ジェイアールバス関東伊那支店

ジェイアールバス関東伊那支店

ジェイアールバス関東伊那支店は、長野県伊那市にあるジェイアールバス関東の営業所です。伊那北駅の近くに位置し、松本ナンバーの車両が所属しています。

概要

伊那支店のルーツは、高遠電気軌道の建設計画頓挫に伴い、代替として高遠線の運行を開始したことにあります。地域住民の利用を主体としつつ、長谷村（現伊那市）方面への路線も開設されました。路線の統廃合を経ながらも、伊那市と高遠町を結ぶ路線として重要な役割を果たしています。

春の「高遠さくら祭り」期間中は、臨時便運行のため他支店から車両や乗務員が派遣されます。一方で、それ以外の期間は利用者が減少し、運行本数も減便され、中型車が中心となっています。近年では、伊那市などからのコミュニティバス運行委託が増加傾向にあります。

伊那支店は、高速バス「南アルプス号」の運行開始に伴い、中央道経由の高速バス乗務員基地としての役割を担うようになりました。下諏訪支店も同様の役割を担っていたことから、2004年に両支店は統合され、中央道統括支店（後に中央道支店に改称）として再出発しました。旧下諏訪支店エリアの路線が担っていた「鉄道線の培養」という使命は薄れましたが、旧伊那支店路線の「鉄道線の代行」という使命は今も受け継がれています。

中央道経由の高速バスの乗務員交代は、小黒川PAで行われ、支店との間は連絡車で移動していました。名古屋便や福井便は両方向とも中央道支店が担当していました。長野県内と京阪神を結ぶ路線は、小黒川以西を西日本ジェイアールバスが担当し、運行を分担しています。東京と京阪神を結ぶ中央道経由の高速バスは、東名・新東名経由への変更に伴い徐々に減少し、2021年10月28日の改正で廃止されました。伊那支店には高速バスの配置はなく、JRバス関東の担当便では東京支店の車両が使用されます。乗務員は東京到着後、新宿 - TDR線や東京 - 成田空港線などのネットワーク行路に乗務することもあります。

支店内には車両整備工場があり、自社で唯一の車両塗装設備を備えています。各支店の車両の塗装変更や車内リニューアル、シート交換、エンジンなどのオーバーホールも行っています。対応能力は年間約24台です。車両整備設備を持たない諏訪支店の車両の重整備や車検整備も、この工場で行われています。

また、JR気仙沼線BRTの開業時の車両や、プレミアムドリーム号、プレミアムエコドリーム号、ドリームルリエ号などへの既存車改造も、この工場で実施されました。中古購入車両の塗装や仕様変更なども行われ、構内には施工前後の車両がしばしば見られます。高遠さくら祭り前には、中古購入した一般路線車を中央道支店所属として登録し、祭り輸送に使用後、本来の所属先へ異動させることもあります。

2018年度には、国土交通省が実施する道の駅南アルプスむら長谷を拠点とした自動運転サービス実証実験に、乗合バス運行事業者として参加しました。2019年度には、令和元年東日本台風の影響で伊那市道の一部が損壊し、「南アルプスジオライナー」と「パノラマライナー」がシーズン途中で運行を終了しました。2020年度は、高遠城址さくら祭りが新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となり、関連するバス路線も運休となりました。

2019年6月27日時点で、伊那支店の職員数は54人（うち女性3人）です。2020年4月1日現在、11台の車両（一般路線車10台、貸切車1台）が配置されています（伊那市委託車両を除く）。2021年4月1日からは、長谷循環バスの土休日や平日の一部運行を「ぐるっとタクシー」に切り替え、伊那支店もタクシー運行に参入しました。

沿革

1948年 - 伊那自動車区として開設（後に伊那自動車営業所に改称）。
1987年3月1日 - 中部地方自動車局から関東地方自動車局に移管。
1987年4月1日 - 国鉄民営化に伴い、東日本旅客鉄道関東自動車事業部伊那自動車営業所となる。
1988年4月1日 - 関東自動車事業部の分社化により、ジェイアールバス関東伊那営業所となる。
1992年10月1日 - 支店制度導入に伴い、伊那支店（初代）に改称。
2001年4月1日 - 高速バス「南アルプス号」運行開始。
2001年11月1日 - 伊那市街地循環バス運行開始。
2004年10月1日 - 中央道統括支店に改称。下諏訪支店を傘下の諏訪営業所とする。
2006年12月4日 - 伊那地域の防犯協力の一環で「こどもを守るJRバス」として運行開始。
2008年4月1日 - 伊那・木曽連絡バス「ごんべえ号」試験運行開始。
2009年3月31日 - 伊那 - 木曽連絡バス「ごんべえ号」廃止。
2009年7月31日 - 高速バス「南アルプス号」廃止。
2009年10月10日 - 「新宿・高遠連絡きっぷ」発売開始。
2010年 - 中央道支店に名称変更。
2013年9月14日 - 路線バス「南アルプスジオライナー」（茅野駅 - 仙流荘）運行開始。
2016年7月16日 - 路線バス「パノラマライナー号」（木曽福島駅 - 伊那市駅 - 仙流荘）運行開始。
2017年4月1日 - 伊那市、南箕輪村、箕輪町の3市町村からの委託により伊那本線運行開始。
2017年10月14日 - JR長野鉄道フェスタで、高遠線開業70周年を記念した国鉄カラーの復刻塗装車を披露。
2018年10月1日 - 諏訪営業所が諏訪支店に昇格。
2019年4月1日 - 伊那市街地循環バス（イーナちゃんバス）の一部便の受託運行を開始。
2021年4月1日 - 高遠線の伊那市駅停留所を伊那バスターミナルに移設。伊那市長谷地区で「ぐるっとタクシー」を運行開始。
2021年10月1日 - 伊那市高遠地区での「ぐるっとタクシー」運行拡大に伴い、高遠線と長谷循環バスの運行本数を削減。
2022年4月2日 - 高遠さくら祭りに併せてオープントップバス「めいぷるスカイ」を運行（4月11日まで）。
2022年4月4日 - 伊那市のモバイル市役所事業「もーば」での移動市役所バスの運行業務を開始。
2023年7月1日 - 中央道支店から伊那支店（2代目）に改称。
2024年9月2日 - 伊那市街地循環バス「イーナちゃんバス」にてカルサン社製小型EVバス「e-JEST」の国内初となる営業運行を開始。

