フィリピンの地理

フィリピンの地理

フィリピンは、台湾とボルネオ島の間に位置する島国で、7,641もの島々から構成されています。これらの島々は、ルソン、ビサヤ、ミンダナオの3つの主要なグループに大別されます。周囲は、バシー海峡、太平洋、スールー海、セレベス海、南シナ海に囲まれています。

アジア本土からは約800km、台湾からは約190km離れており、マレーシアとの最短距離は約80kmです。地理的な範囲は、東経116度から127度、北緯4度から22度で、南北約1,850km、東西約1,100kmに及びます。

国土面積は約30万平方キロメートルで、その90%以上をルソン島、ミンダナオ島など11の大きな島が占めています。最大の島はルソン島（約105,000平方キロメートル）、次いでミンダナオ島（約95,000平方キロメートル）です。

フィリピンは環太平洋地震帯に属し、地震や火山活動が活発です。マヨン山やタール火山などの活火山も存在します。群島の東側にはフィリピン海溝が南北に走り、サンゴ礁も多く見られます。

地形・地質

地質

地質学的に、フィリピンはパラワン地域、西部地域、中央部地域、東部地域の4つに区分されます。パラワン島とその周辺地域には古生代の地層や岩石が存在しますが、他の地域では白亜紀以降の地層が大部分を占めています。大部分は新生代第三紀以降の岩石や堆積物で覆われています。

地震

フィリピンは環太平洋地震帯に位置するため、地震が多発します。特に、南西部のパラワン島などを除くほぼ全域が変動帯にあたります。1976年のミンダナオ地震や1990年のバギオ大地震など、大きな被害をもたらす地震も発生しています。1973年から2011年までにマグニチュード6以上の地震が195回発生し、そのうち30回はマグニチュード7クラスでした。

フィリピンの西側ではユーラシアプレートが、東側ではフィリピン海プレートが沈み込んでおり、それぞれマニラ海溝、ネグロス海溝、コタバト海溝、東ルソン海溝、フィリピン海溝といった沈み込み帯が発達しています。フィリピン断層は、ルソン島からミンダナオ島にかけて約1,200kmにわたって縦走しており、1990年のバギオ大地震の震源となりました。

山

国土の約60%が山岳地帯です。平野部は、ルソン島北部のカガヤン・バレーやミンダナオ島のコタバト地方など、海岸部に限られます。火山活動が活発で、成層火山、カルデラ火山、楯状火山など、多様な形態の火山が存在します。一連の火山帯は、近接する海溝と関連付けられています。フィリピンには約220の火山があり、そのうち24の火山が活火山とされています。

河川・湖沼

フィリピンには、流域面積が40平方キロメートルを超える421の主要河川流域があり、そのうち18の流域は1,400平方キロメートルを超える大河川流域です。これらの大河川流域には、カガヤン川やミンダナオ川などが含まれます。多くの河川は30～50キロメートルと短く、急勾配です。乾季と雨季が明確な地域では河況係数が大きく、安定した取水が難しいことがあります。

湖沼は100以上あり、最大の湖はバエ湖（約9万ヘクタール）、最深の湖はタール湖（深さ約200メートル）です。

森林

2020年時点で、森林面積は国土の約24%にあたる約7.18万平方キロメートルです。その内訳は、原生林が約0.86万平方キロメートル、二次林が約5.94万平方キロメートル、人工林が約0.38万平方キロメートルです。森林はマングローブ林、泥炭湿地林、低地常緑樹林、低山常緑樹林、高山常緑樹林などに分類されます。

過去には森林伐採が進みましたが、近年は森林面積は横ばいから微増傾向です。しかし、原生林は依然として減少しており、2002年から2020年の間に約15万ヘクタールが消失しました。

島嶼

フィリピン諸島は、ルソン、ビサヤ、ミンダナオの3つの主要なグループに分けられます。7,641の島々があり、そのうち有人島は約2,000です。主要11島が総面積の90%以上を占め、2.5平方キロメートル以上の島は462島のみで、5,000以上の島には名前が付けられていません。

ルソン諸島

ルソン島、パラワン島、ミンドロ島、ボアク島、マスバテ島、ロンブロン島、カタンドゥアネス島、バタン島、ポリロ島などから構成されます。

ビサヤ諸島

パナイ島、ネグロス島、セブ島、ボホール島、レイテ島、サマール島、シキホル島、ビリラン島、ギマラス島などが含まれます。

ミンダナオ諸島

ミンダナオ島、ディナガット島、シアルガオ島、カミギン島、サマール島、およびスールー諸島などが含まれます。

気候

熱帯気候で、雨季と乾季に分かれますが、地域差が大きいです。乾季は冷涼な期間（アミハン）と高温の期間に分けられます。平均気温は摂氏25度から28度、平均湿度は70から80%程度です。年間平均降雨量は約2,030ミリメートルですが、地域差が大きく、1,000ミリメートルから4,000ミリメートルの幅があります。降雨量に応じて4つのタイプに分類されます。

I型: はっきりした雨季と乾季があり、11月から4月が乾季、それ以外が雨季。
II型: 乾季がなく、降雨のピークは12月から2月。
III型: 降雨のピークが不明瞭で、12月から2月、または3月から5月にかけて短期間の少雨傾向。
IV型: 1年を通して降雨量がほぼ一定。

東岸地域は、南西モンスーンと北東モンスーンの両方の影響を受けるため、雨が多くなります。台風も多く発生し、年間約20個が接近、4～5個が上陸します。特にレイテ島からバタン諸島にかけての地域は台風の影響を受けやすいです。

気候変動

1951年から2015年の間に、平均気温は10年あたり摂氏0.1度上昇しており、今後も上昇が予想されています。降水量は不安定化すると予測されており、フィリピンは気候変動の影響を大きく受ける国の一つです。海面上昇や熱帯低気圧の強大化のリスクがあり、森林、土壌、農業、水資源への影響が懸念されています。

生物相

フィリピンは、生物多様性に富み、固有種が多いことで知られています。多くの動植物が絶滅の危機に瀕しており、保護対策が進められています。

動物相

哺乳類は167種、鳥類は535種、爬虫類は237種、両生類は89種、淡水魚類は281種が生息しており、それぞれ多くの固有種が含まれています。沿岸や周辺海域の生態系も豊かで、サンゴ、岩礁魚類、軟体動物、海草、海藻などが多様です。しかし、沿岸・海洋生態系の劣化が問題になっています。

植物相

植物は9,253種が生息しており、そのうち6,091種が固有種です。フタバガキ科林、マツ林、マングローブ林などが広がっています。

行政区画

フィリピンは15の行政管区、マニラ首都圏、バンサモロ自治地域の合計17の地方に分かれています。地方の下には州、市・町、バランガイが置かれており、2020年6月末時点で81州、146市、1,488町、42,046バランガイが存在します。市は、州の監督を受ける構成市と、受けない高度都市化市に分けられます。

人口

2020年5月1日時点の人口は1億903万5,343人で、年間1.6～1.7%程度の増加を示しています。人口ピラミッドは典型的なピラミッド型で、18歳未満が人口の約4割を占めています。人口増加率は漸減傾向にあるものの、2050年頃まで増加が続くと予測されています。

もう一度検索