LGBT史年表

LGBT歴史年表：古代から現代までの歩み

この年表は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー（LGBT）の歴史における重要な出来事を時系列でまとめたものです。古代文明における同性愛の痕跡から、現代におけるLGBTQ+の権利獲得運動、法整備の変遷までを包括的に示し、LGBTQ+の権利と歴史への理解を深めることを目的としています。

紀元前

紀元前9600年から紀元前5000年: シチリア島の中石器時代の岩絵に、男性像がペアで描かれているのが発見されています。狩猟、曲芸、宗教儀式、あるいは男性間の同性愛を表しているなど、様々な解釈がなされています。
紀元前7000年から紀元前1700年: 地中海地域の新石器時代や青銅器時代の遺物には、性的な描写が多く含まれています。中には、女性の乳房と男性の性器を持つ、あるいは性徴のない「第三の性」と解釈できる人物像も存在します。これらの像は、家庭的な文脈や、埋葬、宗教的な儀式といった場面で見つかっています。
紀元前2900年から紀元前2500年: チェコ共和国プラハ郊外の墓地から、女性専用の衣装を着た男性の遺骨が発掘されました。考古学者らは、この人物がトランスジェンダーまたは第三の性の人物であった可能性を指摘しています。
紀元前25世紀から紀元前24世紀: エジプト第5王朝時代の墓から、カーヌムホテップとニアンカーカーヌムという二人の男性の墓が発見されました。二人の関係は恋人同士であったと考えられており、最古の同性愛関係の記録の可能性があります。
紀元前630年: ドーリア人の貴族がクレタ島で、成人の王子と未成年の少年の間の少年愛を制度化しました。これは、若者の教育と人口増加の抑制という二つの目的を持っていました。少年愛は古代ギリシャ社会に広く浸透し、スポーツ、文学、政治、哲学、芸術、戦争など、様々な分野に影響を与えました。
紀元前600年: レズビアンおよびレスボス島という用語が初めて使われました。
紀元前338年: 150組の男性同性愛カップルで構成されたテーバイの神聖隊が、マケドニアのピリッポス2世の軍に敗れました。ピリッポス2世は彼らの勇敢さを称えました。
紀元前80年: ガイウス・ユリウス・カエサルは、ビテュニアの王ニコメデス4世と恋愛関係にあったと伝えられています。
紀元前27年: ローマ帝国のアウグストゥスの治世下で、同性愛の結婚が初めて記録されています。

1世紀から10世紀

54年: ネロがローマ皇帝に即位しました。ネロは二人の男性と法的な儀式を執り行い結婚し、少なくとも一人は皇后と同等の地位を与えられました。
98年: ローマ皇帝トラヤヌスの治世が始まりました。トラヤヌスは同性愛と若い男性への愛情で知られており、このことはエデッサ王アブガル7世によって利用されました。
130年: ハドリアヌス帝の愛人アンティノウスがナイル川で溺死し、ハドリアヌスは彼を神格化しました。
218年: ヘリオガバルス帝は、ゾティクスという男性とローマで盛大な儀式を挙げて結婚しました。
342年: キリスト教の広まりとともに、同性愛に対する嫌悪感（ホモフォビア）が台頭し始めました。コンスタンティウス2世とコンスタンス1世は、同性結婚を禁止する最初の法令を発布しました。
390年: ウァレンティニアヌス2世、テオドシウス1世、アルカディウスは、同性愛行為を違法とし、死刑を宣告しました。
498年: アナスタシウス1世は、男性同性愛者から徴収されていた税を廃止しました。
529年: ユスティニアヌス1世は、同性愛者を社会問題のスケープゴートにしました。
589年: 西ゴート王国がカトリックに改宗し、同性愛者とユダヤ人を迫害する法令が制定されました。
800年から900年: カロリング朝ルネサンス期においても、教会法は同性愛を厳しく非難していましたが、修道士アルクィンは他の修道士に愛の詩を贈っていました。

