TMPGEnc

TMPGEnc (ティーエムペグエンク)とは

TMPGEncは、株式会社ペガシスが開発・販売しているMPEG映像作成および編集ソフトウェア、ならびにそのシリーズの名称です。このソフトウェアは、Microsoft Windows環境でのみ利用可能です。「Tsunami MPEG Encoder」の略称として知られています。

歴史

TMPGEncの歴史は、1998年頃に堀浩行氏が17歳で個人開発を始めたことに遡ります。当初はMPEG-1圧縮ソフトウェアとして登場し、その後、ビデオCDやMPEG-2フォーマットに対応するなど改良を重ねました。フリーウェアでありながら、その高画質と高機能性から一般ユーザーだけでなく、ゲームソフトのムービー作成などプロの現場でも広く利用されてきました。特に、『グランツーリスモ3』や『鬼武者』などのゲームで採用されたことはよく知られています。

2000年には、MPEG-2作成機能の実装に際してライセンス料の支払いが必要となることが判明し、MPEG-2への対応が見送られる事態となりました。しかし、2001年にはプロジー（後にライブドアに吸収）からMPEG-2対応などの高機能を有料で実装した「TMPGEnc Professional」の発売が計画されましたが、これは実現しませんでした。

その後、2001年に堀氏らは株式会社ペガシスを設立し、MPEG-2に対応した「TMPGEnc Plus」を発売しました。また、MPEG-2作成機能を期限付きにした無料版TMPGEncも引き続き公開されました。

ペガシスはその後、「TMPGEnc DVD Author」などのDVD-Video作成ソフトや、「TMPGEnc XPress」、「TMPGEnc MPEG Editor」といったMPEGカット編集ソフトを開発・販売しました。

特に「XPress」では、ストリーミングSIMD拡張命令（SSE）などCPUの拡張命令への対応が迅速であったことや、2008年にはCUDAに対応したことで、CPUやGPUの性能を測る際の検証目的にも使われることが多いです。

製品群

TMPGEnc Video Mastering Works

「TMPGEnc XPress」の機能を大幅に進化させたエンコーダです。2011年1月12日に最初のバージョン5がリリースされました。H.264エンコーダにはオープンソースのx264を採用しており、MKVファイルやWebMファイルにも対応しています。また、タイムライン編集機能も搭載されています。

TMPGEnc Authoring Works

「TMPGEnc DVD Author」の後継となるDVD/BD-Videoオーサリングツールです。2008年10月に最初のバージョン4が発売され、その後2012年1月にバージョン5、2016年12月にはバージョン6がリリースされました。BDMV形式の書き出しに対応しています。

TMPGEnc MPEG Smart Renderer

「TMPGEnc MPEG Editor」の後継として発売されたカット編集ツールです。2012年8月に最初のバージョン4がリリースされました。新たにH.264/AVCのスマートレンダリングに対応し、必要最小限の箇所のみ再エンコードすることで画質劣化を抑えつつ、フレーム単位での編集を可能にしました。BDAV形式の書き出しや追記も可能です。

TMPGEnc Movie Plug-in MPEG-2 for EDIUS

グラスバレー（旧トムソン・カノープス）の映像編集ソフトEDIUS専用のプラグインです。TMPGEncのエンジンを利用してMPEG2出力が可能になります。EDIUSのバージョンごとに別売されています。

以前は、同社のFirecoder Bluや東芝のノートパソコン「コスミオ」に搭載されていたSpursEngineハードウェアによる高速化にも対応していました。

TMPGEnc Movie Plug-in AVC for EDIUS / Premiere Pro

前述のTMPGEnc Movie Plug-in MPEG-2 for EDIUSのAVC版です。EDIUS用プラグインは対象バージョンごとに別売されており、AdobeのPremiere Pro用プラグインも存在します。

TMPGEnc Movie Plug-in Commercial Candidates Detector

「TMPGEnc Video Mastering Works」や「Authoring Works」用のCM検出プラグインです。

TMPGEnc KARMA.. Plus

動画管理ソフトウェアです。

TMPGEnc PGMX CREATOR

ファイルベースの独自動画形式「PGMX」用のオーサリングソフトです。

これらの製品の機能限定版やOEM版も多数存在します。

開発を終了した製品群

TMPGEnc期限付き無料版 / TMPGEnc Plus (有料)

初期バージョンの流れを汲むエンコーダです。外部のコーデックを利用することでDivXなどMPEG以外のエンコードも可能でした。2008年5月29日リリースのv2.525が最終バージョンです。バージョン3からはXPressに移行し開発終了となりましたが、3.0 XPressのリリース後も愛用者が多くいました。TMPGEnc無料版は現在も入手可能ですが、商用利用は禁じられています。TMPGEnc Plusは2015年9月30日に販売終了しています。

TMPGEnc XPress

TMPGEncの機能を大幅に進化させたエンコーダです。2004年に最初のバージョン3.0 XPress、2006年に4.0 XPressがリリースされました。ドルビーデジタル、WMV、XDVD、HDV準拠のハイビジョンMPEG-2、MPEG-4/H.264、Flash Video（有料プラグインが必要）など、多くのフォーマットに対応していました。バージョン5からはVideo Mastering Worksに移行し、開発は終了しました。

TMPGEnc DVD Author

2003年に発売されたDVD-Videoオーサリングツールです。TMPGEncの流れを汲む直感的なカット編集機能が特徴です。v1.xは評価が高くありませんでしたが、2005年に発売されたv2.0では編集機能が大幅に進化し、スマートレンダリングやトランスコード（再エンコードよりも画質劣化を抑えつつビットレートを下げる）機能が搭載されました。2006年には「DVD Author 3 with DivX Authoring」が公開され、DVD-Videoと同様にメニュー機能などを持つDivX Ultraに対応しました。バージョン4からはAuthoring Worksへ移行し、開発は終了しました。

TMPGEnc MPEG Editor

TMPGEnc無料版に搭載されていたMPEGカット編集ツールを独立させたソフトウェアです。2004年発売。スマートレンダリングを搭載し、必要最小限の箇所のみ再エンコードすることで画質劣化を抑え、フレーム単位での編集を可能にしました。後にHDV・DVD-VR・BDAV形式の編集・書き出しにも対応しました。

萌えぺぐえんく

TMPGEnc XPress/TMPGEnc DVD Authorをベースにアニメの圧縮に特化したエンコーダです。丸紅インフォテックが販売しました。

Movie to Portable / TMPGEnc Movie Style

iPodやPSPなど外部機器との連携に特化したエンコーダです。

その他

XDVD

MPEG-2のGOPの長さをDVD-Video準拠の18フレームから60フレーム以上に拡張した独自規格です。DVD-Videoの規格からは外れていますが、一般的なDVDプレーヤーで再生できることが多いです。圧縮率を最大2倍にまで高めることができますが、エンコード速度が遅いことやDivX・MPEG-4などに比べてメリットが少ないため、普及しませんでした。

L.E.A.P.System

2004年以降のTMPGEncシリーズで導入されたアクティベーションシステムです。外販もされていますが、導入事例は多くありません。RPGツクールXP/VXがこのシステムを採用しています。

外部リンク

株式会社ペガシス
TMPGEnc.net（TMPGEnc無料版、サポート掲示板など）
* Hori Homepage （開発者・堀浩行のホームページ。更新は2002年まで）

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