丸岡修

丸岡 修

丸岡 修（まるおか おさむ）は、1950年10月20日に生まれ、2011年5月29日に没した日本の新左翼活動家、テロリストです。日本赤軍の主要メンバーとして、特に軍事部門の最高幹部を務めた人物として知られます。徳島県出身。国際手配されていたドバイ日航機ハイジャック事件やダッカ日航機ハイジャック事件への関与が指摘され、1987年に東京で逮捕されました。

生い立ちと思想形成

丸岡は徳島県の大地主の家系に生まれました。父親は陸軍将校でしたが、第二次世界大戦後の農地改革によって家は没落し、一家は大阪へ移り、縫製業で生計を立てました。このような家庭環境に加え、小学校高学年時の担任が戦後も軍国主義的な思想を持ち続ける右翼教師であった影響を強く受け、中学時代まで熱狂的な右翼少年として育ちました。五・一五事件や二・二六事件の青年将校たちに憧れ、将来は自衛官を志望していました。

しかし、大阪府立清水谷高等学校に進学後、国際情勢、特にベトナム戦争への疑問を抱き始めたことを機に、その思想に変化が現れます。日本民主青年同盟やベ平連といった市民運動や左翼系の組織の会合に参加するようになり、政治意識を高めていきました。特に、ベトナム戦争に反対する羽田闘争において、京都大学の学生であった山崎博昭が命を落としたことに衝撃を受け、過激な運動へと傾倒するきっかけの一つとなったとされます。

高校卒業後の1970年からは、大阪浪共闘に参加し、活動を本格化させました。ベ平連での市民活動と並行して、関西のブント系組織が運営する関西労働者学園で、滝田修や藤本進治らの指導を受けました。とりわけ、藤本の認識論や毛沢東の実践論、矛盾論といった思想に深く影響を受け、これらを自身の信条の核と定めていきます。

日本赤軍への参加と国際的な活動

1972年、丸岡は日本赤軍のメンバーである檜森孝雄らの勧誘に応じ、同年4月に日本を出国しました。その後、ベイルート郊外にあるアラブ・ゲリラ訓練所において、同年のテルアビブ空港乱射事件に関与することになる奥平剛士や安田安之らと共に軍事訓練を受けた後、その足取りは一旦不明となりました。

テルアビブ空港乱射事件自体には直接参加しませんでしたが、事件に関わる殺人事件の共犯として日本国内で指名手配されました。日本赤軍の主要メンバーとなった丸岡は、1973年のドバイ日航機ハイジャック事件、そして1977年のダッカ日航機ハイジャック事件において、主導的な立場で関与したと指摘され、国際手配を受けることになります。

日本赤軍メンバーである岡本公三の供述によれば、テルアビブ空港乱射事件は当初、丸岡を含めた4人で実行する計画だったものの、丸岡が別行動をとったため3人で行われたとされています。丸岡自身も、重信房子の公判で、奥平剛士からの参加要請を「聞いていないし準備もできていないため、1年後なら応じられる」と断ったことを認めています。奥平はこれに対し、自身らがテルアビブでの作戦に成功した場合、丸岡が日本国内でパルチザン部隊を組織するよう求め、その約束を交わしたとされます。しかし、事件直後に日本の公安当局の徹底的なマークを受けた丸岡は日本への帰国を断念し、中東などで重信らと合流することとなりました。

クアラルンプール事件への実行犯としての関与も疑われましたが、この事件に関して丸岡が起訴されることはありませんでした。

逮捕と裁判、そして晩年

長年にわたり国際手配されていた丸岡は、1987年11月21日、東京において他人名義の偽造パスポートを所持していたところを警察に発見され、逮捕されました。逮捕に先立ち、複数の国の情報機関から、丸岡と見られる人物が日本へ向かっているとの情報がもたらされており、中には中国・北京で「よど号」ハイジャック事件のリーダーであった田宮高麿と接触したという具体的な情報も含まれていたとされます。所持していたパスポートは沖縄県在住のスナック経営者名義でしたが、指紋照合によって本人の丸岡修であることが確認されました。

逮捕後の取り調べや捜査によって、丸岡が日本国内および東南アジアにおいて、合法・非合法双方の形態で日本赤軍の支援組織を構築しようとしていた計画が明らかになりました。また、沖縄に協力者がいたことから、フィリピンに潜伏していた日本赤軍メンバー、泉水博の居場所特定にも繋がりました。さらに、翌年に開催が迫っていたソウルオリンピックの妨害工作を、当時の北朝鮮指導者・金日成の指示のもと計画していたことや、1987年6月に偽造旅券で日本に潜入する前に、マドリードで盗難された元京都市議の旅券を元に作成された偽造旅券を用いて、タイ、シンガポール、フィリピン、中国などのアジア諸国に加え、ヨーロッパ諸国を含む合わせて十か国以上を渡り歩いていたことも判明しました。逮捕直前の1987年11月には、オーストリアのウィーンに潜入していたことも、後に明らかになりました。公安警察の見立てでは、丸岡は日本赤軍の非公然支援組織と連携し、皇族を誘拐することで、三菱重工爆破事件で死刑が確定していた大道寺将司らの奪還を図ることを目的としていたとされています。

裁判では、ドバイおよびダッカにおけるハイジャック事件に関わるハイジャック防止法違反に加え、偽造旅券を用いた旅券法違反の罪に問われました。1993年12月、無期懲役の判決が下され、1997年4月に控訴、2000年3月に上告がそれぞれ棄却されたことで、無期懲役刑が確定しました。当初は宮城刑務所で服役しました。

2002年1月27日付の『読売新聞』記事「若王子さん事件 日本赤軍の影」において、三井物産マニラ支店長誘拐事件で犯人側に渡された身代金と、丸岡が所持していた紙幣の番号が一致したなどと報じられました。丸岡はこの報道に対し、名誉毀損として民事訴訟を提起しましたが、控訴審である東京高裁は一審判決を破棄し、新聞記事の内容を真実と認め、丸岡側の請求を棄却しました。

2004年には拡張型心筋症と診断され、車椅子での生活を余儀なくされました。刑務所には医師が常駐しておらず、十分な治療が受けられなかったとされており、度々発作で失神することもあったため、丸岡は4度にわたり刑の執行停止を申し立てましたが、いずれも認められませんでした。2010年には、刑の執行停止が認められないことによる精神的苦痛を理由に、国に対し約1100万円の損害賠償と刑の執行停止を求める訴訟を東京地裁に提起しました。

丸岡 修は、収監されていた八王子医療刑務所において、持病の心臓病により2011年5月29日に死去しました。享年60歳でした。遺骨は2011年10月19日、レバノンのベイルートにある墓地に納骨されました。この墓地は、パレスチナ・コマンドやガッサーン・カナファーニーといった著名な活動家が眠る場所であり、テルアビブ空港乱射事件に関与した奥平剛士や安田安之、計画に関わった檜森孝雄の墓もあります。

著書

『公安警察（マルコー）ナンボのもんじゃ』 新泉社、1990年
『丸岡修自述 元・日本赤軍軍事指揮官告白録』 風塵社、2013年

丸岡を描いた作品

* 高山文彦『丸岡修「戦士からの遺言状』講談社G2

（この他、日本赤軍に関する多くの書籍に丸岡についての記述が見られます）

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