いすゞ・ジャーニーQ

いすゞ・ジャーニーQは、いすゞ自動車がかつて製造・販売していたマイクロバス「ジャーニー」シリーズの、フロントエンジン仕様の中型・小型バスです。本稿では、このジャーニーQを中心に解説します。29人乗り以上のリアエンジン中型バスについては、いすゞ・ジャーニーKを参照してください。

製造は、1995年までは北村製作所が担当していましたが、それ以降はいすゞバス製造に引き継がれ、2001年まで生産されました。

歴史

BY30/31

1968年、いすゞ・TY型中型トラック（後のフォワード）をベースとしたキャブオーバーバスとして登場しました。29人乗りで、架装は川崎重工業と北村製作所が担当しました。主に自家用バスとして導入されましたが、このモデルは後に、リアエンジン中型バスBK32型ジャーニーKへと進化しました。

(K-)DBR370 初代ジャーニーQ

1976年、フォワードのフルモデルチェンジに伴い、エンジン出力を増強し、型式がDBR370となりました。このモデルは、登場後すぐに角張った独特のスタイルにモデルチェンジされました。このスタイルは非常に印象的で、中型バスのCCM/CDM系にも同様のスタイルが採用されました。丸みを帯びた大型バスと比較すると、同じ北村製とは思えないほど異質なボディスタイルでした。K-代まではこの型式で製造されました。

このモデルから「ジャーニーQ」という愛称が付けられ、ローカル路線バスにも採用されるようになりました。

P-MR112F

1984年、昭和58年排出ガス規制（P-代）に対応してモデルチェンジし、型式がP-MR112Fとなりました。エンジン出力は増強されましたが、車体はDBR370とほぼ同様で、リアウインドウが大型化された程度でした。しかし、わずか2年でモデルチェンジされたため、このモデルの販売台数は多くありません。

京浜急行電鉄（現：京浜急行バス）が、旧羽田空港駅と空港ターミナルを結ぶ連絡バス輸送を開始した際に、専用車として1984年にP-MR112Fを導入しましたが、1扉だったため、1988年には前後2扉のP-MR112Dを導入し、短期間で代替されました。

P-MR112D/U-MR132D

1986年にフルモデルチェンジを行い、型式がP-MR112Dとなりました。ホイールベースを短縮し、フロントオーバーハングを拡大することで、フロントエンジン車でありながら最前部へのドア設置を実現しました。エンジンは6BG1型（6,494cc・175ps）を採用しました。車体幅も拡大されましたが、運転席の脇に大きなエンジンカバーがあり、客室内からの運転席への出入りは困難であったため、運転席側に乗務員専用のドアが設置されました。

さらに、1990年には平成元年排出ガス規制（U-代）に対応し、型式がU-MR132Dとなりました。路線仕様としては、このモデルまでが発売されました。

路線仕様

1986年のモデルチェンジにより、他の路線車と同様に2扉車とすることが可能になり、事業者の仕様に合わせてトップドア（前扉のみ）・前中扉・前後扉の選択が可能となりました。これにより、輸送量の少ない路線バスへの採用例が急増しました。ローカル路線だけでなく、奈良交通や傘下のエヌシーバスなど、狭隘路を伴う住宅地の路線に投入されたケースも多くありました。また、群馬中央バスのように、他にほとんどいすゞ車を導入していないにもかかわらず、少数台数ながらローカル路線用に導入したケースもあります。路線バス車両としては、かなり広範囲に導入されました。

しかし、路線バスとして使用する場合、エンジンカバーの上に運賃箱が設置されることになり、運賃箱の位置が非常に高くなるため、特注で背の低い運賃箱を採用した事業者も存在しました。また、エンジンの振動から運賃箱の故障が多くなるという欠点もありました。

1985年には、日野自動車からマイクロバスをリアエンジン仕様にした上でホイールベースを変更し、トップドア設置を可能にしたレインボーRBが登場しました。1980年代後半から1990年代にかけては、全国各地でコミュニティバスが開設され、初期のコミュニティバスにはレインボーRBと並んで多く採用されました。

さらに、1995年8月には、レインボーRBの後継車種として2扉仕様も可能なリエッセが登場しました。それ以降は、フロントエンジンに起因する車内騒音の低減が困難ということもあり、急速に販売台数は減少しました。このため、いすゞ自動車は1995年にコーチビルダーである北村製作所との提携を解消すると同時に、路線仕様車の生産を終了しました。

MR112D/MR132Dは多くの台数が販売されましたが、フロントエンジン構造を最後まで踏襲した結果、路線バス車両としては多少無理があった面は否めません。しかし、全長7mクラスで2扉仕様という路線バス車両のニーズが高かったことは、ジャーニーQの販売台数や導入事業者の多さだけでなく、その後に各メーカーから7mクラスの2扉バスが多く開発・販売されたことからも明らかです。自家用中心だった小型バス市場に一石を投じた存在といえるでしょう。

ジャーニーシリーズは、2003年からは日野自動車とのバス事業統合により、日野・リエッセとの統合車種「ジャーニーJ（RX系）」が販売されていましたが、リエッセと同時に2011年8月をもって生産終了しました。これにより、いすゞ自動車のラインナップから小型路線バスは姿を消しました。

貸切仕様

貸切バスや自家用バスとしては、トップドア仕様のほか、中扉のみの仕様の導入例も少数ながら存在し、特装車のベースとしても使われました。

U-MR132Dとなった1990年には、このシャシを利用してシアターフロアとした貸切車「ロイヤルデッカー」が登場しました。エンジンは6HE1型（7,127cc・195ps）に変更されました。屋根後部が高くなる独特の外観が特徴で、西日本JRバスや東武鉄道など大手事業者での採用も見られました。しかし、「ロイヤルデッカー」は天井もガラス張りとなっていることから、夏は冷房の効きが悪く、冬には結露が生じるといった問題もありました。

U-GR432F/KC-GR433F/KK-GR433F

1991年には、エンジン配置をミッドシップとした上で、全幅をフルサイズ並みに拡大し、スーパークルーザー調のハイデッカー仕様として「グランドロイヤル」も販売されました。型式はGR系。マイクロバスとは思えない居住性を売り物とし、小規模貸切バス事業者だけでなく、大手バス事業者にも採用されました。

型式における排出ガス規制識別記号以下の意味は以下のとおりです。

G - ミッドシップエンジンを指す
R - GVW7.0 - 8.0tクラス
4 - フレーム付きエアサス
32/33 - 6H系エンジン（32は6HE1、33は6HH1）
F - ホイールベース2,601 - 2,900mm

脚注

関連項目

いすゞ・ジャーニー
いすゞ・ジャーニーK
いすゞ・エルガミオ - ジャーニーKの後継車種
* いすゞ・フォワード - ベース車

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