ベンガル・スルターン朝

ベンガル・スルターン朝（1342年 - 1576年）は、東インドに存在したイスラーム王朝です。ベンガル王国とも呼ばれ、現在のバングラデシュ、インド（ビハール州、ジャールカンド州、西ベンガル州、トリプラ州）、ミャンマーのラカイン州にまたがる地域を支配しました。

歴史

前期イリヤース・シャーヒー朝

1330年代、デリー・スルターン朝のトゥグルク朝の衰退に乗じ、各地で反乱が勃発しました。その一つとして、1342年にベンガル地方の長官であったシャムスッディーン・イリヤース・シャーが独立を宣言し、ベンガル・スルターン朝を建国しました。彼は自身の硬貨に「第2のアレクサンドロス、カリフの右腕」と記し、ベンガルの独立を強く主張しました。

1353年、トゥグルク朝のフィールーズ・シャー・トゥグルクがベンガルに侵攻し、首都パーンドゥアーを占領しましたが、イリヤース・シャーはエクダーラー要塞に籠城し、トゥグルク朝軍は撤退しました。1358年、再びフィールーズ・シャー・トゥグルクが侵攻しましたが、ベンガルは独立を維持しました。イリヤース・シャーの息子ギヤースッディーン・アーザム・シャーは、明の永楽帝に使者を送り、国際的な視野を持っていたことで知られ、メッカやメディナのマドラサ建設を支援しました。

1410年、ギヤースッディーン・アーザム・シャーの死後、ヒンドゥー教徒の有力者ラージャ・ガネーシャが実権を掌握し、1414年には王位を簒奪しました。これにより、前期イリヤース・シャーヒー朝は終焉を迎えました。

ラージャ・ガネーシャ朝

1414年、ラージャ・ガネーシャが王位を宣言し、ラージャ・ガネーシャ朝が成立しました。しかし、ベンガルにおけるイスラム教の影響力は強く、ムスリム有力者はヒンドゥー教徒の王に反発しました。そのため、ラージャ・ガネーシャの死後、後継者がイスラム教に改宗することで合意しました。彼の治世は短期間でしたが、ジャウンプル・[[スルターン朝]]との領土争いやヒンドゥー教寺院の保護を行いました。

1418年、ラージャ・ガネーシャの死後、息子のジャラールッディーン・ムハンマド・シャーがイスラム教に改宗し、王位を継承しました。彼はムスリムとヒンドゥー教徒を平等に扱い、ベンガル王国の領土を拡大しました。また、明への朝貢やマムルーク朝との交流を通じて国際的な関係を築きました。

1433年、ムハンマド・シャーの死後、息子シャムスッディーン・アフマド・シャーが王位を継承しましたが、1436年に家臣によって暗殺され、ラージャ・ガネーシャ朝は滅亡しました。

後期イリヤース・シャーヒー朝

1437年、ナーシルッディーン・マフムード・シャーがイリヤース・シャーヒー朝を再興しました。しかし、オリッサのガジャパティ朝やアラカン王国の侵攻を受け、ベンガル王国は領土を失いました。ルクヌッディーン・バールバク・シャーの時代には、ガジャパティ朝の侵攻に対処しながらも、内政面では文化を奨励しました。1487年、最後の王ジャラールッディーン・ファテー・シャーが暗殺され、王朝は滅亡しました。

フサイン・シャーヒー朝

1493年、アビシニア人奴隷出身の王朝が滅亡し、宰相アラー・ウッディーン・フサイン・シャーが王位に就き、フサイン・シャーヒー朝を創始しました。フサイン・シャーは、ローディー朝との戦いで領土を維持し、オリッサのガジャパティ朝との戦いを続けました。内政面では、ヒンドゥー教徒とムスリムを平等に扱い、文化を奨励しました。この時代は中世ベンガルの黄金期と評されます。

1519年、フサイン・シャーの死後、ナーシルッディーン・ヌスラト・シャーは公共事業を推進し、国家を繁栄させましたが、ムガル帝国との戦いで敗れました。1532年、ヌスラト・シャーが暗殺された後、ベンガル・スルターン朝はムガル帝国とアフガン系スール族の争いに巻き込まれ、1538年に滅亡しました。