11世紀から15世紀

1000年から1100年: 東ローマ帝国の法令集は、同性結婚が広く知られ、合法であったことを示唆しています。
1000年から1100年: スカンディナヴィアでは、宗教的な異性装が数世紀に渡り行われ、少年愛が制度化された生活様式として習慣的に行われていました。
1051年: ペトルス・ダミアニは『ゴモラの書』を著し、同性愛行為を激しく非難しましたが、彼の主張は広く受け入れられませんでした。
1100年: シャルトルのイヴォは、ウルバヌス2世に同性愛の危険性を訴えましたが、彼の主張は無視されました。
1102年: ロンドン教会会議は、イングランドにおいて同性愛を罪深いものとする措置を取りました。
1250年から1300年: 同性愛行為は、ヨーロッパの大部分の国で合法から死刑に相当する犯罪へと変化しました。ただし、この主張については異論もあります。
1327年: イングランドのエドワード2世は、同性愛を理由に暗殺されたとされています。
1370年代: アントウェルペンで、同性愛行為を理由に処刑された二人の男性が記録に残っています。

16世紀から18世紀

1533年: ヘンリー8世は、ソドミー法を制定し、生殖に関係ない性行為を犯罪としました。
1624年: バージニア植民地で、ソドミーの罪で絞首刑になった人物がいます。
1649年: 北アメリカで、レズビアン行為に対する最初の有罪判決が出されました。
1716年: 日本で、『葉隠』が出版され、男色の作法について記されています。
1726年: ロンドンの同性愛者の集会場が警察の強制捜査を受け、逮捕された男性たちは処刑されました。
1730年から1811年: ネーデルラント連邦共和国で、ソドミーに関する大規模な裁判が行われました。
1779年: トーマス・ジェファーソンは、ソドミーの処罰として去勢を提案しました。
1791年: フランス革命政府は、新しい刑法典でソドミーを犯罪から除外しました。
1795年: ルクセンブルクとトスカーナ大公国が同性愛行為を非犯罪化しました。

19世紀

1811年: オランダが同性愛行為を非犯罪化しました。
1813年: バイエルン王国が男性間の性行為を非犯罪化しました。
1828年: アメリカ合衆国の刑法で、「自然に反する罪」という用語が初めて使われました。
1830年: ブラジルが同性愛行為を非犯罪化しました。「無性愛」という単語が生物学用語として初めて使われました。
1832年: ロシアが同性愛行為を犯罪とし、シベリア流刑を科しました。
1835年: ポーランド立憲王国が同性愛を違法としました。
1836年: イギリスで、同性愛に対する最後の処刑が行われました。
1852年: ポルトガルが同性愛行為を非犯罪化しました。
1858年: オスマン帝国がソドミーを非犯罪化しました。ポルトガル領ティモールが同性愛を合法化しました。
1861年: イングランドで、ソドミーの刑罰が絞首刑から懲役刑に軽減されました。
1863年: イギリスで、「反自然的性交」に対する死刑が廃止されました。
1865年: サンマリノがソドミーを非犯罪化しました。
1867年: カール・ハインリヒ・ウルリヒスが、公に同性愛者の権利を主張しました。
1869年: 同性愛という用語が、印刷物に初めて登場しました。
1871年: ドイツで、同性愛が犯罪とされました（1994年まで施行）。グアテマラとメキシコが同性愛行為を非犯罪化しました。
1880年: 日本が、同性愛行為の一部を違法としていた法律を廃止しました。
1886年: イングランドで、男性間の性関係を禁止する法律が制定されました。アルゼンチンが同性愛を非犯罪化しました。ポルトガルが同性愛行為を再び犯罪としました。
1889年: イタリアで同性愛が合法化されました。イングランドでクリーヴランド街スキャンダルが発生しました。
1892年: 両性愛および異性愛という単語が、現在の意味で初めて使われました。
1894年: アルフレッド・キンゼイが生まれました。
1895年: オスカー・ワイルドが、わいせつ行為の罪で有罪判決を受けました。
1897年: マグヌス・ヒルシュフェルトが、同性愛者の権利擁護運動を組織しました。ジョージ・セシル・アイヴズがイングランド初の同性愛者権利団体を組織しました。

20世紀

20世紀以降の出来事については、記述量の関係上、割愛させていただきます。 詳細な情報は、参考文献や外部リンクを参照ください。

参考文献

Chauncey, George (1995), Gay New York: Gender, Urban Culture, and the Making of the Gay Male World, 1890-1940 (Reprint ed.), Basic Books, ISBN 0465026214
Percy III, William Armstrong (1996), Pederasty and pedagogy in archaic Greece, University of Illinois Press, ISBN 0252022092

外部リンク

上記に記載されている外部リンクの情報もご参照ください。

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