パムモーン

パムモーン（Pammōn）

パムモーンは、古代ギリシア神話に登場する人物で、強大な都市国家トロイアの王プリアモスとその妃ヘカベーの間に生まれた多くの息子の一人です。古代ギリシア語では Πάμμων と表記され、長音を省略してパムモンとも呼ばれます。彼は50人いたとされるプリアモスの王子のうちの一人に数えられます。

彼の出自については、多くの古代の著述家が触れています。例えば、紀元前1世紀から紀元後1世紀にかけて活動したとされるアポロドーロスが編纂したと伝えられる『ギリシア神話』によれば、彼の母はヘカベーであり、トロイアの英雄ヘクトールや、後にスパルタ王妃ヘレンを奪うことになるパリス、知将として知られるヘレノス、そしてデーイポボス、ポリーテース、アンティポス、ヒッポノオス、ポリュドーロス、トローイロスといった兄弟たち、さらにはクレウーサ、ラーオディケー、予言者カッサンドラー、ポリュクセネーといった姉妹たちと共に、ヘカベーを母とする子であったと記されています。ただし、別の重要な神話集であるヒュギーヌスの『ギリシャ神話集』のリストには、パムモーンの名は含まれていません。

パムモーンに関する記述は、特にホメーロスの叙事詩『イーリアス』において見られます。長期にわたるトロイア戦争の最中、トロイア軍の主要な指導者であった兄ヘクトールをはじめ、メーストールやトローイロスといった他の兄弟たちが戦場で命を落とした後、父プリアモスはまだ健在だった王子たちに対し、激しい叱責の言葉を浴びせました。その叱責を受けた王子たちの中に、パムモーンも含まれていました。彼はヘレノス、パリス、アガトーン、アンティポノス、ポリーテース、デーイポボス、ヒッポトオス、ディーオスといった兄弟たちと共に、父の怒りを買ったのです。

戦況が厳しくなる中、小アジアのミューシア王テーレポスの息子エウリュピュロスが率いる軍勢がトロイアへの救援に駆けつけました。この援軍が到着した後、パムモーンはパリス、トロイアの主要な指導者の一人であるアイネイアース、知的な助言者として知られるプーリュダマース、兄弟のデーイポボス、そしてパープラゴニアの武将アンティコスらと共に、エウリュピュロスによって最前線で戦うべき武将の一人として選ばれました。彼は重要な戦力として期待されたのです。

しかし、その後の戦闘において、パムモーンは不運に見舞われます。彼は自身の戦車に乗って戦っていましたが、ギリシア側の英雄である小アイアースの部下であったアルキメデースが投げた石によって、彼の戦車の御者であるヒッパシデースが命を落としてしまったのです。これは戦場における彼に関する具体的なエピソードとして、『ギリシア戦記』（クイントゥス著とされる）などに記されています。

パムモーンは、その後もトロイアの防衛のために戦い続けましたが、都市が最終的に陥落する時にその最期を迎えます。古代の記録によれば、彼はトロイア陥落の混乱の中で、アキレウスの息子である恐るべき戦士ネオプトレモス（あるいはピュロスとも呼ばれる）によって討ち取られました。この時、彼の兄弟であるポリーテースとアンティポノスもまた、ネオプトレモスによって同じように命を落としたと伝えられています。

このように、パムモーンはトロイアの王子として生まれ、長いトロイア戦争を戦い抜き、都市の滅亡と共にその生涯を閉じた人物として、古代ギリシアの文献に名を残しています。

参考文献:

アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫
クイントゥス『ギリシア戦記』松田治訳、講談社学術文庫
『ディクテュスとダーレスのトロイア戦争物語 トロイア叢書1』岡三郎訳、国文社
ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫
* ホメロス『イリアス（下）』松平千秋訳、岩波文庫

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