賀抜岳

賀抜岳（がばつ がく）

賀抜岳（生年不詳 - 534年）は、中国、北魏末期の軍人です。字は阿斗泥、本貫は神武郡尖山県（現在の山西省忻州市神池県）です。武川軍主の賀抜度抜の子として生まれました。

生涯

賀抜岳は、幼少の頃から左右自在に騎射を行うことができ、その武勇は人並み外れていました。また、兵書を読まずともその内容を理解できたと伝えられています。

524年、父や兄たちとともに衛可孤を殺害した後、広陽王元淵の下で帳内軍主となりました。その後、強弩将軍に任じられ、兄の賀抜勝とともに恒州に駐屯します。恒州が陥落すると、爾朱栄に帰順し、その下で別将や都督を歴任しました。

爾朱栄とともに霊太后を排除する計画に参画し、528年には孝明帝の急死後、爾朱栄が洛陽に向かう際、先鋒として2000の兵を率いて河陰に到着しました。爾朱栄による朝士殺害後、高歓らが爾朱栄に帝位を勧める中、賀抜岳は時期尚早であると反対し、孝荘帝擁立を主張しました。また、高歓を殺害するよう爾朱栄に進言しましたが、これは受け入れられませんでした。

その後、前将軍、太中大夫に任じられ、樊城郷男の爵位を受けます。爾朱栄の下で葛栄を破るなどの功績を立てましたが、事件に連座して一時免職となるも、すぐに復帰しました。529年には、元顥討伐で左光禄大夫、武衛将軍に転じました。

530年、万俟醜奴が関中に侵入すると、賀抜岳は爾朱天光の副将として万俟醜奴討伐に参加しました。渭北の戦いでは、数で勝る尉遅菩薩の軍を、巧みな戦術と奇襲によって打ち破り、大きな戦果を挙げました。また、万俟醜奴を捕らえ、蕭宝寅を降伏させるなど、関中の平定に大きく貢献しました。

万俟醜奴討伐後、賀抜岳は車騎将軍に任じられ、伯に進爵し、後に公爵に昇進しました。その後、雍州刺史代行、驃騎大将軍などを歴任し、532年には都督三雍三秦二岐二華十州諸軍事、雍州刺史に就任しました。

高歓が信都で挙兵すると、爾朱天光は高歓を討つ策を賀抜岳に諮問しました。賀抜岳は、爾朱氏の骨肉の争いを懸念し、関中に拠って根拠地を固めることを勧めました。しかし、爾朱天光はこれを聞き入れず、高歓に敗れました。賀抜岳は雍州に向かい、爾朱天光の弟である爾朱顕寿を捕らえて高歓に応じました。

孝武帝が即位すると、関中大行台の位を加えられました。533年、孝武帝が高歓を排除しようと図った際、賀抜岳を頼り、都督二雍二華二岐豳四梁三益巴二夏蔚寧涇二十州諸軍事・大都督に任命しました。高歓は賀抜岳兄弟の名声を妬んでおり、賀抜岳は危険を察知し、宇文泰と結びました。賀抜岳は自ら平涼の西の辺境に移り、原州で馬を牧するなどして身の安全を図りました。費也頭の万俟洛、鉄勒の斛律沙門、斛抜弥俄突、紇豆陵伊利らはみな賀抜岳に帰順しました。秦州・南秦州・河州・渭州の四州の刺史も平涼に合流し、賀抜岳の指揮下に入りました。しかし、霊州刺史の曹泥のみがこれに応じず、高歓に通じました。

534年、賀抜岳は侯莫陳悦を高平に招き、曹泥討伐の先鋒に任じました。しかし、侯莫陳悦は高歓と通じており、賀抜岳を陣営に誘い、謀殺しました。賀抜岳は死後、侍中、太傅、録尚書事、都督関中三十州諸軍事、大将軍、雍州刺史の位を追贈され、武壮と諡されました。

人物

賀抜岳は、卓越した武勇と知略を兼ね備えた人物でした。戦場では常に先頭に立ち、敵を圧倒する勇猛さを見せました。また、戦略眼にも優れ、巧みな戦術で数々の戦いを勝利に導きました。その一方で、政治的な駆け引きにも長け、時の権力者たちと巧みに連携しながら、自らの勢力を拡大しました。

賀抜岳の死後、その築いた地盤と軍閥は、後の西魏・北周の基礎となりました。賀抜岳は、北魏末期の動乱期において、その後の歴史を大きく左右する重要な役割を果たした人物の一人と言えるでしょう。

家族

賀抜岳の子には賀抜緯、賀抜仲華がいます。賀抜緯は、西魏・北周に仕えて開府儀同三司、霍国公に進みました。賀抜仲華は、兄の賀抜勝の養子となりました。

伝記資料

• - 『魏書』巻80 列伝第68
• - 『周書』巻14 列伝第6
• - 『北史』巻49 列伝第37

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