中倉清

中倉清：昭和の剣豪、その生涯

中倉清（なかくら きよし、1910年9月24日 - 2000年2月9日）は、日本の剣道家であり、その卓越した技能と精神力から「昭和の武蔵」と称されました。剣道範士九段、居合道範士九段の段位を持ち、神道無念流剣術と夢想神伝流居合を修めました。警察官としても宮内省皇宮警察、鹿児島県警察で活躍し、剣道界の発展に多大な貢献をしました。

生い立ち

鹿児島県肝属郡東串良村の農家に四男として生まれた中倉清は、幼少期から運動神経に恵まれ、駆けっこや相撲、喧嘩では負け知らずでした。祖父の権蔵は、西南戦争に参加しようとしたほどの武闘家であり、その血を受け継いだ清を特に可愛がりました。小学校では剣道に触れ、その才能を開花させました。村に指導者がいなかったため、独学で剣の基本を習得し、めきめきと上達しました。

大道館武道専修学校

青年学校を卒業後、中倉清は西郷隆盛を崇敬する今村貞治が創立した大道館武道専修学校に入学しました。厳しい稽古の中で、彼は剣道の腕を磨き、研究科に進みました。この学校での経験が、後の彼の剣道人生に大きな影響を与えました。特に、丸田兼弘師範から東京の中山博道の話を聞き、憧れを抱くようになりました。

有信館での修行

大道館武道専修学校を修了後、中倉清は中山博道の道場、有信館に入門しました。有信館での稽古は、激しい打突や足がらみ、投げ技を含む格闘的なものでした。中倉は、ここで剣道家としての基礎をさらに強固なものにしました。有信館では中島五郎蔵、羽賀準一と出会い、「有信館三羽烏」として友情を育みました。また、数々の試合で優勝し「賞品稼ぎ」と称されるほどの実力を身につけました。

皇宮警察での活躍

有信館での活躍が認められ、1931年には皇宮警察にスカウトされました。皇宮警察では、剣道家としてだけでなく、皇族の警護も担当しました。特に秩父宮雍仁親王からは、「中倉一人で、君たち10人よりも安心だ」とまで言われた逸話が残っています。また、宮内省済寧館剣道大会で優勝するなど、その実力を示しました。

植芝盛平との関わり

1932年、合気道の創始者である植芝盛平と出会い、その婿養子となりました。植芝盛平と中山博道から一字ずつ貰い「植芝盛博」と名乗りました。この時期、合気道を学ぶとともに、日本体育専門学校や東京商科大学（現在の一橋[[大学]]）で剣道の師範を務めました。しかし、1936年に植芝家と離縁し、再び中倉清として活動することになりました。

第二次世界大戦と戦後

第二次世界大戦中は、家族を九州に帰し、自身は東京で終戦を迎えました。戦後、剣道が禁止される中、密かに稽古を続けました。1951年には牛車から転落する事故で左足首を骨折する重傷を負いましたが、左上段の構えを開眼し、見事に復帰しました。その後、鹿児島県警察に勤務し、剣道指導者として、また選手としても活躍しました。

全日本[[剣道選手権大会]]と東西対抗戦

1953年、第1回全日本[[剣道選手権大会]]に出場し、戦前からの連勝記録が途絶えるものの、1954年には第3位入賞を果たしました。全日本東西対抗剣道大会では、9人抜きという驚異的な記録を打ち立て、「東西対抗の鬼」と称えられました。これらの活躍により、中倉清は剣道界で確固たる地位を築きました。

指導者としての活動

中倉清は、現役を退いた後も、後進の指導に尽力しました。関東管区警察学校教授、一橋[[大学]]、中央[[大学]]、防衛医科大学校の剣道部師範を務め、多くの剣道家を育てました。また、全日本[[剣道連盟]]の審議員としても、剣道界の発展に貢献しました。晩年には、ヨーロッパやアメリカなど、世界各地で剣道を指導し、国際的な剣道の普及に尽くしました。

晩年と死

晩年は書道や囲碁も嗜み、多才な一面も覗かせました。1999年に88歳で稽古を退き、2000年2月9日、89歳でその生涯を閉じました。彼の葬儀は、彼が指導した大学や団体によって合同で執り行われました。その偉大な功績を称え、故郷の東串良町には銅像が建立されています。

エピソード

中倉清は、強度の近視でありながら、剣道の試合でそのハンデをものともせず、数々の勝利を収めました。また、東京商科大学剣道部師範時代には、稽古の厳しさから、部員に実力を疑われましたが、試合で圧倒的な強さを見せつけ、部員たちを驚かせました。彼は、神道無念流の剣術を重んじ、その独特の動きから「汚い剣道」と評されることもありましたが、その強さは誰にも否定できないものでした。

年表

1910年：鹿児島県肝属郡東串良村で誕生。
1927年：大道館武道専修学校に入学。
1929年：大道館武道専修学校を修了。福岡県折尾の大統社工芸塾に剣道指導教員として赴任。
1929年：大日本武徳会から剣道三段授与。
1929年：中山博道の有信館道場を訪問。上京を勧められる。
1930年：上京して有信館に入門。
1931年：宮内省皇宮警察部にスカウトされ、皇宮警手に任官。
1931年：大日本武徳会から精錬証授与。
1932年：合気道創始者植芝盛平の婿養子となる。
1933年：第8回明治神宮大会一般30歳未満の部で優勝。
1934年：皇宮警察を退職。日本体育専門学校、東京商科大学の剣道師範に就任。
1936年：植芝家と離縁。
1936年：再び皇宮警手に任官。
1939年：剣道教士号授与（最年少）。
1947年：警視庁を退職し、鹿児島に帰郷。
1953年：鹿児島市警察巡査部長に任官。
1954年：第2回全日本[[剣道選手権大会]]で第3位入賞。
1954年：第1回全日本東西対抗剣道大会に出場。
1959年：全日本[[剣道連盟]]から剣道八段授与（最年少）。
1962年：剣道範士号授与（最年少）。
1966年：関東管区警察学校教授に就任。
1971年：一橋[[大学]]剣道部師範に就任。
1978年：剣道九段（最年少）、居合道範士号授与。
1999年：88歳で稽古を退く。
* 2000年：死去。


中倉清は、その生涯を通じて剣道の道を追求し、多くの人々に影響を与えました。彼の功績は、剣道界において永遠に語り継がれるでしょう。

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