可朱渾元

可朱渾元（かしゅこん げん）：北魏末から北斉を駆け抜けた将

可朱渾元は、北魏末から北斉にかけての激動期に活躍した軍人です。字は道元といい、本貫は太安郡狄那県にありました。代々渠帥を務めた家柄の出身で、父は朔州刺史の可朱渾昌です。可朱渾氏は北魏に帰順後、懐朔鎮に住み、可朱渾元自身も武略に長けた人物として知られていました。

六鎮の乱と群雄割拠の時代

若き日の可朱渾元は、後の北斉の皇帝となる高歓と親交がありました。しかし、六鎮の乱が勃発すると、その運命は大きく変わります。当初は家族と共に定州への移住を試みましたが、鮮于修礼の乱に巻き込まれ、彼の部将となります。その後、葛栄が勢力を拡大すると、その配下で梁王に封じられました。

しかし、その勢力も長くは続かず、可朱渾元は爾朱栄のもとに身を寄せ、別将として活躍することになります。爾朱天光の下で万俟醜奴らと戦い、永安3年（530年）には賀抜岳と共に尉遅菩薩を撃破する功績を挙げ、東県伯に封じられました。

宇文泰との対立と高歓への帰順

孝武帝の即位後、可朱渾元は渭州刺史に任じられます。しかし、永熙3年（534年）に賀抜岳が侯莫陳悦に殺害されると、事態は再び変化します。宇文泰が賀抜岳の部衆を引き継いで侯莫陳悦を討つ際、可朱渾元は侯莫陳悦を支援しましたが、敗走を余儀なくされます。

秦州で宇文泰に包囲され、一時的に屈服した可朱渾元でしたが、以前から親交のあった高歓への帰順をひそかに企てていました。宇文泰にその二心を察知され攻撃を受けると、可朱渾元は部衆を率いて渭州を脱出、烏蘭津を渡り、霊州の劉豊の助けを借りて雲州へ入ります。天平2年（535年）、高歓は可朱渾元を迎え入れ、元県公、車騎大将軍に任じました。

北斉での活躍と最期

高歓の麾下となった可朱渾元は、西魏との戦いで金祚・皇甫智達を捕らえ、并州刺史に転任するなど、数々の戦で活躍しました。武定5年（547年）には侯景の反乱鎮圧にも参加し、司空に上り詰めます。北斉の建国後、扶風王に封じられ、文宣帝に従って山胡や柔然との戦いで功績を重ね、大将軍、太傅、太師と重職を歴任しました。

可朱渾元は、その軍事的な才能だけでなく、乱世を生き抜く政治的な嗅覚も持ち合わせていた人物でした。最終的には北斉の重鎮として活躍し、その死後、仮黄鉞・太宰・録尚書事の位を追贈されました。弟に可朱渾天元・天和がおり、子には可朱渾長挙・長威がいました。扶風王位は長挙が継ぎました。

可朱渾元の生涯は、北魏末から北斉にかけての激動の時代を象徴するものであり、その活躍は後世に語り継がれています。

伝記資料

『北斉書』巻27 列伝第19
『北史』巻53 列伝第41
斉故尚書右僕射司空公可朱渾扶風王墓誌銘（可朱渾孝裕墓誌）

参考文献

氣賀澤保規『中国史書入門 現代語訳北斉書』勉誠出版、2021年。
『北斉書』中華書局、1972年。
『魏書』中華書局、1974年。
『北史』中華書局、1974年。
羅新; 葉煒『新出魏晋南北朝墓誌疏証』中華書局、2005年。

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