古代ギリシャ・ローマ世界

古代ギリシャ・ローマ世界（Greco-Roman world）

古代ギリシャ・ローマ世界とは、現代の学者や作家が用いる言葉で、文化的に古代ギリシアや古代ローマの言語、文化、政治、宗教から長期にわたり直接的な影響を受けた地域を指します。この地域は「地中海世界」とも呼ばれ、地中海盆地や黒海盆地を中心とした広大な地域を包含します。

影響と言語

東地中海においてはギリシア語が、西地中海においてはラテン語が知的文化や商業、公的な場面で広く用いられました。これらの言語は、帝国の人口の大多数を占める農村の農民の母語にはなりませんでしたが、都市部やコスモポリタンなエリート層にとっては共通語として機能しました。民族的な出自に関わらず、著名なローマ市民はギリシャ語やラテン語を話し、書き、知識人としての地位を確立しました。

中心部と領土

古代ギリシャ・ローマ世界の中心部は、イタリア半島、ギリシャ、キプロス、イベリア半島、アナトリア半島（現在のトルコ）、ガリア（現在のフランス）、歴史的シリア、エジプト、アフリカ属州などでした。周辺部には、「ゲルマニア」、イリュリクム、マケドニア、トラキア、モエシア、パンノニアなどが含まれていました。さらに、ダキア、マウレタニア、ヨルダン、シナイ半島、タウリクチェルソネススなどもこの世界の一部でした。

古代ギリシャ・ローマ世界は、東方のペルシャ世界とも相互作用がありました。マラトンの戦いやサラミスの海戦、アレクサンドロス3世によるペルシャ帝国征服などがその例です。

文化

芸術、哲学、修辞学における教育は、ギリシャやローマの支配地を通じて広まりました。教育を受けた階級は、相互の知識を共有し、影響を受け合いました。例えば、ヘルクラネウムで発見されたパピルスはギリシャ語で書かれており、ローマ人がギリシャの学校によく通っていたことが知られています。アウグストゥスの業績録がギリシア語とラテン語の両方で受け入れられたことは、共通文化の証です。プルタルコスの「対比列伝」は、当時の教養ある人々の間でよく知られていました。

建築

古代ギリシャ・ローマの建築は、古代ギリシャで生まれた法則と様式を継承しています。神殿が最も代表的な建物であり、他にローマ元老院のような政府の建物やコロッセオのような文化施設がありました。円柱の三大様式であるドーリア式、イオニア式、コリント式が用いられ、それぞれパルテノン神殿、エレクテイオンなどが代表例です。

政治

ローマ人は、統治下の人民にローマ市民権を与え、政治的な統合を進めました。紀元212年のカラカラ帝の勅令により、帝国の自由民はすべて市民となりました。西ローマ帝国滅亡後も、帝国の主要言語がギリシャ語になっても、人々はローマ人を自称し続けました。ロマイオイという言葉は、オスマン帝国時代や現代でも用いられています。

関連項目

古典古代
古代ギリシャ・ローマの神話
ローマ帝国の遺物
古代ギリシャ・ローマの秘儀
ヘレニズム
古代ギリシャ・ローマ世界の魔法
古代ギリシャ・ローマの地理学者一覧

参照

Sir William Smith（Ed）. Dictionary of Greek and Roman Geography. London: Spottiswoode and Co, 1873.
* Simon Hornblower and Antony Spawforth（Ed）. Oxford Classical Dictionary. Oxford University Press, 2003.

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