ムーンライト信州

「ムーンライト信州」は、かつてJR東日本が主に新宿駅と松本駅、信濃大町駅、白馬駅の間を中央本線、篠ノ井線、大糸線経由で運行していた臨時夜行快速列車です。「ムーンライト」シリーズの一つとして、夜間の移動手段として重宝されました。

本稿では、「ムーンライト信州」の歴史とともに、中央本線東京駅 - 塩尻駅間（中央東線）で運行されていた夜行列車の沿革についても詳しく解説します。

概要

2002年 12月1日のダイヤ改正で、臨時快速列車として運転を開始しました。この改正で廃止された急行「アルプス」の代替としての役割も担っていました。しかし、2018年を最後に運行は終了し、使用されていた189系車両も2019年に引退しました。

運行概況

2010年以降は、下り81号と上り90号・92号の1.5往復体制で運行されていました。下り列車の方が運行日数が多く、主に多客期に運転されました。通常は81号として運転されましたが、まれに91号として運行される年もありました。

上り列車は、定期列車であった急行「アルプス」時代から利用が少なく、2010年以降は年2回、上諏訪駅近くで開催される諏訪湖祭湖上花火大会の開催当日深夜（終了後）に運転されるのみでした。2017年までは90号と、続行列車として山梨県内の停車駅を増やした92号が運転されていましたが、最終年の2018年には90号のみが設定されました。

停車駅

停車駅については、詳細な情報が記載されていません。

使用車両

全車指定席制で、様々な車両が使用されました。

183系・189系

かつて夏季にはグリーン車を連結した9両編成や、グレードアップ車を中心とした幕張車両センター所属のC編成も投入されていました。しかし、2008年春のダイヤ改正以降は幕張車が「中央ライナー」から撤退したため、長野総合車両センター所属のN編成（モノクラス6両）が原則として使用されるようになりました。

車両運用の都合で、豊田車両センターのM50編成や幕張所属の旧「あずさ」色のマリ31・32編成が投入されたこともあります。また、2006年3月には、長野車の検査と豊田・幕張車による他の臨時列車運用が重なったため、田町車両センター所属の国鉄色のH61編成が投入されました。

E257系

2007年 8月15日には、「ムーンライト信州92号（諏訪湖花火大会号）」として、松本車両センター所属のE257系11両編成が投入されました。これは、通常使用される幕張所属の183系が臨時「あずさ」で運用されたため、車両が不足したためです。

2008年3月28日の81号、2009年夏季と2015年夏季の一部列車は、E257系9両で運転されました。

E351系

2008年の諏訪湖花火大会では、92号にE351系12両編成が投入されました。午後に下り臨時「スーパーあずさ」で松本へ送り込み、夜に「ムーンライト信州」に充当しました。2015年と2016年の諏訪湖花火大会に伴う臨時90号新宿行にも、E351系12両編成が使用されました。

その他の列車

ファンタジー舞浜

2002年 7月には、東京駅 - 穂高駅間で快速「ルンルン舞浜」として運転を開始しました。同年12月に「ファンタジー舞浜」と改称され、下りが夜行列車、上りが昼行列車として運転されました。183・189系の6両編成で、1号車が女性専用車両でした。

元々は、1990年から1997年まで舞浜駅 - 長野駅間を信越本線、高崎線、武蔵野線、京葉線経由で運行していた夜行快速列車（169系で運転）の名称でした。この列車は、全列車停車が原則の横川駅で客扱いしない列車でした。

諏訪湖花火大会号

2019年 8月16日と9月7日には、上諏訪駅 - 新宿駅間で上りのみ運転されました。松本車両センター所属のE257系9両編成が使用されました。上諏訪発の時刻は8月16日と9月7日で異なりましたが、新宿着の時刻は同じでした。停車駅は、ムーンライト信州90号と同じく、上諏訪、小淵沢、甲府、大月、八王子、立川、新宿でした。

2020年と2021年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で諏訪湖花火大会が中止になったため設定されず、2022年も諏訪湖花火大会は実施されましたが、この列車は設定されませんでした。

2023年8月15日には、上諏訪駅 - 新宿駅間で4年ぶりに特急列車として運行されました。停車駅は上諏訪、八王子、立川、新宿で、E353系12両が使用されました。2024年も運行が予定されています。

