SMILE (L'Arc〜en〜Cielのアルバム)

L'Arc〜en〜Ciel 9th Album『SMILE』

『SMILE』は、日本のロックバンドL'Arc〜en〜Cielが2004年3月31日にリリースした9枚目のオリジナルアルバムです。前作『REAL』から約3年7ヶ月ぶりとなる本作は、活動休止期間を経て、バンドが新たなスタートを切ることを示す作品となりました。

アルバム概要

本作には、先行シングルとしてリリースされた「READY STEADY GO」と「瞳の住人」を含む全10曲が収録されています。また、2001年に発表されたシングル「Spirit dreams inside -another dream-」のカップリング曲「Spirit dreams inside」も収録されており、過去の作品との繋がりも感じさせます。マスタリングは、U2やニルヴァーナを手掛けたハウィー・ウェインバーグが担当しました。

海外でもリリースされており、アメリカではTofu Recordsからボーナストラックとして「READY STEADY GO (hydeless version)」が追加収録されたものが発売されました。

制作背景

2001年9月にシングル「Spirit dreams inside -another dream-」をリリース後、L'Arc〜en〜Cielは活動を休止していました。メンバーはそれぞれソロ活動や別バンドでの活動を主軸としていましたが、2002年にhydeがバンド脱退を申し出たことをきっかけに、バンドの今後についてメンバー間で話し合いが行われました。

話し合いの結果、バンドは解散の危機を乗り越え、活動再開に向けて動き始めました。2003年にはファンクラブ会員限定ライブや大規模なライブイベントを開催し、2004年のニューアルバムリリースを発表することで、解散説を打ち消しました。

本作のレコーディングは、2003年7月から本格的にスタートし、メンバーは活動休止期間中に感じたそれぞれの思いや経験を、楽曲制作に反映させました。

音楽性

『SMILE』の音楽性は、前作に引き続き、メンバーそれぞれの個性が際立つ楽曲が収録されています。また、アレンジ面では、スリーピースバンドサウンドを前面に出した、ギターロックを基調とした楽曲が多いのが特徴です。オルタナティブロックやポップパンク、民族音楽を取り入れた楽曲など、多彩な音楽性が展開されています。

レコーディングでは、メンバーそれぞれが事前にアレンジを練る期間を設け、演奏に集中できる環境を作りました。これにより、ギター、ベース、ドラムの音が際立つ、シンプルなアレンジに仕上がりました。また、マニピュレーターをほぼ入れずに、メンバー自身で音作りを行うことで、よりパーソナルなサウンドが追求されました。

メンバーのソロ活動の影響

本作には、メンバーそれぞれのソロ活動で得た経験が活かされています。kenは、SONS OF ALL PUSSYSでの活動を通じて、リフを中心とした楽曲構成や、エフェクトを抑えたギターサウンドを追求しました。tetsuyaは、ソロアルバム『Suite November』で様々なアレンジャーと共同制作した経験から、自身の楽曲制作スタイルを確立しました。hydeは、ソロアルバム『ROENTGEN』の制作を通じて、自身のポップセンスを磨き上げ、アレンジ能力を向上させました。yukihiroは、acid androidで制作していたインダストリアルサウンドを、バンドサウンドに融合させる試みをしました。

アルバムタイトルとアートワーク

アルバムタイトル『SMILE』は、作詞を多く手掛けたhydeによって名付けられました。このタイトルには、前向きなメッセージと、今後のバンド活動への希望が込められています。ジャケットのアートワークは、前作『REAL』に引き続き、クリエイティブユニット生意気（Namaiki）が担当し、ブックレットの写真は蜷川実花が撮影しました。

ライブツアー

アルバムリリースに先駆け、2003年には活動再開を告げるライブ「Shibuya Seven days 2003」を開催しました。その後、本作を引っ提げたライブツアー「SMILE TOUR 2004」を開催し、全国のアリーナクラスの会場で公演を行いました。このツアーでは、P'UNK〜EN〜CIELという新たなパートチェンジバンドが結成され、L'Arc〜en〜Cielの楽曲をリアレンジしたセルフカバーが披露されました。

さらに、アメリカでのライブ「Live in USA」を成功させ、海外での活動を本格化させるきっかけとなりました。

リリース形態

初回限定盤（CD+DVD）と通常盤（CD）の2形態で発売されました。初回限定盤には、ライブ映像やレコーディング風景を収めたDVDが付属しました。また、初回出荷版はコピーコントロールCDで発売されましたが、後に通常のCD-DA盤が発売されました。

2011年からは、デジタル配信も開始され、2014年にはハイレゾ音源も配信されました。2019年にはサブスクリプションサービスでの配信も開始されました。2022年には、メンバー監修の下でリマスターされたボックスセットも発売されました。

批評と評価

音楽ライターからは、活動休止期間を経て、バンドが新たな方向性を示した作品として評価されています。また、メンバーそれぞれの個性が際立ちつつも、バンドとしてのまとまりが感じられる点が評価されています。

