チベット仏教(བོད་བརྒྱུད་ནང་བསྟན།)は、主に
チベットを中心に発展した
仏教の一派で、古典的な
仏教の教えを基盤にしながら、特徴的な教義体系や実践方法を持っています。
チベット仏教は、
インドから伝わった大乗
仏教の流れを継承しつつ、強い影響を受けた
インド後期
密教や哲学的な教えを併せ持っています。特に、
出家制度や
仏教の基本である四聖諦、そして
金剛乗と呼ばれる
密教的な修行法を通じて、信徒は
仏性の実現を目指しています。
教義と特徴
チベット仏教の教義は「
智慧」と「方便」を重視し、特に無上瑜伽
タントラの実践が中心となります。各宗派には、
ニンマ派(古派)、
カギュ派(カギュー派)、サキャ派、
ゲルク派という四つの主要な宗派があり、これらはいずれも
顕教と
密教の併修を行っています。また、
チベット語訳の大蔵経を基にした独自の経典体系があり、これが
仏教研究において重要な役割を果たしています。
8世紀から14世紀にかけて、
チベットは
インド大乗
仏教の重要な伝承地となり、教義や実践方法が深く根付くこととなりました。この期間、特に後期
密教の教えが販促され、
サンスクリット語から
チベット語への逐語訳による経典の翻訳が盛んに行われました。これにより、原典に即した教えが継承され、今日に至るまでの深い知恵を醸成しています。
宗派の共通性と信仰形態
四つの宗派は、それぞれ独自の修行の体系を持ちながらも、共通して
顕教と
密教の両方に重きを置いています。信仰対象としては、恐怖を再現する忿怒尊や男女の抱擁を示す
ヤブユムといった
密教的な側面が強調されがちですが、阿弥陀
如来や観音
菩薩など、
仏教全体で広く信仰されている存在も重要視されています。
チベット仏教は独特の文化を持ち、
仏教美術の中でも特にタンカ(仏画の掛軸)や砂
曼荼羅が有名です。加えて、マニ車やタルチョー、観音
菩薩の六字
真言など、民間信仰の形態も独自の発展を遂げています。これらの文化的側面は、
チベット仏教の精神的な深みを象徴しています。
歴史的背景
チベット仏教の歴史は、7世紀前半にさかのぼります。この時期、
ソンツェン・ガンポ王が
唐と
ネパールから嫁いだ王妃の影響で
仏教を国教に定め、
サムイェー寺や
トゥルナン寺が建立されました。その後、再び興隆を見た
チベット仏教ですが、王朝の衰退に伴い一時期は退廃を見せました。
13世紀には
モンゴル帝国の台頭とともに、
チベット仏教は更に広がりを見せました。特に、サキャ派、
カギュ派、
ゲルク派といった宗派がそれぞれの特色を持ちながらも互いに交流し、相互影響を受け合いながら発展していったのです。
ゲルク派は特に、
ダライ・ラマを中心とした統治体制を確立し、
チベット文化の保護者的な役割を果たしています。
近現代の情勢
20世紀後半、特に
1959年のチベット蜂起以降、
ダライ・ラマ14世は
インドに亡命し、
チベットの
仏教は国際的な注目を集めることとなります。
ダライ・ラマの存在は、
チベット仏教を世界に広める役割を果たし、現代の
仏教徒や学者に多くの関心を持たれています。また、日本においても
チベット仏教に関心を寄せる
僧侶や
仏教学者が多く、交流が進んでいます。
現在の信仰と実践
現在、
チベット仏教は多数の宗派が存在しますが、主要な四大宗派が信仰の主流を占めています。各宗派は、教えを守り続けた結果、
顕教と
密教の両面から
仏教を実践する場を提供しています。日本においても、
真言宗との連携が深まり、
チベット仏教を学ぶ機会が多くなっています。このように、
チベット仏教はその独特の信仰形態から今もなお多くの人々に影響を与え続けています。