現行路線

高速バス

青春ドリームなごや号（車両は東京支店管理）
中央ライナーなごや号（車両は東京支店管理）
青春ドリーム福井号（車両は東京支店管理）
バスタ新宿 - TDR（車両は東京支店管理）
エアポートバス東京・成田（車両は東京支店管理）
青春ドリーム信州号（車両は小諸支店及び西日本ジェイアールバス管理）

一般路線バス

高遠線（2022年度は粟沢駐車場まで運行。下りは茅野駅→粟沢駐車場、上りは粟沢駐車場→高遠駅と仙流荘→茅野駅を1便ずつ運行）
パノラマライナー（木曽福島駅 - 伊那市駅 - 仙流荘）※期間限定運行（2021年度・2022年度は運休）
モーニングジオライナー（伊那バスターミナル - 高遠駅 - 仙流荘）※期間限定運行（2023年度から運行開始）

受託路線

伊那市街地循環バス（イーナちゃんバス）（2019年4月1日より受託）
長谷循環バス（伊那市、高遠駅 - 旧長谷村域）
伊那本線（伊那市、南箕輪村、箕輪町の3市町村からの委託により、2017年4月1日より運行開始。伊那バスとの共同運行）
赤木駅前 - 沢渡駅前 - 伊那バスターミナル - 通り町 - 伊那北 - 伊那中央病院 - 神子柴 - 南箕輪村役場 - 北殿 - 箕輪営業所 - 箕輪町役場入口 - ベルシャイン伊北店前
平日9往復、土曜・日曜・祝日3往復。
運賃は区間制で、初乗り150円または200円、区間をまたぐと50円ずつ加算。全区間乗車は350円。子供運賃は半額（10円未満切り上げ）。
伊那バスターミナルは2017年5月18日から12月6日まで改築工事のため一部停留所が変更。

その他の路線

「高遠さくら祭り」お花見循環バス（高遠駅 - 高遠城址公園 - 高遠駅）
「高遠さくら祭り」駐車場シャトルバス（臨時駐車場 - 城址公園北）
伊那市モバイル市役所「もーば」※運転業務
もみじ湖 紅葉祭りシャトルバス（箕輪町）

過去の路線

伊那里線（高遠駅 - 伊那里。現在は長谷循環バスとして運行）
高遠線（非持 - 荊口、関屋橋 - 伊那宮原）
伊那・木曽連絡バス「ごんべえ号」
伊那市街地循環バス（高遠 - 伊那市街地 - 高遠）
高速バス
ニュードリーム京都号
南アルプス号
スカイツリーシャトル
中央道昼特急号
中央ライナー可児号・ドリーム可児号
中央道昼特急号・中央ドリーム号・青春中央エコドリーム号・プレミアム中央ドリーム号など（2021年10月28日改正にて廃止）
道の駅「南アルプスむら長谷」を拠点とした自動運転サービス実証実験
JR飯田線の鉄道代行バス（辰野 - 伊那新町）

車両

かつてはUDトラックス（旧:日産ディーゼル）製が主力でしたが、民営化以降は他メーカーの車両も導入されるようになりました。2018年には、高遠線開業70周年を記念して旧国鉄カラーの復刻塗装バスが運行されました。高遠の桜シーズンには、他支店からの応援車両が運行され、普段は見られない車両が配置されることもあります。近年では中古車両をリニューアルして使用したり、他支店の廃車直前の車両を同輸送後に伊那で廃車するケースも多くあります。2023年には、着席重視型の一般路線車両を中古購入しました。高速バスには、高遠城址公園のタカトオコヒガンザクラにちなんだ桜の模様が描かれた車両も存在しました。コミュニティバスには日野・ポンチョが使用され、「ぐるっとタクシー」にはトヨタ・ヴォクシーや日産・リーフが用いられています。貸切車は三菱ふそう・エアロエースが配置され、高速バスの乗務員訓練にも使用されます。2022年の高遠桜祭りではオープントップバス「めいぷるスカイ」が運行されました。

関連事業

支店敷地内には、ファミリーレストラン「ガスト」の店舗があり、店舗建設は支店側が行い、すかいらーくに長期リースする形態となっています。

関連項目

高遠電気軌道
ジェイアールバス関東
伊那市
伊那市街地循環バス
長谷循環バス

参考文献

『バスラマ・インターナショナル』48号「ユーザー訪問：ジェイアールバス関東」ぽると出版
『バスラマ・インターナショナル』135号、ぽると出版
『バスジャパン ニューハンドブック 37 ジェイアールバス関東』BJエディターズ/星雲社
『バス・ジャパン ハンドブックシリーズ 18 ジェイアールバス関東』BJエディターズ/星雲社

外部リンク

* 中央道支店 - ジェイアールバス関東

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