ペルシャ式庭園

ペルシャ式庭園：楽園を模した歴史と文化の融合

ペルシャ式庭園は、西はスペイン・アンダルシアから東はインドにまで及ぶ、歴史と文化を深く反映した庭園様式です。その起源は古く、ハカーマニシュ朝時代まで遡り、楽園を意味する「paradise」という概念はペルシャ文学を通じて世界に広まりました。ゾロアスター教の経典『アヴェスター』にも、壁を持つ庭園を表す言葉が登場し、それが古代ギリシャ語、ラテン語を経て、現代のヨーロッパ諸言語における「paradise」の語源となりました。

歴史：古代から現代まで続く進化

ペルシャにおける庭園の歴史は紀元前4000年代にまで遡ることができ、紀元前6世紀のパサルガダエ庭園は現存する最古の例として知られています。イスラム世界最古の宮殿庭園はシリアのルサーファ、次に古いのはイラクのサーマッラーの十字型庭園です。サーサーン朝時代にはゾロアスター教が隆盛を極め、「水」の重要性が強調されるようになり、噴水や池が庭園の重要な要素となりました。

モンゴルによる征服の後も、ペルシャ式庭園は発展を続け、特にインドにおいて顕著な影響を与えました。ムガル帝国初代皇帝バーブルがインドにペルシャ式庭園を伝播し、アラム庭園、フマーユーン廟、そしてタージ・マハルへとその伝統は受け継がれていきました。サファヴィー朝時代には、フランスやロシア、イギリスの庭園様式の影響も見られるようになり、庭園様式は国際的な交流の中で進化を遂げました。

四分庭園（チャハルバーグ）：楽園の象徴

イスラムによるペルシャ征服後、庭園の美的な側面が重視されるようになり、「チャハルバーグ（四分庭園）」という様式が発展しました。これは、ゾロアスター教の4つの元素（天空、水、大地、植物）や、世界を4つの川と4つの円に分割するという概念に基づいており、楽園を模倣したものです。アンダルシアのマディーナ・アッ＝ザフラーは、考古学的に四分庭園と実証された最古の遺跡の一つです。

この四分庭園のコンセプトは、クルアーンや創世記にも言及されており、世界が4つに分かれるという考え方が反映されています。イランのイスファハンにあるチャールバフ・エ・アッバースや、インドのタージ・マハルなどは、チャハルバーグ様式の代表的な例です。フマーユーン廟やバーブルの墓などでも、この様式が用いられています。現代においても、ロンドンのイスマーイリ・センターの屋上庭園など、チャハルバーグ様式を受け継いだ庭園を見ることができます。

世界遺産「ペルシャ式庭園」

2011年、イラン国内の9つの庭園が「ペルシャ式庭園」としてUNESCOの世界遺産に登録されました。これは、世界各地の庭園と比較検討された結果、ペルシャ式庭園の発展の流れを最もよく示す構成要素を持つものとして選定されたものです。

世界遺産登録基準においては、人類の創造的才能を表現する傑作、文化交流の重要な証、稀な文化的伝統の証拠、重要な時代の建築様式の優れた例、そして顕著で普遍的な意義を有する出来事との関連性などが認められました。

世界遺産構成資産

パサルガダエ庭園（ファールス州）：紀元前6世紀、ハカーマニシュ朝時代の最古の庭園。
エラム庭園（ファールス州シーラーズ）：セルジューク朝時代以降、詩人ハーフィズとも関連が深い。
チェヘル・ソトゥーン庭園（エスファハン）：サファヴィー朝アッバース2世による壮麗な庭園。
フィン庭園（カーシャーン）：サファヴィー朝・ガージャール朝時代に建設、地震被害も経験。
アッバース・アーバード庭園（マーザンダラーン州）：カスピ海を望む美しい庭園。
シャーザデー庭園（ケルマーン州）：ガージャール朝時代の庭園。
ドーラト・アーバード庭園（ヤズド州）：ザンド朝時代に建設された庭園。
パフラヴァンプール庭園（メフリーズ）：ガージャール朝時代の庭園、カナートを利用した水路が特徴。
* アクバリーエ庭園（ビールジャンド）：ザンド朝・ガージャール朝時代の庭園、カナートからの水を貯蔵する池を持つ。

これらの庭園は、それぞれ独自の美しさや歴史的背景を持ちながら、ペルシャ式庭園という共通の伝統と文化を体現しています。それらは、単なる庭園ではなく、歴史と文化を語る貴重な遺産なのです。

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