エクセター (重巡洋艦)

イギリス海軍重巡洋艦エクセターの生涯

エクセター（HMS Exeter, 68）は、イギリス海軍が建造したヨーク級重巡洋艦の2番艦です。艦名はデヴォン州のエクセターに由来し、同名の艦としては4代目にあたります。本艦は、その特異な設計と数々の海戦での活躍により、海軍史に名を刻みました。

設計と特徴

1927年度の海軍計画に基づき建造されたエクセターは、ワシントン海軍軍縮条約の影響を受け、8インチ主砲を6門に減らし、基準排水量を約8,400トンに抑えた設計となりました。これにより、建造コストを削減し、より多くの艦艇を建造することが可能になりました。姉妹艦のヨークとは、艦橋やマストの形状、煙突の位置などに外観上の違いが見られます。

エクセターの設計は、ヨークでの経験を踏まえ、実戦的な改良が施されました。艦幅がわずかに広げられ、居住空間を拡大するために船首楼の側壁が延長されました。艦橋はより低く抑えられ、ネルソン級戦艦を参考に設計されたと言われています。煙突は艦橋から離れた位置に直立して設置され、排煙効率が向上しました。また、カタパルトは2番煙突後方に斜め45度で2基設置され、水上機の運用能力も向上しました。

1941年の大修理では、艦橋に遮風装置が追加され、マストが三脚型に変更されました。さらに、279型レーダーが搭載され、対空兵装も強化されました。具体的には、10.2cm単装高角砲が撤去され、代わりに10.2cm連装高角砲が4基搭載されました。

搭載機関は、アドミラリティ三胴式重油専焼水管缶8基とパーソンズ式オール・ギヤードタービン4基を組み合わせ、最大出力80,000 shp、最大速力32.5ノットを発揮しました。機関配置は、缶室が艦首側、機関室が艦尾側に配置された全缶全機方式を採用しました。

防御面では、機関区のみを防御する舷側装甲が施され、最も厚い箇所で76mm、末端部で25mmの装甲板が用いられました。弾薬庫は舷側防御とは別に、側盾が127mm、前後隔壁と天蓋が76mmの装甲で守られていました。しかし、主砲塔やバーベットの装甲は薄く、水平防御も限定的でした。防御範囲は機関区に限定され、艦首から艦橋脇、後檣から艦尾までの広範囲は無防御でした。

第二次世界大戦での活躍

エクセターは、第二次世界大戦開戦前から南アメリカ戦隊に所属し、大西洋での作戦に従事しました。1939年8月には、ドイツのポケット戦艦「アドミラル・グラーフ・シュペー」の出現に対応するため、輸送船団の護衛や哨戒任務を行いました。

1939年12月13日、ラプラタ沖海戦において、エクセターは軽巡洋艦「エイジャックス」と「アキリーズ」と共に、「アドミラル・グラーフ・シュペー」と交戦しました。火力で劣るイギリス艦隊は、数的優位と機動力を生かして戦いました。エクセターは「シュペー」に複数回の命中弾を与えましたが、自身も11インチ砲弾7発の直撃を受け、甚大な損傷を被りました。艦橋が破壊され、各所で火災が発生、全ての主砲塔が故障しました。61名が戦死、23名が負傷しました。しかし、乗組員の懸命なダメージコントロールと設計上の改良により、沈没を免れました。この海戦での活躍は、イギリス国民を勇気づけました。

修理後、エクセターは1941年3月に戦線に復帰し、大西洋での船団護衛任務に従事しました。その後、極東に派遣され、東洋艦隊に編入されました。

太平洋戦争開戦後、エクセターはオランダ領東インド諸島防衛のために結成されたABDA連合艦隊に参加しました。1942年2月27日、スラバヤ沖海戦において、日本海軍の重巡洋艦や水雷戦隊と交戦しました。この海戦で、エクセターは機関を損傷し、速力が低下しました。混乱の中で、日本軍駆逐艦の攻撃を受け、スラバヤへの後退を余儀なくされました。

スラバヤから脱出を図る中、1942年3月1日、エクセターは護衛の駆逐艦2隻と共に日本海軍の水上部隊と遭遇しました。圧倒的な戦力差の中、エクセター部隊は勇敢に戦いましたが、砲雷撃戦の末に全艦が撃沈されました。エクセターの乗組員は、日本海軍によって救助され、捕虜となりました。

エクセターの沈没は、ラプラタ沖海戦で自沈に追い込んだドイツのポケット戦艦「アドミラル・グラーフ・シュペー」の仇を討ったと日本軍によって宣伝されました。しかし、エクセターの乗組員たちは、捕虜となってもその誇りを失わず、秩序正しく振る舞ったと伝えられています。

後世への影響

エクセターの生涯は、数々の海戦での活躍と、勇敢な戦いぶりと共に、後世に語り継がれています。1956年のイギリス映画『戦艦シュペー号の最後』では、エクセターとしてフィジー級軽巡洋艦「ジャマイカ」が用いられ、その姿が再現されました。エクセターの戦歴は、海戦史における重要な一ページとして、今もなお多くの人々に記憶されています。

もう一度検索