ソロレート婚

ソロレート婚：妻の姉妹との再婚

ソロレート婚とは、妻が亡くなった後、夫がその妻の姉妹と結婚する慣習を指します。レビラト婚（夫の死後、妻が夫の兄弟と結婚する慣習）と対をなし、世界各地で古くから見られる二次婚の一形態です。日本においては、順縁婚とも呼ばれ、ソロレート婚とレビラト婚を合わせて、もらい婚と総称されることもあります。

ソロレート婚の目的

ソロレート婚の主要な目的は、妻の死によって生じる家族の資産や社会的地位の崩壊を防ぐことにありました。特に、家系や財産を維持する必要がある社会において、この慣習は重要な役割を果たしました。妻の死によって生じる経済的な損失や、社会的な立場を失うことを防ぐための手段として、ソロレート婚が選択されたのです。

ソロレート婚の歴史と社会的な受容

中世ヨーロッパでは、レビラト婚と同様に教会法によって禁じられていましたが、王侯貴族階級においては例外的に行われた事例も存在します。これは、王室や貴族の血統や権力の維持という側面が強く影響していたと考えられます。また、婚約後に婚約相手が急死した場合、その姉妹と婚約・結婚するケースも見られました。例えば、ナポリ王フェルディナンド4世は、婚約者であったオーストリア大公女マリア・ヨーゼファの急死後、その妹マリア・カロリーナと結婚しています。

日本においては、レビラト婚（逆縁婚）に比べて比較的寛容に扱われ、明治初期には地方自治体によっては許可制が導入されたものの、実際には申請があれば多くのケースで許可が下りていたとされています。

中国では、特に春秋戦国時代以降、王女や公女が他国の君主に嫁ぐ際に、その妹も側室として同行する例が見られました。正室が早世した場合、側室が正室の地位に昇格するケースも多く、これは王族の地位と権力の維持に貢献しました。皇后の死後、妹が新しい皇后となる、あるいは側室から昇格する例も後世の皇室でも見られます。

歴史上の人物におけるソロレート婚の例

ソロレート婚は、歴史上数多くの事例で確認できます。ここでは、中国と日本の例を挙げ、その多様性を示します。

中国

中国では、姉妹が同時に嫁ぐケースも含め、多くのソロレート婚の事例が記録されています。前漢の景帝劉啓とその皇后王娡と夫人王児姁、前漢の成帝劉驁とその皇后趙飛燕と昭儀趙合徳などがその例として挙げられます。後漢、蜀漢、前趙、後燕、北魏、後周、南唐といった王朝でも、ソロレート婚は皇室や貴族階級において見られました。

日本

日本では、武士階級においてもソロレート婚はしばしば見られました。藤原師輔、蓮如、島津忠義、浅野綱晟、池田長吉、織田信武、織田信学、津軽信順、溝口直諒、板倉勝興、松平直静、松平直泰、松平勝善、松平輝綱、松平輝高、渡辺登綱、黒田長清、稲葉信通、堀親忠、吉良義冬、畠山義宣、戸川安聡、佐竹義命、佐竹義祚、種子島久基、楫取素彦、11代千宗室、箕作秋坪、大山綱昌、大沼保吉、大沼貞蔵、戸田氏秀、近衛篤麿といった多くの武将や貴族、文化人がソロレート婚を行っています。

他にも、朝鮮、南アジア、西アジア、ヨーロッパなど、世界各地でソロレート婚の事例が確認されており、それぞれの社会・文化的な背景の中で行われていたことがわかります。

まとめ

ソロレート婚は、単なる結婚形態ではなく、家系の維持、財産相続、社会的地位の継承といった、社会構造と深く関連した慣習でした。歴史的な事例を検討することで、それぞれの社会における家族観や社会秩序を理解する上で重要な手がかりが得られます。

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