大炊御門冬氏

大炊御門冬氏：鎌倉時代後期の公卿、その生涯と大炊御門家の家督争い

大炊御門冬氏（おおいのみかど ふゆうじ）は、鎌倉時代後期の公卿で、大納言・大炊御門良宗の子として生まれました。官位は従一位・内大臣、左近衛大将にまで昇り、光福寺と号しました。彼は大炊御門家9代当主として、その名を歴史に刻んでいます。

経歴

冬氏の経歴は、『公卿補任』、『尊卑分脈』、『園太暦』、『花園天皇宸記』などの史料によって詳細に辿ることができます。

弘安8年（1285年）12月29日、叙爵。
正応元年（1288年）11月21日、従五位上に昇叙。
正応4年（1291年）1月6日、正五位下に昇叙。同年7月29日、右少将に任ぜられる。
正応5年（1292年）11月5日、従四位下に昇叙。
永仁6年（1298年）7月13日、従三位に昇叙。
正安元年（1299年）6月6日、正三位に昇叙。
乾元元年（1302年）11月27日、参議に任ぜられる。左中将は元の如し。
嘉元元年（1303年）1月28日、備前権守を兼ねる。閏4月5日、従二位に昇叙。同年8月28日、権中納言に任ぜられる。
嘉元3年（1305年）12月30日、中宮権大夫を兼ねる。
徳治2年（1307年）8月23日、父・良宗が薨去。同年12月2日には、中宮権大夫を止められた。
延慶2年（1309年）3月23日、正二位に昇叙。同年10月15日、中納言に転じる。
応長元年（1311年）3月20日、祖父信嗣が薨去したため、喪に服した。同年6月30日に復任。
正和2年（1313年）11月17日、権大納言に任ぜられる。
文保2年（1318年）3月12日、礼服の宣下を受けたが、同日にこれを辞した。
元応元年（1319年）6月27日、皇后宮大夫を兼ねる。同年閏7月28日、大納言に転じる。皇后宮大夫は元の如し。同年8月21日、左近衛大将を兼ねる。同年12月15日、皇后が達智門院の女院号を受けるため皇后宮大夫を停止。
元応2年（1320年）4月12日、権大納言鷹司冬教が左大将に任ぜられるにあたり、左大将を止められた。同日、従一位に昇叙。
元亨2年（1322年）6月29日、内大臣に任ぜられる。同年7月9日、左右番長各1名と左右近衛各3名を随人として給わった。同年8月8日、内大臣を解任され兵仗も失った。
元亨4年（1324年）8月16日、薨去。

このように、冬氏は着実に官位を重ね、最終的には内大臣にまで上り詰めました。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。

従一位昇叙の背景

冬氏が左大将に任ぜられ拝賀を済ませた後、左大将を鷹司冬教に替えるという話が持ち上がりました。『公卿補任』には、この出来事に関して、冬氏が閉門蟄居していたために従一位に任じたと記されています。彼は祖父信嗣と同様に大納言を辞さず、従一位行大納言に留まり、後に内大臣に任ぜられました。

冬氏薨去後の跡目争い

『師守記』の暦応3年／興国元年（1340年）2月1日の条によると、冬氏の死後、二人の息子である氏忠と冬信の間で家督相続争いが発生していたことがわかります。その後も大炊御門家の跡目相続問題が『師守記』に散見され、最終的には冬信が嫡子として家督を相続しました。この家督争いは、当時の公家社会における権力争いの一端を示すものとして興味深い点です。

系譜

父：大炊御門良宗（1260-1307）
母：北条朝氏の娘
妻：遊義門院美濃 - 若狭守藤原景俊の娘
長男：大炊御門氏忠
妻：吉田経長の娘
男子：大炊御門冬信（1309-1350）
男子：大炊御門家信（1316-?）
妻：家女房 - 出自不詳
生母不明の子女
男子：覚信

参考文献

『公卿補任』（新訂増補国史大系）吉川弘文館 黒板勝美、国史大系編集会（編） ※ 永仁6年（1298年）に冬氏が非参議従三位となった時以降の記事。
『尊卑分脈』（新訂増補国史大系）吉川弘文館 黒板勝美、国史大系編集会（編） ※「大炊御門冬氏」および「鷹司冬教」の項。
『園太暦』続群書類従完成会　岩橋小弥太・斎木一馬・黒川高明・厚谷和雄校訂
『師守記』国立国会図書館蔵
* 『花園天皇宸記』続群書類従完成会

大炊御門冬氏は、鎌倉時代後期という激動の時代に、公家社会の中で重要な役割を果たした人物でした。彼の生涯と、彼を取り巻く人間関係や家督争いは、当時の社会情勢を理解する上で貴重な手がかりとなります。

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