ワスプ (CV-7)

アメリカ海軍航空母艦「ワスプ」（CV-7）

ワスプ（USS Wasp, CV-7）は、第二次世界大戦中にアメリカ海軍が運用した航空母艦で、同名艦としては8隻目にあたります。同型艦は存在せず、ワシントン海軍軍縮条約の制限下で建造されました。ヨークタウン級航空母艦を小型化した設計で、日本海軍の蒼龍と同等の規模の中型空母でした。

設計と特徴

ワスプは、ワシントン海軍軍縮条約によって制限された航空母艦の総排水量枠内で建造されました。当初、アメリカ海軍はレキシントン級巡洋戦艦を改造して2隻の空母を建造しましたが、残りの排水量枠で新たな空母を建造することになりました。レンジャー級の建造で期待された性能が得られなかったため、ヨークタウン級という拡大発展型の空母が建造されました。その後の残りの排水量枠で建造されたのが、小型空母ワスプです。

ワスプは、当時最新鋭のヨークタウン級を基に設計されましたが、排水量の制約から小型化されました。当初はヨークタウン級の準同型艦として設計されましたが、排水量制限が厳しかったため、レンジャーの準同型艦として新たに設計されました。設計にはレンジャーの運用で得られた問題点や、ヨークタウン級で採用された新技術が盛り込まれました。アメリカ海軍の空母としては小型で、日本海軍の蒼龍とほぼ同規模であり、搭載機数も70～80機程度と少なめでした。艦隊防空任務や爆撃機による索敵任務を重視し、雷撃機の搭載は考慮されていませんでした。

艦体は、艦首と艦尾の乾舷が高い形状で、上部構造物の大型化による船体傾斜に対応するため、左右非対称という特徴がありました。艦首はクリッパー型で、凌波性を向上させるブルワークが設けられていました。飛行甲板から下甲板まで1枚の強度甲板があり、3段目の甲板に格納庫が設けられ、その両側に側壁を立てて飛行甲板が設置されました。

アイランド（艦橋構造物）は、ヨークタウン級と同様に船体中央部に設けられ、低い艦橋の上に射撃照準装置が1基、その背後に三脚マストと煙突が設置されました。ボイラー数の減少と軽量化のため、煙突はヨークタウン級よりも小型化されています。飛行甲板は海面から約17.9mの高さにあり、長さ221.6m、幅は最大で28.3mでした。着艦制動装置はMk 4型を装備し、飛行甲板の前部には遮風柵が設置されていました。格納庫は1層で、高さ5.3m、長さ159.1m、幅19.2mの容積がありました。カタパルトはH2型が4基装備され、エレベーターは艦内に2基、左舷格納庫側面に折り畳み式の舷側エレベーターが1基設置されました。

武装と防御

ワスプは、艦形を小型化するために、対空火器のみを搭載しました。主武装として12.7cm高角砲が8基、近接火器として2.8cm機関砲が4基、12.7mm機銃が24丁装備されました。後に、ボフォーズ4cm機関砲やエリコン2cm機関砲に換装されました。

防御面では、搭載機数の拡大を優先したため、水面部装甲が主要部分も含めて省略され、限定的な防御力にとどまりました。舵機室の側面に89mmの装甲が張られたのみで、水平防御は下甲板に32mmの装甲が施されただけでした。対魚雷防御は考慮されていませんでした。

機関

ワスプの機関は、ヤーロー式重油専焼水管缶6基とパーソンズ式ギヤード・タービンが採用され、70,000馬力を発揮しました。機関配置は、ボイラーとタービンを交互に配置するシフト配置を採用し、水雷防御の欠如を補う工夫がされました。速力は29.25ノットで、重油2,400トン搭載時で15ノットで16,900海里を航行可能でした。

艦歴

ワスプは1936年4月1日に起工し、1940年4月25日に就役しました。第二次世界大戦開戦時は大西洋艦隊に所属し、中立パトロールに従事しました。1941年7月には、アイスランド占領作戦で戦闘機輸送任務に従事しました。太平洋戦争勃発後、イギリスに派遣され、ドイツ海軍艦艇の捜索や船団護衛任務に就きました。また、地中海でのマルタ島への戦闘機輸送作戦（クラブラン）にも参加しました。

1942年6月、太平洋戦線に転じ、ガダルカナル島攻防戦に参加しました。8月にはガダルカナル島上陸作戦を支援し、その後ソロモン諸島南方で哨戒任務に従事しました。9月15日、日本海軍の潜水艦伊19の魚雷攻撃を受け、大火災が発生し、乗組員は退艦。駆逐艦ランズタウンによって雷撃処分されました。

ワスプの沈没は、太平洋戦争におけるアメリカ海軍の大きな損失であり、戦時中の活躍から2つの従軍星章を受章しました。その名を継ぎ、建造中だったエセックス級航空母艦がワスプ（CV-18）と改名されました。

搭載機変遷

1941年12月: F4Fワイルドキャット 18機、SB2Uビンディケーター 37機、TBDデバステーター 2機
1942年6月: F4Fワイルドキャット 28機、SBDドーントレス 36機、TBDデバステーター 5機
1942年8月: F4Fワイルドキャット 28機、SBDドーントレス 36機、TBFアベンジャー 9機

残骸の発見

2019年1月、ポール・アレン氏の財団によって、ワスプの残骸が発見されました。これにより、太平洋戦争中に沈没したアメリカ海軍の正規空母4隻が全て発見されたことになりました。

登場作品

* 『ジパング』: タイムスリップしたイージス護衛艦「みらい」への攻撃に参加し、撃沈される。

ワスプは、その短い生涯の中で、大西洋と太平洋の両戦線で重要な役割を果たしました。その喪失はアメリカ海軍にとって大きな痛手であり、その戦歴は今も語り継がれています。

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