グアテマラの歴史

グアテマラの歴史は、中央アメリカに位置するこの国の、先コロンブス期から現代に至るまでの変遷を記述したものです。

先コロンブス期

紀元前1800年頃、太平洋岸でバラ相と呼ばれる土器文化が栄えました。この文化では、テコマテという祭祀用の無頸壺や、メソアメリカ最古とされる土偶が作られました。紀元前900年頃には、パシオン川流域のセイバルやアルタル・デ・サクリフィシオスに集落が形成され、その後ナクベには高さ18mにも達する大規模な建物が建設されました。一方、南部の高地では、カミナルフューを中心にラス・チャルカス文化が発展し、精巧な土偶が作られました。

紀元前500年以降の先古典期後期には、ペテン低地でワシャクトゥンやエル・ミラドールといった大規模なマヤ都市が出現しました。南部の高地では、イサパ文化の影響を受けた石碑を伴う、アバフ・タカリク、エル・バウル、カミナルフューなどの祭祀センターが築かれました。

古典期には、378年にティカルにテオティワカンと関係の深い強力な王朝が成立し、カラクムルと覇権を争いました。カミナルフューもテオティワカンの影響下に入り、エル・バウル周辺にはナワ語系のピピル族によるとされるコツマルワパ様式の祭祀センターが築かれました。

後古典期に入ると、11世紀頃から北方のチチメカ人が侵入し、その影響を受けてキチェ王国やカクチケル王国にチチメカ様式の影響を受けた都市が築かれました。10世紀初頭までにペテン低地の祭祀センターは放棄されましたが、グアテマラ高地のマヤ系諸王国はスペイン人に征服されるまで存続しました。

スペイン植民地時代

1492年にクリストーバル・コロン（コロンブス）がアメリカ大陸を「発見」すると、現在のグアテマラにもヨーロッパ人の征服者が訪れました。1523年、スペイン人の征服者ペドロ・デ・アルバラードがこの地を征服し、1524年にキチェ族の都クマルカフ（ウタトラン）を攻略しました。

カクチケル族の協力を得て、イシムチェに本拠地を構えましたが、間もなく同盟関係は破綻し、カクチケル族は征服に抵抗するようになりました。1526年にイシムチェは破壊され、アルバラードは現在のシウダー・ビエハに新しい首都を建設しました。その後、テクパンに都を移しましたが、1541年にアグア火山の噴火で壊滅し、現在のアンティグア・グアテマラが首都となりました。

1544年、スペインはグアテマラ総督領を設立し、自治権を与えました。グアテマラ総督領の統治範囲は、現在の中米五国を含む広大なものでした。スペイン人征服者の政策により、先コロンブス期のマヤ文化の古文書はほとんどが焼却されましたが、キチェ族の創世神話『ポポル・ヴフ』は現在に伝えられています。

1717年と1773年の地震でアンティグア・グアテマラが甚大な被害を受け、1776年に首都はグアテマラシティへと移されました。1786年にはカリブ海側の領土がイギリスに割譲され、英領ホンジュラスとして統治され、現在のベリーズとなっています。

独立から20世紀半ばまで

グアテマラ建国以後の歴史は、革命、クーデター、非民主主義政権、そしてアメリカ合衆国からの内政干渉に彩られています。

1789年のフランス革命を機に、ヨーロッパの政局が混乱し、ナポレオン戦争が勃発しました。1808年には、スペイン本国がナポレオン1世に侵攻され、インディアス植民地は偽王への忠誠を拒否しました。

グアテマラ総督領は1821年にスペインから独立を宣言し、同年中に第一次メキシコ帝国に併合されましたが、1823年にメキシコ帝国が崩壊し、新たに結成された中央アメリカ連合州の一州となりました。

中米連邦は最初から内紛が絶えず、1827年から1838年にかけて、保守主義のグアテマラ派と自由主義のエル・サルバドル派の内戦となり、結局カレーラが勝利して連邦は解体し、1839年にグアテマラは独立国となりました。

内戦に勝利したカレーラはグアテマラを支配し、1865年に死去するまで強力な保守統治を行いました。カレーラはインディヘナに対して共有地の保護政策など優れた政策を行いました。1856年には、ウィリアム・ウォーカーとの国民戦争に中米連合軍の一員として参戦しました。

1871年、自由党が内戦に勝利し、1873年にはフスト・ルフィーノ・バリオスが大統領に就任し、自由主義的な政策が行われました。しかし、近隣諸国との戦争が続き、インディヘナの共有地が解体され、大土地所有制が強化されました。この時期からコーヒーモノカルチャー化が進み、1880年代には輸出の9割近くをコーヒーが占めるようになりました。

1898年、マヌエル・ホセ・エストラーダ・カブレーラが大統領に就任し、22年間独裁政治を行いました。外国資本を優遇する政策を取り、ユナイテッド・フルーツ社には広大な土地の取得権や主要鉄道の運営権が認められました。1920年に反政府運動でカブレーラが失脚すると、政治的空白状況が生まれましたが、1931年にホルヘ・ウビコ将軍が権力を握り、苛烈な統治を行いました。経済面では、財政支出の削減や対外債務支払いの停止を行いつつ、コーヒー産業の保護・再建を進めました。第二次世界大戦では連合国側に加わりましたが、インフレが都市部の不満を招き、1944年にウビコは追放され、民主主義の時代が訪れました。

グアテマラの春

1944年から1954年まではグアテマラの春と呼ばれ、自由な雰囲気の下で民主的な社会改革が進められました。ハコボ・アルベンス・グスマン大統領は土地改革などの政策を行いましたが、これがアメリカ合衆国の反発を招き、PBSUCCESS作戦によってアルベンス政権は転覆しました。

グアテマラ内戦

1954年、CIAによるPBSUCCESS作戦によって親米政権が誕生しましたが、これはグアテマラに社会不安の時代をもたらしました。1960年から36年間続いたグアテマラ内戦では、武装反乱軍（FAR）などのゲリラとグアテマラ政府軍が激しく戦いました。1982年には、エフライン・リオス・モント政権が農村部への焦土作戦を行うなど、反体制派に対する徹底的な弾圧が行われ、数万人が犠牲となりました。1996年に平和条約が締結され、内戦は終結しました。

内戦終結以降

1996年に署名された和平合意は、当初はほとんど履行されませんでしたが、2000年代に入ると、過去の弾圧を国内の裁判で訴えるケースが増えました。2009年には元軍人が農民を行方不明にした罪で禁錮150年の判決を受け、2013年には元大統領のエフライン・リオス・モントがジェノサイドの罪で禁錮80年の判決を受けました。

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