クトゥルフ神話の生物

クトゥルフ神話における異形生物たち

クトゥルフ神話は、H・P・ラヴクラフトによって創造された、宇宙的恐怖をテーマとした架空の神話体系です。その世界観を彩る重要な要素の一つに、多種多様な異形生物の存在があります。これらの生物は、邪神に仕える者もいれば、独立して活動する者もいます。クトゥルフ神話の舞台である地球、あるいは他の星々、さらにはドリームランドといった異次元空間にも関連付けられています。

クトゥルフ神話関連の書籍では、これらの異形生物に関する解説が頻繁に見られ、初期のクトゥルフ神話事典であるフランシス・T・レイニーの『クトゥルー神話小辞典』（1943年）においても既に言及されています。TRPG（テーブルトークRPG）では、これらの生物は「奉仕種族」と「独立種族」に分類され、邪神に仕えるか否かで区別されています。

ラヴクラフト作品に登場する異形生物

以下、代表的な異形生物について解説します。

1. 深きものども:

邪神ダゴンやクトゥルフに仕える奉仕種族であり、インスマスという地名とも深く関わっています。ラヴクラフトの代表作『インスマスを覆う影』で描かれ、ダーレス神話においても重要な悪役勢力として登場します。他の奉仕種族と比較して、作品発表順では後発となりますが、クトゥルフ神話における代表的な存在です。

2. クトゥルフの落とし子:

古代地球を支配した種族の一つであり、クトゥルフと同種族の眷属とされています。クトゥルフ神話における太古の支配者の一端を垣間見ることができます。

3. 古のもの:

独立種族であり、古代地球を支配した種族の一つです。樽型またはウミユリ状の姿をしており、「地球人」と表現されることもあります。名前は定まっていませんが、ラヴクラフトの『狂気の山脈にて』でその存在が明らかになり、その後のクトゥルフ神話においても重要な位置を占めています。

4. ショゴス:

古のものによって創造された奉仕種族ですが、後に反旗を翻しました。万能に変形する細胞から成る不定形生物であり、その姿は多様性に富んでいます。ラヴクラフトの『狂気の山脈にて』に登場し、その異様な姿は多くの読者に強い印象を与えました。

5. ユゴスよりの菌類（ミ＝ゴ）:

奉仕種族または独立種族として分類される場合があり、古代地球の支配種族の一つとされています。外見は甲殻類に似ていますが、生物学的には菌類に近い存在です。ラヴクラフトの『闇に囁くもの』に登場し、その異質な存在感はクトゥルフ神話に独特の雰囲気を与えています。

6. グール（食屍鬼）:

奉仕種族または独立種族として扱われ、人間が魔術などによって変異した存在です。目覚めの世界とドリームランドを行き来し、その存在は不気味さを増しています。ラヴクラフトの『ピックマンのモデル』を始めとした複数の作品に登場し、ロバート・ブロックなども作品に取り入れています。

7. イースの大いなる種族:

独立種族であり、時間を超えて他者と精神交換を行い、知識を集める存在です。その外見は知られていますが、仮の肉体にすぎません。ラヴクラフトの『時間からの影』に登場し、その謎めいた存在感は多くの謎を残しています。

8. 盲目のもの:

独立種族であり、古代地球の支配種族の一つとされています。「飛行するポリプ状生物」とも呼ばれ、名前は定まっていません。イースの大いなる種族と敵対関係にあるとされています。ラヴクラフトの『時間からの影』に登場します。

9. その他の異形生物:

上記の他にも、イェーキュブの芋虫生物、ノフ＝ケー、無名都市の爬虫類、クン＝ヤン人など、多くの異形生物がクトゥルフ神話の世界に存在します。これらの生物はそれぞれ独特の特徴を持ち、クトゥルフ神話の複雑で奥深い世界観を形成しています。また、人間もまたクトゥルフ神話の重要な構成要素であり、邪神を崇拝したり、逆に追撃したりする存在として描かれています。TRPGにおいては、プレイヤーキャラクターである探索者は「正気度（SAN値）」というステータスを持ち、異形生物との遭遇によってその正気度が脅かされるという設定があります。

ドリームランドの生物

ドリームランドはクトゥルフ神話における異次元空間であり、独自の生物相が存在します。シャンタク鳥、ナイトゴーント（夜鬼）、猫、大いなるものなどが代表的な存在です。これらの生物はドリームランド固有の存在であると同時に、クトゥルフ神話全体の神秘性を高める役割を果たしています。

その他の重要な異形生物

ラヴクラフト以降の作家たちが創造した、あるいはラヴクラフト作品を元に発展したクトゥルフ神話の異形生物も数多く存在します。ティンダロスの猟犬、蛇人間、大地の妖蛆、ヴーアミ族、ミリ・ニグリ、チョー・チョー人、バイアクヘー、黒い仔山羊、星の精、クトーニアンなどは、それぞれ独自の起源と特徴を持つ重要な存在です。これらの生物は、クトゥルフ神話の広大で複雑な世界観をより豊かにしています。

注記: 本稿ではクトゥルフ神話の膨大な異形生物の中から代表的な例を抜粋して紹介しました。全ての生物を網羅することは困難であるため、より詳細な情報については関連書籍などを参照ください。

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