アルプス

2024年 7月から11月にかけて、新宿駅 - 白馬駅間の下りのみ、E257系2000番台9両編成で運転される特別急行列車です。

中央東線夜行急行・快速・普通列車沿革

中央東線では、1993年12月まで主に登山客向けの夜行普通列車が設定されていました。

戦前

1906年6月：中央本線の昌平橋駅 - 塩尻駅間（中央東線）が全通しました。
1911年5月：塩尻駅 - 名古屋駅間（中央西線）が全通し、飯田町駅 - 名古屋駅間に東西直通運転の始まりとなる直通夜行列車705・706列車が設定されました。
1913年4月：飯田町駅 - 長野駅間に夜行列車1往復が新設されました。
1921年6月：二等寝台車の連結が開始されました。
1922年3月：飯田町駅 - 長野駅間の夜行列車が2往復に増発されました。ただし、増発列車には寝台車は連結されませんでした。
1923年 7月：3往復に増発されました。
1927年1月：2往復に削減されました。
1931年 7月：飯田町駅 - 甲府駅間に臨時の夜行列車が下り1本新設されました。
1933年9月：飯田町駅の旅客営業が廃止され、長距離列車は新宿駅始発となりました。
1934年：甲府駅 - 名古屋駅間の長距離列車が新設されました。
1938年2月：中央本線経由の新宿駅 - 名古屋駅間の直通列車は一旦消滅しました。
1944年4月：新宿駅 - 長野駅間列車の寝台車連結が廃止されました。
1945年6月：戦局の悪化により新宿駅 - 長野駅間列車は1往復に削減され、下り夜行・上り昼行となりました。新宿駅 - 名古屋駅間の直通列車が下り昼行・上り夜行で復活しました。

戦後

1950年10月：中央東線の夜行普通列車が新宿駅 - 長野駅間1往復の407・408列車となりました。

その後、世情が落ち着くにつれて、短距離の登山客向けの臨時夜行列車が設定されました。

1972年3月 - 11月：中央東線下り夜行列車の最盛期を迎えました。
定期普通列車425列車（419列車を改番）の他に、臨時の夜行普通列車が甲府駅、上諏訪駅、河口湖駅などへゴールデンウィーク中に3 - 5本、さらに急行「アルプス」「たてしな」が定期2本・臨時7本程度設定されました。

週末の夜に登山客が集中したため、臨時を含めて下り列車の設定が多く、上りは定期普通列車である426列車（418列車を改番）のほか急行「アルプス」が定期1本・臨時1本のみでした。

425列車は登山客に多く利用されたことから、「山男列車」とあだ名されました。

1975年3月：ダイヤ改正で425・426列車は電車化され、441M・442Mとなりました。

425・426列車のみを受け持っていた飯田町客貨車区（西イイ）の廃止に国労が反発し、「425列車を愛する会」という客車列車にある郷愁を残そうという登山愛好会と協同して反対運動も繰り広げました。

7月には、「425列車を愛する会」などの運動に応える形で、新宿駅 - 岡谷駅間に下り臨時客車列車が設定され、以後1984年9月までシーズン中に運転されました。

1985年3月：442Mが廃止され、441M（後の421M）が上諏訪止まりとなりました。

1986年11月：急行「アルプス」の昼行列車が全廃されたことに伴い、夜行急行「アルプス」の車両が165系から特急「あずさ」と共通運用の183・189系に置き換えられました。

1988年4月：14系座席車4両に14系寝台車2両を連結した、白馬駅行臨時急行「アルプス91号」が運転を開始しました。始発駅は新宿駅のほか、千葉駅発にまで延長されることもありました。以後1992年8月までシーズン中に運転されました。

1992年3月：421Mが1521M甲府行きとなりました。

1993年12月：1521Mが廃止されました。以後は、松本行きの臨時快速8421Mなどが165系や115系を使用して運転されたこともありましたが、1998年5月を最後に運転が終了しました。

2002年 7月：東京駅 - 穂高駅間で快速「ルンルン舞浜」の運転が開始されました。同時に、115系を使用した新宿駅 - 松本駅・白馬駅間で臨時快速列車も運転されました。同列車は秋シーズンには松本電車区所属の「あずさ」用183・189系に置き換えられ、全車指定席となり、新宿駅 - 長野駅・白馬駅間を「しらかば白馬」「しらかば長野」「しらかば新宿」の愛称で運転されました。

2002年 12月1日：ダイヤ改正で急行「アルプス」が廃止され、「ムーンライト信州」の運転が開始されました。「ルンルン舞浜」は「ファンタジー舞浜」に改称されました。

2018年 9月1日：上り列車の最終運行となりました。
2018年 12月30日：下り列車の最終運行となりました。

2019年 8月16日・9月7日：上りムーンライト信州90・92号の後継にあたる「諏訪湖花火大会」号が運転されました。この9月7日の「諏訪湖花火大会」号が中央本線最後の夜行快速となりました。

2023年8月15日：特急列車として「諏訪湖花火大会」号が設定されました。

2024年 7月12日・8月9日・9月13日・20日・10月11日・11月1日：臨時特急列車として新宿 → 白馬間で「アルプス」が設定されました。

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