IGRいわて銀河鉄道いわて銀河鉄道線

いわて銀河鉄道線

いわて銀河鉄道線は、岩手県盛岡市にある盛岡駅から、青森県三戸郡三戸町の目時駅までの82.0kmを結ぶ鉄道路線です。第一種鉄道事業者としてIGRいわて銀河鉄道が旅客輸送を担い、第二種鉄道事業者として日本貨物鉄道（JR貨物）が貨物輸送を行っています。

概要と歴史的背景

この路線は、もともと東日本旅客鉄道（JR東日本）東北本線の一部でした。2002年12月1日の東北新幹線盛岡駅 - 八戸駅間開業に伴い、並行する在来線区間としてJR東日本から経営が分離されることになり、そのうち岩手県内の区間をIGRいわて銀河鉄道が引き継ぎました。青森県内の区間は青い森鉄道が運営しています。

IGRいわて銀河鉄道が自社の鉄道施設を保有するのは、盛岡駅北側の会社境界から目時駅南側の県境にある会社分界点までです。興味深い点として、キロポストや踏切に表示されている距離は、経営分離前のJR東日本東北本線時代から変わらず、東京駅からの通算表示が使用されています。また、踏切番号標識も旧東北本線時代の油島駅からの連番となっています。

路線の主要データは以下の通りです。

管轄（事業種別）： IGRいわて銀河鉄道（第一種）、日本貨物鉄道（第二種）
区間（営業キロ）： 盛岡 - 目時 82.0 km
軌間： 1,067 mm
駅数： 18駅（起終点含む、自社管轄は17駅）
複線区間： 全線
電化区間： 全線（交流20,000 V 50 Hz・架空電車線方式）
最高速度： 100 km/h
IC乗車カード： 非対応

運行形態

いわて銀河鉄道線は地域輸送を主体としており、運転系統上は青い森鉄道線の目時駅 - 八戸駅間と一体的に運行されています。停車駅はすべての列車が各駅停車です。

盛岡駅 - 八戸駅間を結ぶ直通列車は、概ね1〜2時間に1本程度運行されています（一部時間帯は間隔が開くこともあります）。目時駅を起終点とする列車はなく、乗務員は盛岡駅 - 八戸駅間を通して乗務しますが、車掌は盛岡駅 - 金田一温泉駅間の乗務となります。

このほか、盛岡駅を起点とする区間列車も多数設定されており、滝沢駅、いわて沼宮内駅、好摩駅、二戸駅、金田一温泉駅を終点とする列車があります。

JR線との直通運転も行われています。朝の通勤・通学時間帯には、JR東北本線の一ノ関方面へ直通する列車が設定されています。また、JR花輪線の列車は全列車が当線に乗り入れ、好摩駅から盛岡駅まで運行されます。これらのJR線直通列車の一部では、JR東日本の車両が使用されています。かつてはJR八戸線へ直通する列車も存在しましたが、現在は電車化・青森行きに変更され、当線内から八戸線への気動車直通は無くなりました。

東北本線との直通列車（電車）や、花輪線との直通列車（気動車）の乗務員交代は、盛岡駅や好摩駅で行われる場合があります。

広域輸送

東北本線として機能していた時代は、多くの特急列車や貨物列車が運行されていました。IGR移管後、旅客特急列車の運行は終了しましたが、夜行の寝台特急「カシオペア」は2016年まで当線を経由していました。

現在も、本州と北海道を結ぶ物流の重要なルートとして、JR貨物による多数の貨物列車が運行されています。これらの貨物列車はJR貨物またはJR東日本の乗務員によって運転されています。貨物列車の牽引機関車は、かつて主力だったED75形から、2010年までにすべてEH500形に置き換えられました。

使用車両

定期旅客列車には、IGRいわて銀河鉄道所属のIGR7000系電車のほか、青い森鉄道所属の青い森701系電車やJR東日本盛岡車両センター所属の701系電車、JR東日本盛岡車両センター所属のキハ110系気動車が使用されています。青い森701系は主に盛岡 - 八戸間の直通列車に、JR東日本701系は盛岡 - いわて沼宮内間の区間列車や東北本線直通列車に、キハ110系は花輪線直通列車にそれぞれ使用されます。

過去には、JR東日本のキハ40系、キハ58系、キハ52形といった気動車や、寝台特急「北斗星」に使用された24系客車などが当線で運用されていました。

地域と連携した取り組み

IGRいわて銀河鉄道は、地域の活性化を目指し、様々な企画乗車券やサービスを展開しています。鉄道とバスの乗り継ぎ割引定期券「IGR・バス乗継通勤定期」を設定し、沿線住民の通勤を支援しています。この定期券利用者には、沿線施設の割引などの特典も提供されています。

また、地域住民の通院をサポートする「IGR地域医療ライン」や、盛岡市中心部へのアクセスを便利にするバス乗り継ぎ企画きっぷ「すごeーきっぷ」、商業施設での買い物に便利な「フェザン買物きっぷ」など、特定の目的や利用者層に向けた多様な商品が用意されています。

観光促進や広域連携の取り組みとしては、IGR線を含む岩手県北部の広範囲を周遊できる「きたいわてぐるっとパス」や、岩手産業文化センターアピオへのアクセスを目的とした「アピオきっぷ」、岩手県立児童館いわて子どもの森や奥中山高原への家族向け企画きっぷなどが発売されています。これらの取り組みは、沿線の生活利便性向上や交流人口の増加に貢献しています。

沿革（主な出来事）

1891年9月1日： 日本鉄道により盛岡 - 青森間が開業（東北本線の前身）。
1906年11月1日： 日本鉄道が国有化。
1909年10月12日： 線路名称が東北本線と定められる。
1948年10月1日： 目時駅が開業。
1949年6月1日： 日本国有鉄道に移管。
1968年7月12日： 盛岡 - 目時間の複線化が完了。
1968年8月22日： 盛岡 - 目時間が電化される。
1987年4月1日： 国鉄分割民営化により東日本旅客鉄道（JR東日本）が承継。北福岡駅を二戸駅、金田一駅を金田一温泉駅に改称。
1990年代： 東北新幹線八戸延伸に向け、並行在来線の経営分離について岩手・青森両県とJR東日本間で協議が進められる。
2001年5月25日： IGRいわて銀河鉄道株式会社が設立される。
2002年12月1日： 東北新幹線八戸延伸に伴い、JR東日本からIGRいわて銀河鉄道に移管され、「いわて銀河鉄道線」として開業。沼宮内駅をいわて沼宮内駅、奥中山駅を奥中山高原駅に改称。
2006年3月18日： 青山駅、巣子駅が開業。
2015年3月14日： JR花輪線直通快速「八幡平」が廃止され、定期旅客列車は普通列車のみとなる。
2016年3月26日： 北海道新幹線開業に伴い、当線を通過する定期寝台特急が全廃。
2016年6月1日： 台湾鉄路管理局台中線と姉妹鉄道協定を締結。
2022年8月3日： 大雨災害により一部区間が不通となる。

様々な歴史を経て、いわて銀河鉄道線は岩手県北部の地域交通を支え、本州と北海道を結ぶ貨物輸送の要としての役割を果たし続けています。

もう一度検索