、梯久美子氏の『狂うひと ─「死の棘」の妻・島尾ミホ』や、海外からはジェイ・ルービン氏による村上春樹論『村上春樹と私』など、多様なジャンルの書籍が出版されました。

文学界の訃報

2016年は、国内外で多くの著名な文学者が逝去された年でもありました。

年明けには文芸評論家の佐伯彰一氏（93歳没）が、その後、フランスの小説家ミシェル・トゥルニエ氏（91歳没）や、アメリカのハーパー・リー氏（89歳没、『アラバマ物語』著者）、イタリアのウンベルト・エーコ氏（84歳没、『薔薇の名前』著者）といった世界的な作家が相次いで亡くなりました。3月にはサスペンス小説家の夏樹静子氏（77歳没）、ノーベル文学賞受賞者であるハンガリーのケルテース・イムレ氏（86歳没）が逝去されました。

また、国内からは太宰治の次女で小説家の津島佑子氏（68歳没）や、児童文学作家の井上洋介氏（84歳没）、戸川昌子氏（85歳没）、末吉暁子氏（73歳没）、岡崎ひでたか氏（87歳没）、国文学者の三角洋一氏（68歳没）、アメリカ文学者の関口功氏（89歳没）、翻訳家の村上博基氏（80歳没）、柳瀬尚紀氏（73歳没）、フランス文学者の山田登世子氏（70歳没）、文芸評論家の川西政明氏（75歳没）など、多くの重要な人物が亡くなりました。

国外でも英国の劇作家ピーター・シェーファー氏（90歳没）、アメリカの作家・脚本家マイケル・ハー氏（76歳没）、ノーベル平和賞受賞者で作家のエリ・ヴィーゼル氏（87歳没）、フランスの詩人イヴ・ボヌフォワ氏（93歳没）、ハンガリーの小説家エステルハージ・ペーテル氏（66歳没）、フランスの小説家・詩人ミシェル・ビュトール氏（89歳没）、アメリカの劇作家エドワード・オールビー氏（88歳没）、イギリスの作家リチャード・アダムス氏（96歳没）など、多岐にわたる分野の文学者が鬼籍に入りました。

このように、2016年は新たな才能の台頭や画期的なデジタル化への取り組みが見られた一方で、多くの巨星が次々と世を去り、時代の移り変わりを感じさせる一年となりました。

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