メキシコ料理

メキシコ料理の世界

メキシコ料理は、アステカ族やマヤ族といった先住民の伝統的な料理と、スペインによる征服後に伝わったヨーロッパの料理が融合した、独特の食文化です。トウモロコシ、インゲン豆、そして様々な種類の唐辛子（チレ）を巧みに用いた料理が多く、辛味を効かせた独特の味わいが特徴と言えるでしょう。地方によっては、昆虫食の伝統も色濃く残っています。メキシコ国内はもちろんのこと、アメリカ合衆国カリフォルニア州やテキサス州といった旧メキシコ領、そしてシカゴなどの大都市圏のメキシコ人コミュニティにおいても広く親しまれています。アメリカでは、テクス・メクス料理やカル・メクス料理といった独自のスタイルに発展し、メキシコ料理をベースにアメリカナイズされた料理も数多く存在します。

メキシコ料理の種類

ここでは、メキシコ料理の数ある料理の中から、代表的なものをいくつか紹介します。

スープ

カルド・トラルペーニョ: 鶏肉、野菜、アボカドを使った、クリーミーで風味豊かなスープです。
ソパ・デ・フリホーレス: うずら豆をベースにした、濃厚な豆のスープ。玉ねぎなどの野菜とじっくり煮込み、ミキサーでペースト状にして牛乳で伸ばします。コリアンダーやクローブなどのスパイスで風味付けし、トトポス（揚げたトルティーヤチップス）を添えて味わいます。
ソパ・デ・トルティーヤ: 揚げたトルティーヤをトマトベースのスープに入れた、メキシコを代表するスープの一つです。シンプルながらも奥深い味わいが魅力です。
ソパ・デ・アホ・イ・バカ: ニンニクと牛肉をじっくり煮込んだ、滋味深いスープです。
ソパ・デ・リマ: ユカタン半島を代表する、ライムの爽やかな酸味が特徴のスープ。鶏肉や野菜と共に味わいます。
ソパ・デ・マリスコス: 海老やイカなどの魚介類をふんだんに使用した、風味豊かなスープです。
ソパ・デ・アルボンディガス: 牛肉のミートボールを入れた、鶏ガラスープです。
ポソーレ: アルカリ処理したトウモロコシと豚肉を使った、独特の風味と食感が特徴的なスープです。
メヌード: もつを使った、コクのあるスープです。

前菜・サラダ

ワカモーレ: アボカドをベースにした、定番のディップです。アボカド、玉ねぎ、トマト、唐辛子、コリアンダーなどを混ぜ合わせます。
パパス・コン・ナタ: 生クリームで煮込んだジャガイモ料理です。
エンサラダ・デ・マリスコス: 魚介類を使ったサラダです。シナモンの利いたフレンチドレッシングがメキシコ流です。
セビチェ: 魚介類をライム汁に漬けた、爽やかなマリネです。

トルティーヤとマサを使った料理

トルティーヤはメキシコ料理の主役ともいえる食材です。トウモロコシをアルカリ処理して作られるマサから作られるトルティーヤは、南部の地域で一般的に使われますが、北部では小麦粉のトルティーヤもよく使われています。

タコス: 様々な具材をトルティーヤで巻いた料理です。肉、野菜、豆など、様々なバリエーションがあります。
トトポス: トルティーヤを小さく切って乾燥させ、揚げたものです。ワカモレやサルサなどのディップと一緒に食べます。
トスターダ: トルティーヤを揚げて、具材を乗せた料理です。
チラキレス: トトポスをサルサで煮込んだ料理です。
エンチラーダ: トルティーヤに肉やチーズなどを巻いて、唐辛子ベースのソースで煮込んだ料理です。
ブリート: 小麦粉のトルティーヤで肉などの具材を巻いた料理です。
ケサディーヤ: マサにチーズを挟んで焼いた料理です。
シンクロニサーダ: 小麦粉のトルティーヤにチーズを挟んで焼いた料理です。
ウェボス・ランチェロス: メキシコ風目玉焼きです。
タマル: 肉などの具材をトウモロコシの皮で包んで蒸した料理です。
トラユーダ: メキシコ風ピザです。
タキートス: 小さなタコスです。

