佐伯惟教

佐伯惟教（さえき これのり）

佐伯惟教は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、豊後佐伯氏の第12代当主です。豊後国海部郡栂牟礼城を拠点に活躍しました。

生涯

佐伯惟教の出自については諸説あり、父は第11代当主・佐伯惟常、またはその子・惟益とされていますが、系図は確定していません。しかし、佐伯氏の歴史において重要な人物であることは間違いありません。

1550年、大友氏の内紛「二階崩れの変」では、大友義鎮（後の宗麟）を擁立して府内を制圧し、その功績から宗麟の信頼を得て重臣として活躍しました。同年には、菊池義武や肥後国領主との戦いでも先陣を務め、鎮圧に貢献しました。

当時、大友氏の家臣団は、同族である同紋衆と、それ以外の家系である他紋衆に分かれており、佐伯氏は他紋衆の中心的な存在でした。しかし、大友氏の集権化政策が進むにつれて、両者の対立は深まります。惟教の祖父・惟治が謀反の疑いで自害に追い込まれるなど、佐伯氏と大友氏の関係は緊張状態にありました。

1556年、他紋衆の小原鑑元らが反乱を起こすと（姓氏対立事件）、惟教は直接参加はしなかったものの、鑑元らと連絡を取っていたとされます。これを受けて、大友宗麟は惟教の追討を決定。惟教は抗戦を避け、一族を率いて伊予国の西園寺実充のもとに身を寄せ、10年余りを過ごしました。

しかし、永禄年間に入ると、大友氏は毛利氏との間で北九州の覇権を争うようになります。毛利氏の水軍に対抗するため、佐伯水軍の力が必要不可欠となり、宗麟は惟教に帰参を求めました。1569年、臼杵鑑速らの仲介により惟教は帰参を果たし、翌年には栂牟礼城を返還されました。さらに、戸次鑑連（後の立花道雪）が筑前国の立花氏を継ぐために豊後国を離れると、その後に加判衆（重臣）に列せられました。

1572年、一条兼定が伊予西園寺氏と争うと、宗麟の命により惟教は兼定救援のため伊予国に出陣。飯森城などを攻略し、西園寺公広を降伏させました。1577年には、剃髪して麟与軒宗天と号し、この頃には家督を嫡男・惟真に譲っていたと考えられます。

1577年12月、日向国の伊東義祐が島津氏に敗れて大友氏のもとに逃れると、島津氏の勢力が日向北部まで拡大し、大友氏に属していた勢力の間で動揺が広がります。翌1578年1月、松尾城主・土持親成（惟教の妹婿）が島津氏に寝返ったとの情報が入ると、惟教は親成に弁明を求め、取り成しを試みましたが、宗麟はこれを許さず、惟教に土持氏討伐を命じました。同年4月10日、惟教は松尾城を攻略し、親成を降伏させますが、宗麟は親成の助命を許さず、親成は自害させられました。

同年9月、キリスト教に傾倒していた宗麟は、日向にキリスト王国を建設するという名目で、重臣の反対を押し切り、島津攻めを決定します。10月、惟教は高城攻めに参加しますが、救援に駆けつけた島津家久の軍勢と遭遇し、これを撃破しました。しかし、大友軍は士気が低く、連携も不十分だったため、島津軍を完全に追い詰めることができませんでした。さらに、島津義久率いる本隊が北上しているとの情報が入り、軍議が開かれました。

惟教は、包囲を継続し、援軍を待つべきだと主張しましたが、即時交戦を主張する田北鎮周の意見が通り、1578年11月12日、大友軍は無秩序に戦闘に突入しました（耳川の戦い）。惟教は全軍を前進させ、兵力で優位に立とうとしましたが、高城から出撃した島津家久の急襲を受けた田原親賢が後退を命じたため、大友軍は大混乱に陥り、島津軍の猛攻を受けて壊滅しました。この戦いで、惟教は子の惟真・鎮忠らと共に討死するという壮絶な最期を遂げました。家督は、本国に残留していた惟真の子・惟定が継ぎました。

佐伯惟教は、戦国時代の激動の中で、大友氏の重臣として活躍し、その生涯は波乱に満ちたものでした。優れた武将であったことはもちろん、その人柄や決断力も多くの人に影響を与えた人物です。

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