オリコン週間アルバムチャートでは2位を記録し、同年度の年間アルバムチャートでは35位を獲得しました。

収録曲解説

1. 接吻
- 1980年代のエレポップを彷彿とさせるキーボードとメタリックなギターが特徴的な楽曲。デモ音源は3年前に制作されていた。

2. READY STEADY GO
- 先行シングル。USポップパンク風のスリリングなロックナンバー。ライブでの定番曲。

3. Lover Boy
- 歪んだギターリフが印象的なギターロック。kenが作詞を担当。

4. Feeling Fine
- ベイ・シティ・ローラーズを彷彿とさせるメロディアスなポップロック。kenが活動休止期間中に制作。

5. Time goes on
- アコースティックギターの音色が印象的なポップナンバー。tetsuyaが作詞・作曲を担当。

6. Coming Closer
- トラディショナルな雰囲気を持つロックナンバー。kenが活動休止期間中に制作。菅原弘明が編曲に参加。

7. 永遠
- hydeが大切な人に捧げたミディアムナンバー。純粋な愛情を表現した歌詞が特徴。

8. REVELATION
- インダストリアルサウンドを取り入れたロックナンバー。yukihiroが作曲。歌詞はヨハネの黙示録からインスパイア。

9. 瞳の住人
- 先行シングル。ストリングスを多用したクラシカルなバラード。夢の中でサビのメロディが生まれたという逸話も。

10. Spirit dreams inside
- シングル「Spirit dreams inside -another dream-」のカップリング曲。全英語詞バージョン。映画『FINAL FANTASY』主題歌。

11. READY STEADY GO (hydeless version)
- アメリカ盤ボーナストラック。hydeのボーカルを抜いたインストゥルメンタルバージョン。

初回限定盤特典DVD

初回限定盤には、以下のライブ映像やレコーディング風景が収録されたDVDが付属しています。

2001.08.29 東京国際フォーラム「Spirit dreams inside」
2003.06.25 Akasaka BLITZ 「Akasaka Zero day」「Promised land」
2003.07.06 国立代々木競技場第一体育館 「Shibuya Seven days 2003」「fate」「花葬」「forbidden lover」「Shout at the Devil」「HONEY」
2003.07.13 - 2004.01.14 「SMILE」Recording
2003.12.26 日本武道館 「天嘉-弐 -DANGER II-」「READY STEADY GO」

クレジット

hyde：Vocal
ken：Guitar
tetsu：Bass
yukihiro：Drum

タイアップ

READY STEADY GO: アニメ『鋼の錬金術師』オープニングテーマ
瞳の住人: TBS系ドラマ『奥さまは魔女』主題歌

収録ベストアルバム

『QUADRINITY 〜MEMBER'S BEST SELECTIONS〜』 (#2、#5、#6、#8)
『TWENITY 2000-2010』 (#2、#8、#9)
『WORLD'S BEST SELECTION』 (#2、#9)

関連映像作品

『7』：2003年のライブ「Shibuya Seven days 2003」の模様を収録。
『SMILE TOUR 2004 〜全国編〜』：2004年のライブツアー「SMILE TOUR 2004」の模様を収録。
『LIVE IN U.S.A 〜at 1st Mariner Arena July 31, 2004〜』：2004年のアメリカ公演「Live in USA」の模様を収録。

参考文献

本記事は、以下の書籍や雑誌記事を参考に作成されました。

『CDでーた』、角川書店、2001年9月20日号 vol.13 No.16
『WHAT's IN?』、ソニー・マガジンズ、2001年10月号
『WHAT's IN?』、ソニー・マガジンズ、2003年6月号
『Weekly ぴあ』、ぴあ、2004年3月8日号No.1042
『ROCKIN'ON JAPAN』、ロッキング・オン、2004年3月号
『R&R NewsMaker』、ぴあ、2004年4月号No.181
『ROCKIN'ON JAPAN』、ロッキング・オン、2004年4月号
『音楽と人』、USEN(発行)、シンコー・ミュージック(発売)、2004年4月号
『PATi PATi』、ソニー・マガジンズ、2004年5月号
『B=PASS』、シンコー・ミュージック、2004年5月号
『ROCKIN'ON JAPAN』、ロッキング・オン、2004年7月号
『GiGS』、シンコー・ミュージック、2004年8月号
『哲学』、ソニー・マガジンズ、2004年
『WORDS L'Arc〜en〜Ciel』、角川書店、2005年、著者:鹿野淳
『L'Arc〜en〜Ciel Box Set of The 15th anniversary in formation CHRONICLE of TEXT 03』、ソニー・マガジンズ、2006年
『別冊宝島1399 音楽誌が書かないＪポップ批評47 L'Arc-en-Cielの奇跡』、宝島社、2007年
『音楽と人』、株式会社音楽と人、2009年7月号
『WORDSⅡ L'Arc〜en〜Ciel』、角川マガジンズ、2010年、著者:鹿野淳
『BASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES/tetsuya L'Arc〜en〜Ciel』、リットーミュージック、2010年
『THE HYDE』、ソニー・マガジンズ、2012年、著者:寶井秀人
『哲学2。』、エムオン・エンタテインメント、2012年
『yukihiro milk another story』、(株)音楽と人、2014年
『音楽プロデューサー 岡野ハジメ エンサイクロペディア CATHARSIS OF MUSIC』、シンコーミュージック・エンタテイメント、2019年

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