豆料理

インゲンマメはメキシコ料理において重要な食材です。

フリホーレス・デ・オヤ: シンプルに煮込んだインゲンマメです。
フリホーレス・レフリトス: インゲンマメを炒めてペースト状にしたものです。

肉料理

カルネ・アサーダ: メキシコ風ステーキです。
カルネ・コン・パパス: ステーキとジャガイモの料理です。
ポヨ・コン・ヒトマテ: 鶏肉のトマト煮込みです。
モーレ: 唐辛子などをベースにしたソースで煮込んだ料理です。
チレス・エン・ノガーダ: チレ・ポブラノに肉を詰めて揚げ、ザクロ、胡桃ソース、コリアンダーで彩り豊かに仕上げた料理です。メキシコ独立記念日の祝祭料理としても有名です。
バルバコア: 豚肉や羊肉などをじっくりと蒸し焼きにした料理です。
アドボ: 唐辛子ベースのソースで煮込んだ豚肉料理です。
チレ・レイェノ: 大きな唐辛子にひき肉などを詰めて揚げた料理です。
カルニータス: 豚肉料理です。

魚介料理

ウアチナンゴ・ア・ラ・ベラクルサーナ: ウアチナンゴ（フエダイの仲間）をトマトベースのソースで煮込んだ料理です。

デザート

アロス・デ・クレマ: 米のプディングです。
フラン: カスタード[[プディング]]です。
カヘタ: ドゥルセ・デ・レチェです。
カピロターダ: 四旬節に食べられるブレッドプディングです。
パステル・デ・トレス・レチェス: 3種類のミルクを使ったスポンジケーキです。
ロスカ・デ・レイェス: 公現祭に食べられるリング状の菓子パンです。

その他

サルサ: トマトや唐辛子などを混ぜ合わせた調味料です。
ピコ・デ・ガヨ: 刻んだトマト、玉ねぎ、唐辛子などを混ぜ合わせたサルサです。
エンパナーダ: 肉などを詰めたペイストリーです。
トストーネス: 揚げたプランテンです。
エスカベチェ: 火を通した食材をマリネ液に漬けた料理です。

飲み物

カフェ・メヒカーノ: メキシコ風コーヒーです。
カフェ・コン・レチェ: ミルク入りコーヒーです。
カフェ・デ・オジャ: 伝統的な土器で煮出したコーヒーです。
チョコラーテ: シナモン風味のホットチョコレートです。
オルチャータ: 米や種実類を使った甘い飲み物です。
アトーレ: トウモロコシと水から作る発酵性清涼飲料です。
アグア・デ・トゥナ: ウチワサボテンの実のジュースです。
アグア・デ・ハマイカ: ハイビスカスのジュースです。
メスカル: リュウゼツランを原料とした蒸留酒です。
テキーラ: リュウゼツランの一種を原料とした蒸留酒です。
プルケ: マゲイの汁を発酵させた飲み物です。
テキーラ・サンライズ: テキーラとオレンジジュースのカクテルです。
テキーラ・サブマリン: 生ビールにテキーラのショットグラスを沈めた飲み方です。
テカテ: メキシコの人気ビールです。
コロナビール: メキシコビールです。
マルガリータ: テキーラベースのカクテルです。
チャロ・ネグロ: テキーラとコカ・コーラを混ぜたカクテルです。

主要な食材

メキシコ料理には、様々な独特の食材が使われています。

唐辛子（チレ）

メキシコでは100種類以上の唐辛子が栽培されていると言われています。
チレ・ポブラーノ
チレ・ハラペーニョ
チレ・セラーノ
チレ・チポトレ
チレ・アンチョ
チレ・アバネロ
チレ・マンサノ
チラカ
チレ・パシーヤ

植物

リモン（ライム）
ヒトマテ（トマト）
トマティーヨ（オオブドウホオズキ）
シラントロ（コリアンダー）
エパソーテ（アリタソウ）
オレガノ
ヒカマ
チャヨーテ（ハヤトウリ）
プラタノ（プランテン）
フロル・デ・カラバサ（ズッキーニの花）
クィトラコーチェ（トウモロコシ黒穂病菌に寄生されたトウモロコシの実）
ノパル（ウチワサボテン）
トゥナ（ウチワサボテンの実）

肉類

チョリソ（生ソーセージ）
ロンガニーザ
モロンガ（豚肉のブラッドソーセージ）
* チチャロン（豚の皮の揚げ物）

一日の食事

メキシコでは、アルムエルソ（遅めの朝食）、コミーダ（遅めの昼食）、夕食という三度の食事をとります。コミーダが最も重要な食事で、ボタナ（前菜）、ソパ・セカ（米またはパスタの料理）、主菜、フリホーレス・デ・オヤの順で提供されます。

2010年には、メキシコの伝統料理がユネスコの無形文化遺産に登録されました。メキシコ料理は、食材の豊富さ、多様な料理法、そして豊かな歴史と文化が織りなす、魅力あふれる食文化です。

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