喜劇 駅前茶釜

『喜劇 駅前茶釜』は、1963年東宝系で公開された日本のコメディ映画です。カラー作品で、東宝スコープ、東京映画作品による製作、上映時間は95分。キャッチコピーは「狸が捲き起こす笑いの渦巻! 茶釜をめぐる化かし合い大型喜劇」と、期待感を煽るものとなっています。

本作は『駅前シリーズ』の第6作目にあたります。『文福茶釜』をヒントに、物語は「呑福寺」という寺に伝わる「呑福茶釜」を巡る騒動を描いています。劇中の駅名は「呑福寺前駅」ですが、これはおそらく「茂林寺」をモデルとした駅、茂林寺前駅（東武伊勢崎線）を指していると考えられます。

ストーリーには「狸」が重要な役割を果たしており、森繁久彌演じる徳之助の夢のシーンでは、中尾ミエが狸御殿で歌を披露する場面が登場します。このシーンは、大映作品などで知られる『狸御殿』を彷彿とさせます。また、三木のり平演じる狸が人間に化ける場面は、往年ののり平主演作『孫悟空』（監督：山本嘉次郎）を連想させるなど、様々な映画的要素が盛り込まれています。

ゲスト出演者にも注目が集まりました。前作では王貞治が本人役で出演していましたが、本作ではプロレスラーのジャイアント馬場がゲスト出演。ただし、馬場は本人役ではなく、町人の役柄で登場しています。

『喜劇 駅前団地』から5作に渡りシリーズを監督してきた久松静児監督は、本作でシリーズから離れます。続く『喜劇 駅前女将』からは、監督が佐伯幸三に交代しています。なお、1963年に公開された『駅前シリーズ』作品は、『喜劇 駅前茶釜』のみとなっています。

スタッフ陣は、製作に佐藤一郎、金原文雄、脚本に長瀬喜伴、撮影に黒田徳三、録音に原島俊男、整音に西尾昇、照明に今泉千仭、美術に小野千滋、音楽に広瀬健次郎、編集に広瀬千鶴、助監督に松本あきら、現像に東京現像所、振付に水木歌澄、踊りには水木くれない会と、豪華な顔ぶれが揃っています。製作担当者は大久保欣四郎が務めました。

キャストも豪華です。森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺、淡島千景、淡路恵子、池内淳子、若林映子、横山道代、小桜京子、三木のり平、有島一郎、中尾ミエ、加東大介、ジャイアント馬場、石田茂樹、渡辺篤、沢村貞子、秋好光果、羽柴久、山茶花究、左卜全、立原博、古池みか、岩倉高子、村松恵子、加藤春哉、織田政雄、熊吉立岡と、多くの俳優がそれぞれの個性と魅力を放っています。

本作は、同時上映作品として『日本一の色男』（脚本：笠原良三、監督：古澤憲吾、主演：植木等）と併せて公開されました。『日本一の色男』は『日本一』シリーズの第1作目にあたります。

『喜劇 駅前茶釜』は、往年の喜劇映画ファンのみならず、現代の観客にとっても楽しめる作品と言えるでしょう。軽妙なテンポと個性豊かなキャラクター、そして豪華なキャスト陣が織りなす笑劇は、きっと多くの人の心を掴むことでしょう。様々な映画作品へのオマージュも散りばめられており、映画史における興味深い位置付けも持っています。 参考文献としては、「銀幕の天才 森繁久彌」（ワイズ出版） 71頁 2003年、キネマ旬報が挙げられます。また、関連作品として『分福茶釜』、『茂林寺』、『狸御殿』、『クレージー作戦 先手必勝』、スポンサーである正田醤油なども関連性を持つと言えるでしょう。

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