刁雍

刁雍（ちょう よう）

刁雍（390年 - 484年）は、東晋末期から北魏初期にかけての軍人・官僚であり、字は淑和、本貫は勃海郡饒安県です。彼は激動の時代を生き抜き、その才能と人脈を駆使して北魏で重要な地位を築きました。

生涯

刁雍は、名門貴族の家柄に生まれました。東晋の尚書令であった刁協を曾祖父に持ち、父は右衛将軍の刁暢でした。しかし、彼の人生は順風満帆とは言えませんでした。伯父の刁逵が劉裕のために立て替えた社銭を巡る事件が起こり、劉裕が刁逵に恨みを抱くことになります。404年、劉裕が桓玄を討伐すると、刁氏は処断の危機に瀕しました。刁雍は父の元部下に匿われ洛陽へ逃れ、後秦の庇護を受けることになります。

後秦では、その学識を買われ、姚興により太子中庶子に任じられました。彼は書伝を広く読んでいたため、教養豊かな人物として重用されたのです。

417年、後秦が滅亡すると、刁雍は司馬休之らと共に北魏に帰順しました。北魏では、その軍事的な才能を発揮し、仮の建義将軍として黄河と済水の間で流民を招集し、軍勢を拡大しました。南朝宋との戦いでは、劉裕の派遣した部将を討ち取るなどの武功を挙げ、その兵力は2万に達しました。

しかし、422年には、従弟の刁弥と連携して南朝宋を討とうと試みましたが、敗北を喫しました。その後も宋との間で戦闘を繰り返しましたが、劣勢を強いられ、最終的には北魏に帰還しました。

423年、北魏の明元帝は、苦戦していた叔孫建らを支援するため、刁雍を仮の鎮東将軍・青州刺史に任じました。刁雍は青州に赴き、軍事的な手腕を発揮しましたが、叔孫建との連携がうまくいかず、宋の将軍である檀道済らの前に敗退しました。

その後、刁雍は尹卯固に駐屯し、再び南進して項城を攻略しました。譙・梁・彭・沛の民を招集し、済陰に移鎮しました。433年、北魏が外黄城に徐州を立てると、刁雍は平南将軍・徐州刺史に任じられ、その統治手腕を発揮しました。徐州にあること7年、438年に都の平城に召還されましたが、南の国境地帯からの要望により、再び下向することになります。

441年、刁雍は使持節・侍中・都督揚豫兗徐四州諸軍事・征南将軍・徐豫二州刺史に任じられ、その地位を確固たるものとしました。442年には、宋の将軍である裴方明が仇池を攻め落とすと、太武帝の命を受けて裴方明の帰路を遮断し、京口まで進軍しました。

その後、薄骨律鎮将となり、河西高渠の北での灌漑と開墾の許可を得ました。彼は農業振興にも力を注ぎ、446年には、穀物の輸送効率化のために黄河に船を浮かべて穀物を運ぶことを上奏しました。448年には、治所の築城許可を得て、449年に完成させ、それは「刁公城」と呼ばれました。

455年、刁雍は平城に召還され、特進の位を受けました。465年には、朝廷の礼楽を正すよう上奏しましたが、文成帝の死去により実現しませんでした。皇興年間には、隴西王源賀や中書監の高允らと共に、群臣の年長者として優遇されました。

484年、刁雍は95歳で死去しました。その功績を讃えられ、儀同三司・冀州刺史の位を追贈され、諡は簡とされました。彼の残した詩・賦・頌・論および雑文は100篇あまりに及び、特に仏教・道教への篤い信仰を示した教誡は子孫に伝えられました。

人物

刁雍は、武将としての才能だけでなく、文化人としても優れた人物でした。彼は書物を広く読み、学問を好み、仏教や道教にも深く帰依しました。彼の残した文章は、その思想や信仰を今に伝える貴重な資料となっています。

家族

長男：刁纂（中書侍郎、早逝）
刁遵
刁紹（武騎侍郎、涼州征西府司馬）
刁献（秘書郎）
刁融（汝陰郡太守）
刁粛（中書博士）

伝記資料

『魏書』巻38 列伝第26
『北史』巻26 列伝第14

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