多治比三宅麻呂

多治比三宅麻呂について

多治比三宅麻呂（たじひ の みやけまろ）は、飛鳥時代の後期から奈良時代の前期にかけて活躍した貴族です。彼の父は摂津大夫の多治比古王で、官位は正四位上および左大弁として知られています。

経歴の概要

多治比三宅麻呂は、まず東山道巡察使を経て、慶雲元年（704年）に従六位上から三階の昇進を果たし、従五位下に叙爵されました。700年代初頭、文武天皇の崩御に際し、御装束司として重要な役割を担ったこともあります。

その後、元明朝においては、催鋳銭司と造雑物法用司の初めて設置された官職に任命されつつ、和銅4年（711年）には正五位上、和銅6年（713年）には従四位下として弁官を務め、着実に昇進を果たしていきます。元明朝の最後の年である和銅8年（715年）には、従四位上及び左大弁に任ぜられ、その後も順調にキャリアを進めていきました。

元正朝においては、民部卿や河内国按察使の職に就くなど、豊富な経験を積みます。養老3年（719年）には正四位下、養老5年（721年）には正四位上へと昇進し、同年には参議に任ぜられたという説もあります。こうした異なる官職を歴任することにより、多治比氏は藤原氏に続いて幕政において重要な立場を築いていきました。

謀反の誣告と流罪

しかし、養老6年（722年）には、謀反を誣告された疑いで処罰を受ける事態に陥ります。本来ならば斬刑に処されるところを、皇太子であった首皇子（後の聖武天皇）の奏請によって減刑され、最終的には伊豆国へと流罪となりました。この事件は、当時の右大臣長屋王との政治的な対立が背景にあったとも言われています。

長屋王は藤原四兄弟と異なる政治路線を持つ中、三宅麻呂の存在が政治運営において問題視され、譲歩を迫る戦略の一環として誣告されたのではないかとも考えられています。

一説によると、彼は神亀2年（725年）6月22日に流罪先で死去したとされています。その享年は73歳でした。

官歴

多治比三宅麻呂の官歴は、主に『続日本紀』に記されています。以下に彼の主要な官歴を示します：

• - 時期不詳: 従六位上
• - 大宝3年（703年）正月2日: 東山道巡察使
• - 大宝4年（704年）正月7日: 従五位下（越階）
• - 時期不詳: 従五位上
• - 慶雲4年（707年）10月3日: 御装束司
• - 和銅元年（708年）2月11日: 催鋳銭司
• - 和銅2年（709年）3月23日: 造雑物法用司
• - 時期不詳: 正五位下、左中弁
• - 和銅4年（711年）4月7日: 正五位上
• - 和銅6年（713年）正月23日: 従四位下
• - 和銅8年（715年）正月10日: 従四位上、5月22日: 左大弁
• - 霊亀3年（717年）9月: 民部卿
• - 養老3年（719年）正月13日: 正四位下、9月8日: 河内国摂官
• - 養老5年（721年）正月5日: 正四位上（同年参議に任命された可能性あり）
• - 養老6年（722年）正月20日: 流罪により官位剥奪

家族

多治比三宅麻呂の家族については、父が多治比古王で、母は大伴比羅夫の娘であることがわかっています。妻に関しては明確な記録が残っていません。

彼の人生は、官位昇進や流罪の経験を通じて、古代日本における政治システムや貴族社会において重要な影響を与える事例となっています。

もう一度検索