アブドゥル・ラスル・サイヤフ

アブドゥル・ラスル・サイヤフの生涯とアフガニスタン紛争における役割

アブドゥル・ラスル・サイヤフ（1944年生まれ）は、アフガニスタンの政治家であり、ムジャーヒディーンの指導者として、同国現代史において重要な役割を果たしました。パグマーン州出身の彼は、イスラム法学者としての教育を受け、ムスリム同胞団に繋がる組織にも参加しました。ソ連のアフガン侵攻時には、ムジャーヒディーンの主要な指導者として、その後のアフガニスタン紛争に深く関与しました。

生い立ちと教育

サイヤフは、サイイド（ムハンマドの子孫）の家系に生まれました。父親はインドからアフガニスタンに移住した人物でした。サイヤフは、カーブル大学でイスラム法を学び、卒業後には同大学で講師を務めました。さらに、エジプトのアル＝アズハル大学で修士号を取得し、イスラム法学者としての専門性を深めました。大学時代には、イスラム原理主義者のサークルに参加し、ブルハーヌッディーン・ラッバーニーやグルブッディーン・ヘクマティヤールといった、後にムジャーヒディーンの指導者となる人物たちと関係を築きました。

ムジャーヒディーンとしての活動

1974年にムハンマド・ダーウード政権へのクーデター計画が失敗した後、サイヤフは逮捕されましたが、1980年に釈放されパキスタンへ亡命。ソ連のアフガン侵攻に対抗するムジャーヒディーンに加わりました。彼は、ムジャーヒディーン諸派を統合するアフガニスタン・イスラム解放同盟の議長となり、各派の調整役として活躍しました。その後、アフガニスタン・ムジャーヒディーン・イスラム同盟（七者連合）の初代議長に就任し、ムジャーヒディーンの結束を強化しました。

サイヤフは、サウジアラビアから財政的な支援を受け、ジャラーラーバードに軍事キャンプを設立しました。このキャンプは、ウサーマ・ビン・ラーディンとの関係を構築する場ともなりました。また、ペシャーワル郊外に私設の大学を設立し、後にアルカイダの幹部となる人物を育成したとも言われています。彼の訓練キャンプからは、ボスニア・ヘルツェゴビナ、チェチェン、フィリピンなど、世界各地にムジャーヒディーンが派遣されました。

1989年には、ムジャーヒディーン移行政権の首相に選出されましたが、1992年にナジーブッラー政権が崩壊すると、サイヤフの組織は残虐行為に及んだとしてアムネスティ・インターナショナルから追及を受けました。特にアフガニスタン・イスラム統一党を敵視し、ハザーラ人などを虐殺したとされています。また、1996年にスーダンを追われたビン・ラーディンをアフガニスタンに招いたのはサイヤフであるとされています。

その後

サイヤフは、ターリバーンを嫌悪し、1990年代中盤には北部同盟に加盟しましたが、彼の宗教的背景はターリバーンに近いとも言われています。2001年にアフマド・シャー・マスードを殺害した自爆テロ犯の背後にサイヤフがいるという指摘もあります。

2003年にはロヤ・ジルガ代表に選出され、2004年にはイスラム公正党を創設しました。2005年には議会議員に選出され、議会議長選にも出馬しましたが、敗れています。2009年の大統領選では、カルザイを支持しました。同年には暗殺未遂事件に遭いましたが、無事でした。2014年の大統領選にも出馬しましたが、2021年にタリバンが政権を掌握すると、インドに亡命しました。

人物像

サイヤフは、サウジアラビアのワッハーブ派を信奉しており、アフガニスタン南東部のパシュトゥーン人の間で大きな影響力を持っています。彼の妻は、ハフィーズッラー・アミーン大統領の従姉妹であり、3人の子供がいます。

アブドゥル・ラスル・サイヤフは、アフガニスタンの激動の歴史を象徴する人物の一人であり、その行動と思想は、現代アフガニスタンの政治情勢を理解する上で重要な要素となっています。

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