ユピテル・オプティムス・マキシムス、ユーノー、ミネルウァ神殿

カピトリウムのユピテル神殿：古代ローマの中心

カピトリウムのユピテル神殿、またはカピトリーノ神殿は、古代ローマにおいて最も重要な神殿の一つであり、カピトリヌス丘（現在のカピトリーノの丘）に位置していました。この神殿は、至高神ユピテル、ユーノー、ミネルウァの三柱を祀り、国家的な儀式や政治的な決定の場として、共和政ローマからローマ帝国時代にかけて、中心的な役割を果たしました。現在、その基礎部分の一部が残るのみですが、歴史を語る上で重要な遺構です。

歴史

建設

ユピテル神殿の創建に関する正確な記録は少なく、その多くが後世のローマの伝承によって脚色されています。しかし、発掘された陶片などから、神殿が建設される以前からカピトリヌス丘には小規模な神殿が存在していたことが確認されています。

伝説によれば、神殿の建設はルキウス・タルクィニウス・プリスクスの時代に計画され、サビニ人との戦争後に基礎工事が始まりました。本格的な工事はルキウス・タルクィニウス・スペルブスによって進められ、ユピテル神を祀るために、既存の小祠はテルミヌス神のものを除き撤去されました。神殿建設にはエトルリアから職人が招集され、平民も動員されました。基礎工事だけで銀4万リーブラ（または40タレントゥム）が費やされたと伝えられています。テラコッタ装飾はウェイイの彫刻家ウゥルカによって作成されたとされています。

紀元前6世紀末からの出土品からは、ウェイイの芸術が大きな影響力を持っていたことが判明しており、この神殿の建設にもウェイイの職人が重要な役割を果たしたことが、考古学的にも裏付けられています。

共和政期

神殿は紀元前509年に補充執政官マルクス・ホラティウス・プルウィルスによって奉献されました。リウィウスの記述によれば、同僚執政官プブリウス・ウァレリウス・プブリコラとの間で奉献権をくじ引きで決定したとされ、プルタルコスは、プブリコラへの嫉妬から貴族たちがホラティウスを焚き付けて奉献させたとしています。奉献日は9月のイードゥース（9月13日）とされています。ハリカルナッソスのディオニュシオスによれば、同盟市戦争まで、神殿の地下にある石箱の中に『シビュラの書』が保管されていました。

共和政時代には、新年の執政官就任式がカピトリヌスの丘で行われ、ユピテル神殿で誓いを立てることが慣例でした。また、元老院が神殿に召集され、属州やローマ軍団の割り当てが決定されていました。同盟国の使節も訪れ、元老院の許可を得てからユピテルに生贄を捧げていました。紀元前155年には、アテナイから罰金減額交渉のため訪れた3人の哲学者を元老院が神殿で迎えました。また、紀元前133年にはティベリウス・グラックスが、紀元前121年にはルキウス・オピミウスが神殿を占拠するなど、重要な政治的事件の舞台ともなりました。

アッピアノスによれば、紀元前83年、ルキウス・コルネリウス・スッラがローマに迫る中、グナエウス・パピリウス・カルボがスッラに合流しようとする元老院議員たちを公敵宣言した際、カピトリヌスの丘が焼失しました。この火災の原因はカルボの仕業とも、スッラ派によるとも言われています。この際、『シビュラの書』も焼失しました。その後、独裁官となったスッラは神殿の再建を指示し、アテナイのオリンピエイオンから運ばれた石材を柱として利用しました。再建された神殿は紀元前69年にクィントゥス・ルタティウス・カトゥルス・カピトリヌスによって奉献されました。

紀元前57年には、キケロの追放取り消しを議題とした元老院議員417人の会議や、グナエウス・ポンペイウスに穀物供給の任務を与えるかどうかの議論が神殿で行われました。マルクス・アントニウスも、カエサル暗殺後の紀元前44年に独裁官廃止の会議や、オクタウィアヌスを公敵とするための会議を神殿で召集しました。これらの事実は、元老院が重要な政治的決定を行う場として、ユピテル神殿が選ばれる傾向があったことを示しています。

帝政期

帝政ローマ時代に入ると、元老院が神殿に召集されることは稀になり、カリグラ暗殺後の44年と、ゴルディアヌス1世死後の238年の2回のみでした。神殿は、ウェスパシアヌスの武装蜂起の際にウィテリウス帝によって焼き払われ、ウェスパシアヌス帝によって再建されましたが、80年の火災で再び破壊されました。その後、ドミティアヌス帝によって再建され、400年以上にわたり完全な状態で保たれたと考えられています。

しかし、5世紀以降の神殿に関する記録はなく、ガイセリックの侵略時、あるいはゴート戦争時に焼失し、そのまま放棄されたと考えられています。

構造

1919年に発見された下部構造から、神殿の基壇（ポディウム）の大きさが62m×53mであったことが判明しています。神殿の構成は円柱の直径を基本単位とし、正面寸法21、奥行寸法24、中央内陣5、両側の内陣4、内陣の奥行12などとされています。軒は深く、中央にユピテル、その両側にユーノーとミネルウァの専用の内陣がありました。この構造はエトルリア建築に由来し、同時代のものとしては、中部イタリアで最大級の規模でした。

最初の神殿には、彩色と多数のテラコッタ装飾が施され、頂上にはウェイイの職人ウゥルカによるクアドリガを駆るユピテル神像がありました。この神像は火災などで失われましたが、再建後も同じモチーフが用いられました。ドミティアヌス帝が再建した神殿は、青銅製の屋根瓦に金箔が施され、これだけで12,000タラントン以上の金が使用されたと伝えられています。扉にも金箔が施され、神像は象牙と黄金で造られました。屋根の上にはマルス神とウェヌス神、そして両端にはクアドリガを操る神の像が配置されていました。ペディメントには、玉座のユピテルをユーノーとミネルウァが囲み、その足元には翼を広げた鷲が配置され、それらをクアドリガに乗った太陽と月を運ぶ神々が囲んでいました。

関連項目

ローマ建築
スポリア・オピーマ

脚注

注釈

出典

参考文献

古代の文献

リウィウス『ローマ建国史』。
ハリカルナッソスのディオニュシオス『ローマ古代誌』。
スエトニウス『ローマ皇帝伝』。

現代の文献

モムゼン著、長谷川博隆訳『ローマの歴史 I ローマの成立』名古屋大学出版会、2005年。ISBN 978-4-8158-0505-0。
T. R. S. Broughton (1951). The Magistrates of the Roman Republic Vol.1. American Philological Association
T. R. S. Broughton (1952). The Magistrates of the Roman Republic Vol.2. American Philological Association
Lily Ross Taylor; Russell T. Scott (1969). “Seating Space in the Roman Senate and the Senatores Pedarii”. Transactions and Proceedings of the American Philological Association (The Johns Hopkins University Press) 100: 529-582. JSTOR 2935928.
Richard D. Weigel (1986). “MEETINGS OF THE ROMAN SENATE ON THE CAPITOLINE”. L'Antiquite Classique (L'Antiquite Classique) 55: 333-340. JSTOR 41656361.

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