久貝正典

久貝正典（くがい まさのり）

久貝正典は、文化3年（1806年）に生まれ、慶応元年6月14日（1865年7月15日）に没した、幕末の江戸幕府旗本です。父は旗本・久貝正満で、通称を甚三郎と称し、官位は因幡守、河内守、遠江守を歴任しました。また、養翠と号しました。正室と継室はともに有馬誉純の娘であり、子に久貝正章、林忠交正室がいます。弟には、安政の大獄時に京都町奉行を務めた小笠原長常がいます。

経歴

久貝正典は5500石の石高を領していました。文政10年（1827年）に寄合火事場見廻、文政13年（1830年）に火消役、天保6年（1835年）に小普請組支配、天保7年（1836年）に小姓組番頭、天保9年（1838年）に書院番頭、天保12年（1841年）に大番頭と、幕府内で順調に昇進しました。安政2年（1855年）には講武所総裁を池田長顕とともに兼任し、安政3年（1856年）には留守居、安政5年（1858年）には大[[目付]]に就任しました。

安政の大獄とその後

安政の大獄では、五手掛の一人として、北町奉行の石谷穆清、寺社奉行の松平宗秀（本庄宗秀）、勘定奉行の池田頼方、目付の神保長興とともに処断に関与しました。安政7年（1860年）には御側御用取次に転じましたが、同年に発生した桜田門外の変では吟味役を務めました。しかし、この吟味に不手際があったとされ、文久2年（1862年）に2000石を減封された上で、免職・隠居を余儀なくされました。

元治元年（1864年）には講武所奉行として復職し、翌慶応元年（1865年）には没収されていた所領のうち1000石が回復されました。しかし、同年中に死去し、遺領は子の正章が継ぎました。

人物・文化

木村芥舟は、正典を「その身軀偉大にして、才職衆に過絶す」と評しており、その優れた能力と人物像を伝えています。墓所は東京都豊島区の白泉寺にあります。

和歌にも造詣が深く、小林歌城に師事して和歌を学びました。自ら詠んだ歌として、「あめつちとともにうこかぬ岩かねに万代かかれ滝のしら糸」という歌が残されています。この歌は、天保15年（1844年）に領地内の源氏滝で詠まれたものです。

また、画家である菊池容斎との交流もあり、困窮していた容斎の才能を認め、資金援助を行いました。静嘉堂文庫に所蔵されている「阿房宮図」など3点の作品は、正典の依頼によって描かれたものです。

登場作品

久貝正典は、以下のテレビドラマに登場しています。

* 『篤姫』（2008年、NHK大河ドラマ、演：藤木孝）

もう一度検索