アルゴンキン語派

アルゴンキン語派は、アルギック語族に属する北米先住民の言語グループです。かつては、ロッキー山脈から東海岸にかけての広大な地域で話されていましたが、現在では多くの言語が絶滅の危機に瀕しています。この語派は、共通の祖語から発展したと考えられており、その祖語は少なくとも3千年前に遡ると推定されています。

アルゴンキン語派の分類

アルゴンキン語派は、地理的な分布に基づいて、大きく3つの語群に分けられます。それぞれの語群はさらに細かく分類されており、合計で27ほどの言語が存在するとされていますが、分類については研究者間で議論が続いています。

大平原語群
ブラックフット語: ブラックフット族によって話される言語です。
アラパホ語族: 複数のアラパホ族の言語が含まれます。
シャイアン語: シャイアン族によって話される言語です。
中央語群
クリー語: クリー族によって話される言語で、広範囲にわたって使用されています。
メノミニー語: メノミニー族の言語です。
オジブワ語: オジブワ族、オタワ族、アルゴンキン族などが話す言語で、複数の変種があります。
ポタワトミ語: ポタワトミ族の言語です。
フォックス語: メスクワキ族などによって話される言語です。
ショーニー語: ショーニー族の言語です。
マイアミ・イリノイ語: マイアミ族とイリニ族の言語で、現在は絶滅しています。
東部語群
ミクマク語: ミクマク族の言語です。
アベナキ語: アベナキ族とペノブスコット族の言語で、西アベナキ語と東アベナキ語に分かれます。
マリシート＝パサマクォディ語: マリシート族とパサマクォディ族の言語です。
マサチューセット語: マサチューセッツ族やワンパノアグ族が話していた言語で、現在は絶滅しています。
ナラガンセット語: ナラガンセット族の言語で、現在は絶滅しています。
モヘガン・ペクォート語: モヒガン族とピクォート族の言語で、現在は絶滅しています。
Quiripi-Naugatuck-Unquachog: 複数の部族で話されていた言語で、現在は絶滅しています。
マヒカン語: モヒカン族の言語で、現在は絶滅しています。
デラウェア語群: レナペ族の言語で、ムンシー語とウナミ語が含まれます。
ナンチコーク語: ナンチコーク族の言語で、現在は絶滅しています。
カロライナ・アルゴンキン語: パムリコ語とも呼ばれ、現在は絶滅しています。
ポウハタン語: ポウハタン族の言語で、現在は絶滅しています。
Etchemin語: エチェミン族の言語で、現在は絶滅しています。
Loup語: ニプマク族の言語で、複数の変種があります。
シンネコック語: シンネコック族の言語で、現在は絶滅しています。

アルゴンキン語派の特徴

アルゴンキン語派は、複総合的言語として知られています。これは、他の多くの言語で複数の単語や句で表現される内容を、1つの動詞で表現できるということです。また、3人称は少なくとも2つに区別され、会話における中心人物を明確にする役割があります。これらの特徴は、言語構造の複雑さを示しており、研究者たちを魅了してきました。

特に、エドワード・サピアやレナード・ブルームフィールドといった言語学者が、アルゴンキン語派の研究に大きな貢献をしました。しかし、白人による同化政策、特に「インディアン寄宿学校」での英語教育の強制により、多くのアルゴンキン諸語は消滅の危機に瀕しており、すでに失われた言語も多数存在します。

アルゴンキン語派の影響

アルゴンキン語派は、その地域に多くの地名を残しています。例えば、マサチューセッツ、コネチカット、イリノイ、ミシガン、ウィスコンシン、ミルウォーキー、シカゴ、オタワなどは、アルゴンキン語派の言語に由来しています。また、多くの外来語も英語に取り入れられています。例えば、オポッサム、モカシン、ペミカン、パウワウ、ラクーン、スカンク、スクワッシュ、ウッドチャック、トマホーク、ウィグワムなどの単語は、アルゴンキン語派の言語から英語に取り入れられたものです。

アルゴンキン語派は、北米の歴史と文化に深く根ざした言語グループです。その複雑な構造と豊かな語彙は、言語学的な関心を集めるだけでなく、先住民の文化遺産を理解する上でも非常に重要な役割を果たしています。

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