矢吹申彦

矢吹申彦（やぶき のぶひこ）は、1944年4月7日に東京都世田谷区で生まれ、2022年10月28日に78歳でこの世を去った、日本のイラストレーター、グラフィックデザイナー、装丁家、そして随筆家です。俳号としては矢吹猿人（さるんど）を名乗っていました。

経歴

東京都立駒場高等学校を卒業後、1965年に桑沢デザイン研究所に入学しますが、1967年に同研究所を離れ、フリーランスのグラフィックデザイナー、イラストレーターとしてのキャリアをスタートさせます。専門学校時代から音楽雑誌のイラストを手がけ、和田誠のアシスタントを務めながら、雑誌『話の特集』のスタッフとしても活動していました。

1969年から1976年まで、月刊『ニューミュージック・マガジン』のアートディレクター兼表紙絵担当として、その独特な世界観を表現しました。その後も、1981年から1990年まで月刊『潮』、1983年から季刊『教育と施設』、そして1992年から1995年まで月刊『東京人』といった各誌で表紙絵を担当。これらの活動に加え、松任谷由実の『流線形'80』や森山直太朗の『さくら（独唱）』などの音楽アルバムのジャケットデザイン、さらには多数の書籍のイラストレーションも手がけました。イラストレーションの分野にとどまらず、装幀や文章、そして画文の連載も担当するなど、その活動は多岐にわたります。

また、東京イラストレーターズ・ソサエティの会員としても積極的に活動していました。湯村輝彦とは「Y2」というチームを結成し、後に河村要助も加わって「100パーセント・スタジオ」と改名し、共同で作品制作を行いました。

2022年10月28日、敗血症により78歳で逝去。その人生は、イラストレーションの世界に多大な貢献をもたらしました。

著作

矢吹申彦は、数多くの著作も残しており、その才能は文章表現にも発揮されていました。以下は、彼の主な単著と共著の一覧です。

単著

『ぼくの絵日記 遠いおかしな日々を…』 エイプリル・ミュージック、1979年
『矢吹申彦風景図鑑』 美術出版社、1979年
『東京面白倶楽部 散歩者のための』 絵と字 話の特集、1984年
『文人志願』 文化出版局、1985年
『愉快な情景 子供歳時記』 画・文 筑摩書房、1987年
『こどもたちのオーケストラ入門』 文と絵 評論社、1990年
『くるま』 画 二玄社、2009年
『おとこ料理讀本』 平凡社、2011年
『東京の100横丁』 フリースタイル、2014年
『矢吹申彦音楽図鑑』 Pヴァイン、2016年

共著

『かずあそび ふしぎなかずのくに』 片岡輝 主婦と生活社、1976年
『王さまにもにも』 舟崎靖子作、サンリード、1980年
C.イブラード・パーマー『ジャマイカの太陽』（イラスト）、掛川恭子訳 岩波少年文庫、1980年
オスカー・ワイルド『しあわせな王子』今江祥智訳 集英社、1980年
『11わる4…』 舟崎靖子作、筑摩書房、1981年
『まるぽちゃさんちはおおさわぎ』 村山桂子、童心社、1987年
『峠の声』 伊集院静作、講談社文庫、1994年
『やわらかな記号』 小川みなみ作、講談社、1995年
『頭だけの少年 タイ民話ほか』 宮脇紀雄ほか訳 講談社青い鳥文庫、1996年
『新しい森 2050年西新宿物語』 小川みなみ作、講談社、1997年
『めたねこムーニャン』 山中恒作 理論社、1999年
『きょうりゅうがすわっていた』 市川宣子著、福音館書店、2000年
『池波正太郎のそうざい料理帖』全2巻、平凡社、2003-04年
『「特攻」と遺族の戦後』 宮本雅史著、角川書店、2005年
『猫づくし 画報 猫の本音を聞くDVD』 画・文、スーパーエディション、2005年
『余は如何にして服部ヒロシとなりしか』 あせごのまん作、角川ホラー文庫、2005年
『えほん寄席 奇想天外の巻』 桂文我、桂宗助、古今亭菊之丞、桂平治、桂米平 噺、小学館、2007年
『ロック・オブ・エージズ 小倉エージ・インタヴュー&トーク集 MUSIC MAGAZINE増刊』、2009年
『線路はつづくよ』 関川夏央文、フリースタイル、2010年
『くもはいく』 中山千夏文、ハモニカブックス、2011年
『連句日和』 笹公人、俵万智、和田誠共著 自由国民社、2015年
『新幹線各駅停車 こだま酒場紀行』 大竹聡著、ウェッジ、2017年
『時刻表おくのほそ道』 宮脇俊三 イラスト
『嘘つきシンちゃんの脳みそ』 齋藤芳弘、矢吹申彦 スーパーエディション、2020年

これらの作品を通じて、矢吹申彦の独特な世界観と多才な才能を垣間見ることができます。彼の作品は、多くの人々に愛され、日本のイラストレーション界に大きな足跡を残しました。

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