賭博及び富くじに関する罪

刑法において、賭博及び富くじに関する罪は、社会的な法益を侵害する行為として規定されています。これらの罪は、単に個人的な行為にとどまらず、社会全体に悪影響を及ぼす可能性があるため、厳しく規制されています。

賭博を犯罪とする理由

賭博行為が犯罪とされる背景には、以下のような問題点が指摘されています。

破産と人格崩壊: 賭博による金銭的な損失は、個人や家族を破産に追い込み、人格を崩壊させる可能性があります。最悪の場合、自殺や殺人にまで発展するケースも存在します。
詐欺のリスク: 賭博の世界では、イカサマなどの詐欺行為が横行するリスクがあり、参加者が不当な被害を受ける可能性があります。
依存と中毒性: 賭博は、人間の射幸心を刺激し、一度依存してしまうと抜け出すのが難しい中毒性を持っています。
勤労への影響: 賭博への過度なのめり込みは、勤労意欲を低下させ、健全な経済活動を妨げる要因となります。
社会的影響: 賭博は、暴力団などの反社会的勢力の資金源となる可能性があり、社会全体の治安を悪化させる要因となります。
公正性の侵害: スポーツ賭博における八百長行為は、スポーツの公正性を著しく損ない、社会の信頼を失わせます。

賭博罪

賭博罪は、単純賭博罪とも呼ばれ、常習賭博罪と区別されます。

行為

賭博罪が成立するためには、当事者双方が金銭を失うリスクを負っている必要があります。したがって、片方だけがリスクを負うような無料のビンゴゲームなどは、賭博罪には該当しません。

また、詐欺賭博のように、勝敗が一方的に支配されている場合は、賭博罪ではなく詐欺罪が成立します。

既遂時期

賭博罪は、賭けの予約が成立した時点で既遂となります。具体的には、賭け金を出したり、花札を配ったりする行為が、たとえ親を決めるためのものであっても、賭博罪の既遂とみなされます。

常習賭博罪

常習性

常習賭博罪は、賭博を繰り返す習慣がある場合に成立します。必ずしも博徒のような職業的な賭博者である必要はありません。常習性の判断は、賭博の内容、金額、回数、前科の有無などを総合的に考慮して行われます。

共犯の問題

常習賭博罪は、常習者と非常習者が共同で賭博を行った場合、常習者には常習賭博罪が成立しますが、非常習者には単純賭博罪が成立すると解釈されています。

累犯加重の問題

常習賭博罪は、複数回にわたって賭博行為を繰り返しても、一つの包括的な罪とみなされます。しかし、累犯の要件を満たせば、刑が加重される場合があります。

組織的犯罪処罰法上の特則

組織的な犯罪として常習賭博が行われた場合、組織的犯罪処罰法の適用を受け、刑が重くなる可能性があります。

賭博場開張図利罪・博徒結合図利罪

行為

賭博場を開設し、利益を得る行為は、賭博場開張図利罪に該当します。必ずしも特定の場所に人を集める必要はなく、電話やオンラインによる賭博の運営も含まれます。

また、賭博場開張行為は、賭博罪の幇助行為としても扱われます。

組織的犯罪処罰法上の特則

組織的な犯罪として賭博場を開設した場合、組織的犯罪処罰法の適用を受け、刑が重くなる可能性があります。

富くじ罪

富くじの意義

富くじとは、番号札や券を販売し、抽選などの偶然な方法で、購入者間で不平等な利益を分配する行為を指します。福引のように、券を直接購入しない場合は富くじには該当しません。

賭博罪との区別

富くじと賭博の区別は、抽選によって勝負が決まるかどうか、財産の所有権が提供と同時に失われるかどうか、そして、参加者双方がリスクを負うかどうかによって判断されます。

特に、販売者が財産的なリスクを負わない点が、富くじの特徴とされています。

行為

富くじに関する罪には、富くじ発売罪、富くじ発売取次罪、富くじ授受罪があります。取次ぎとは、売買の仲介を意味し、授受とは、発売や取次ぎ以外の所有権の移転を意味します。これらの行為は、有償・無償を問わず罪に問われます。

違法性阻却

日本では、賭博は原則として違法ですが、例外的に合法とされる賭博も存在します。これは、日常的な娯楽を尊重し、賭博による収益を社会福祉に還元する目的があります。

法令に基づいて行われる行為や、社会通念上正当な業務による行為は、刑法上の犯罪には該当しません。

したがって、他の法律で賭博行為が許容されている場合や、賭博行為を前提として規制されている場合は、その範囲内においては合法性が認められます。

合法とみなされる例

一時の娯楽に供する物: 参加者が一時的な娯楽のために消費する物（缶ジュースや食事など）を賭ける行為は、賭博罪に該当しません。ただし、現金そのものを賭けることは認められません。
その他: 法律で認められた公営ギャンブル（競馬、競輪、競艇、オートレース）、宝くじ、スポーツくじ、デリバティブ取引、保険契約、懸賞、パチンコなどが合法的な例として挙げられます。

脚注

出典

前田雅英『刑法各論講義-第3版』東京大学出版会、1999年。

関連項目

富籤
ノミ屋
海外宝くじ
公営競技
手本引
三店方式
ゲームセンター - プライズゲーム
リアルマネートレーディング
オンライン[[カジノ]]
* 真剣師

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