スウェーデンの歴史

スウェーデンは、スカンディナヴィア半島東部に位置する南北に長い国です。その歴史は、北ヨーロッパの国々だけでなく、バルト三国、ロシア、ポーランド、ドイツといった国々との戦争や外交が織りなす複雑なものです。近代に入ると武装中立を国是とし、世界有数の福祉国家を建設しました。

先史時代から古代

考古学的な調査から、スウェーデンにおける人類の痕跡は紀元前1万年頃まで遡ることができ、紀元前3000年頃には農業が営まれ、青銅器が使用されていました。青銅器時代には、西海岸地帯に岩石線画が刻まれ、ゲルマン鉄器時代やヴァイキング時代には絵画石碑が建てられました。これらの石碑は、主にゴットランド島で発見されており、死者崇拝や埋葬習慣に起源を持つと考えられています。

この地域に関する最古の文献記録は、古代ローマの歴史家タキトゥスの『ゲルマニア』です。タキトゥスは、バルト海に浮かぶ島（スカンディナヴィア半島）に住む「スイーオネース」という民族が、陸上戦力と水軍を持ち、勢力を振るっていたと記しています。

スウェーデン中部のスヴェーア人が建国した初期の王国は、28の部族が3つの原生国家へと統合されて形成されました。その一つであるメーラル王国は、メーラル湖を中心に栄え、6世紀頃に残る2つの王国を併合し、スヴェーア諸族を統合してシルフィング王朝を誕生させました。その後、デーン人に滅ぼされたものの、ヴェルムランド地方へ逃れてインリング王朝として再建し、南部のゴート王国を服属させ、860年には首都を古ウプサラへ設置し、後のスウェーデン王国の祖形が成立しました。

5世紀から6世紀にかけてのスカンディナヴィアでは、民族移動期と呼ばれる時代に、スカンディナヴィア半島南部で砦の建設が急増しました。これは、地方的権力の台頭に起因すると考えられています。豪族たちは、ヨーロッパ大陸での傭兵活動や、北欧内部およびバルト海沿岸地域での交易、略奪遠征を行っており、これが後のヴァイキング時代の下地となりました。

ヴァイキングの時代

スカンディナヴィアには、北ゲルマンの諸部族の小王国が乱立していましたが、次第にスウェーデン、デンマーク、ノルウェーの3王国に収斂されていきました。彼らは、ローマ人やフランク王国から「北の人（ノルマンニまたはノルマン人）」と呼ばれ、船団を組織し、バルト海から北海沿岸で交易や略奪を行いました。特に略奪を行うノルマンニは「ヴァイキング」と呼ばれ、9世紀にはその剽悍さが恐れられました。

スウェーデン・ヴァイキングは、主に東方へと進出し、ドニエプル川、ヴォルガ川を遡り、東ローマ帝国やイスラム世界と交易などの接触を持ちました。彼らはロシア平原に定住し、8世紀から11世紀までにノヴゴロド公国やキエフ大公国などルーシ諸国の建国者となりました。東スラヴ人側からは「ヴァリャーグ」と呼ばれています。

9世紀頃からスヴェア人の王国が建国され、自然崇拝による祭祀が営まれました。10世紀にはキリスト教が伝来し、抵抗を伴いながらも受容されていきました。しかし、スウェーデンは北欧では最も遅くまで異教の影響が残りました。スウェーデンの政治的統合体は、ヴァイキングの時代によってその原型が形成されたと言えます。

統一王国の誕生とカルマル同盟

12世紀になると、エーリク9世によるフィンランド進出（北方十字軍）が行われ、フォルクンガ朝の時代にはフィンランド南部を併呑しました。この十字軍は、1300年頃まで継続し、1323年にノヴゴロド公国に対してノーテボリ条約を結ぶことによって終了しました。フィンランドがスウェーデン王国に組み込まれる中で、ノルウェーとも1319年から50年代まで人的同君連合を組みました。

1389年には、スウェーデン王アルブレクトがデンマークに敗れ捕虜となり、王位を剥奪されました。1397年には、デンマークとノルウェーの摂政であるマルグレーテ1世のもとでカルマル同盟が結成され、スウェーデンはデンマークの支配を受けることになりました。

しかし、スウェーデンは1430年代からデンマーク支配からの脱却を試み、グスタフ・ヴァーサを指導者として蜂起し、ハンザ同盟の助力も得て独立を勝ち取り、ヴァーサ朝が開基されました。

スウェーデンの独立

ヴァーサ朝は、エリク14世の治世からバルト海へ勢力伸長を目指すようになり、リヴォニア戦争に参戦しました。1568年に狂気の進んだエリク14世は、王弟であるフィンランド公ヨハンに王位を簒奪されました。国王となったヨハン3世は、デンマークとの戦争を終結させ、ポーランドと共闘してロシアをバルト地方から駆逐しました。1604年に国王となったカール9世は、再びバルト地方に勢力伸長を目指しました。

16世紀半ばになると、スウェーデンの民族主義が高まり、スウェーデン王国の建国神話によるゴート起源説が生まれ、17世紀の大国時代を正当化するものとなりました。

「北方の獅子」と「北方のアレクサンドロス」

ヴァーサ朝はバルト海沿岸に領土を拡大させ、グスタフ2世アドルフのころには身分制議会が置かれました。グスタフ2世アドルフは「北方の獅子」とよばれ、バルト帝国を確立しました。三十年戦争には1630年にプロテスタント側に味方し介入し、1648年のヴェストファーレン条約ではスウェーデンは戦勝国となりました。

クリスティーナ女王の退位後、プファルツ選帝侯家の傍系プファルツ＝クレーブルク家が王位に即きました。初代国王カール10世は、1655年からポーランド、デンマークと戦争を起こし、1658年にはデンマークからスコーネを奪い、スウェーデンは膨張の極みに達しました。この時代がスウェーデンの絶頂期とも言われています。

1697年にカール12世が即位すると、大北方戦争を戦い、カール12世は「北方のアレクサンドロス」の異名をとりましたが、1709年のポルタヴァの戦いで大敗を喫し、バルト帝国は崩壊しました。

スウェーデンの没落

大北方戦争後、スウェーデン宮廷では派閥争いが激化し、王権は弱体化し、「自由の時代」となりました。1772年にグスタフ3世がクーデターによって王権を復活させましたが、1809年にはフランス帝国の強制でフィンランドをロシアに譲渡することになりました。

1810年には、ナポレオンの元帥ベルナドットを王太子に迎え、後のカール14世ヨハンとなりました。スウェーデンは王太子カール14世ヨハンの元でナポレオン戦争において戦勝国となり、ノルウェーを獲得しました。

スウェーデンの近代

ナポレオン戦争後のスウェーデンは、カール14世の政策により今日の中立主義の芽が蒔かれました。1905年には平和裏にノルウェーの独立を認め、第一次世界大戦、第二次世界大戦では中立を維持しました。

戦後は国連に加盟し、国連の第2代事務総長にハマーショルドを輩出しました。スウェーデンは戦後、北欧三国中立防衛同盟を構想しましたが、同盟は不成立に終わり、デンマークとノルウェーはNATOに加盟しました。

スウェーデンの現在

冷戦時代は、重武装中立国家でしたが、冷戦後は中立主義も事実上放棄し、他国との協調関係を構築するようになりました。スウェーデンが世界に誇る福祉政策は、1932年から1976年まで続いた社会民主労働党政権によって推進されました。

1995年にはEUに加盟しましたが、ユーロは導入していません。内政においては、移民問題や失業率の増加など様々な問題を抱えているものの、国内総生産 (GDP)の世界上位を維持し、積極的な国際活動を行っています。

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